35 登城
何故か、あれから無礼男子2人を目にする事がなかった。謹慎でも喰らったのか?とも思ったりもしたけど─
「私には関係ないか………」
と思い、気にしない事にした─と言うよりも、気にしてはいけないような気がしたと言うのが本音だ。あの腹黒爽やか殿下が絡んだのだ。あの2人が無事である筈がない。少し……ほんの少しだけ、気の毒だなぁと思ったりもするけど、自業自得だから仕方無いよね─と思う事にした。
結局、髪撫で男子とコレ呼び男子の名前すら聞いていない。もう、関わる事がないだろうから良いけど。
それよりも─
同じように、あれからリンディもおとなしい。それが一番怖い。
ーあれから、一体何があったんだろう?ー
色々と気になる事はありつつも、一週間はあっと言う間に過ぎて行き、私が外交官の人と会う週末がやって来た。
『迎えの馬車を─』と言われたが、『目立つのは嫌なので!』と、丁重に断り、ライラを伴って歩いて登城する事になった。歩いても30分程で行ける為、全くの問題無しだ!
なんて思っていたのに。
「エヴィ、おはよう!」
「………………」
王太子殿下が、私を出迎える為に城門前に立っていた。
ー気付かないフリして帰って良いですか?はい。駄目ですよね?分かってますー
「ホント、王太子はやってくれるわね」
と、何故かライラはクスクスと笑って楽しそうだ。
「─────王太子殿下、オハヨウゴザイマス」
「ん?どうした?エヴィ。そんな風に改まらなくても、いつも通りに、『アシェルハイド』と呼んでくれても構わないよ?」
ザワッ───
城門前は人通りが多い。しかも、今日は週末。平日よりも更に人通りが多い上に、王太子殿下が居るのだ。直接声を掛けるような人はいないけど、遠巻きに私達のやり取りをガッツリと窺っているのだ。そんな人達が、今の殿下の言葉に一気にざわついた。
ー有り得ないから!ー
言い方と言うものがあるよね!?ただの学校における先輩後輩ではなかっただろうか?でも、ここは学校ではない。しかも、仕事?関係で登城している訳で、王太子殿下に対して気安く接するのはおかしいよね?
「──殿下、腹黒過ぎますよ」
「何のことやら?」
と、殿下の斜め後ろに、父と同じ年齢位の年配の男性が控えていて、何やら殿下とブツブツと言い合っている。
ーあれ?この人……誰かに似てる?ー
ジッとその人を見ていると、その人が私の方へと顔を向け、視線が合った。
「貴方が、エヴィ=ブルーム……エヴィ嬢ですね?私は、ドリュー=アンカーソン。宰相を務めております」
“アンカーソン”と言う事は
「お姉様の婚約者の……。あ、失礼致しました。私はブルーム伯爵が娘、エヴィと申します。ブレイン様には、姉と共に……良くしていただいております」
私にはあまり良くはされてないけど、姉が幸せそうなので、全く問題無しです。
きっちり頭を下げて礼を取ると、「──なるほど」と、宰相が呟いた。
「?あの……」
何が『なるほど』なのか?
「いえ。ブレインの婚約者であるジェマ嬢の妹であるリンディ嬢とは、よく会いますが、エヴィ嬢とは初めてだったと思いましてね」
「あ……それは、ご挨拶ができなくて、すみませんでした」
「責めている訳ではありませんから。少し……自分が情けなく……腹立たしく思っているだけですから」
「情け?腹立たし???」
何だかよく分からない事だらけだけど、「気にしないで下さい」と、宰相様にニコッと微笑まれた。
「エヴィ、行くぞ」と、殿下が、私をエスコートするかのように腰に手を回そうとする手を、気付かないフリをして殿下から一歩下がり─
「すみませんが、私は城には不慣れですので、案内、宜しくお願い致します。迷子にならないように、殿下の後ろをしっかりと付いて行かせていただきます」
と言えば
「ははっ─これはこれは……面白いですね?殿下」
「─だろう?」
本当に愉快そうに笑う宰相様と殿下。私とライラは、その2人の後を追って、城門をくぐり抜けた。
*そんなエヴィとライラの前を歩く、アシェルハイドとドリュー宰相(宰相視点)*
「双子ですが……全く…全てが全く違いますね」
「そうだろう?エヴィ本人に会えば、直ぐに分かるだろう?本当にお花畑と双子なのかと、疑いたくなるぐらいだ」
「愚息は見る目がないんでしょうか……」
ブレインは、リンディ嬢には普通に対応し、エヴィ嬢には小言三昧と聞いていた。『エヴィ嬢が、我儘を言うので……』と言っていたが……。どう見ても、この手のタイプの令嬢は、我儘を言って他人を困らせると言う事はしないだろう。
「ブレインは、ジェマ嬢中心に物事が進んでいるからな。まぁ、本人もそろそろ自覚して、改めて来るとは思うが…ろ」
「はぁ──。そうであれば良いですが……。いえ、そうでなければ、殿下の側近などさせられませんね」
ブレインが、婚約者のジェマ嬢が好き過ぎるとは報告を受けてはいたが……。まぁ……まだ若い。学生のうちは……と思うが、卒業した後もこのままであれば、少し考えなくてはいけないだろう。
「ところで、アレは進んでいるのか?」
「はい。話は全て終わっていますから、後は書類にサインをするだけです」
「流石はドリュー=アンカーソン宰相様だな」
「ありがとうございます。舐められた分は、キッチリ返させていただきますよ」
と、私も殿下も、黒い笑みを浮かべながら、王城の廊下を進んで行った。




