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(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!  作者: みん


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21 王太子、動く

*引き続き、アシェルハイド視点となります*





「なら……外交の仕事を手伝うのはどうだ?」


「外交の手伝い……ですか?」


「ああ。今この国でも、貿易にも力を入れようとしているところでね。共通語でも問題はないんだけど、たまに、些細ではあるけど、言葉のニュアンスが微妙にズレている時があって、それが後々問題になる事もあるんだ。そんな時に、その相手の国の言葉を知っている者が居れば、その問題が解決するだろう?」


これは本当の事だ。口頭で契約を詰めていき、いざ書類を作成するとなった段階で、文字にした途端、違う意味となってしまう事があり、そこで契約破棄となる事はないが、予定より大幅に時間が掛かってしまう事がある。

それに──


ーエヴィを国外になんて……ー


「所謂、“通訳”だな」


「通訳………」


「国同士の契約になるから、身元がしっかりしていて信頼の置ける者にしか任せられないが、エヴィは伯爵令嬢で、王太子である俺が信頼しているから、何の問題もない。後は、その3ヶ国語がどれ程のレベルなのか、テストは受けてもらわないといけないが……どうだ?」


“独り立ちしたい”エヴィにとっては、狐に油揚げな話だろう。現に、目の前に居るエヴィは、今迄俺には向けた事のないような、キラキラとした瞳で俺を見つめている。


ーうん。その顔、本当に可愛いからな?んんっ。兎に角、後……ひと押しか?ー


「学生生活が後2年ある。その間に、試しにやってみて、卒業する迄にどうするか考える─のはどうだ?まぁ、さっきも言った通り、国政に関わる事だから、エヴィにも色々と制約は掛かるけどね」


「あの……そんなに私に良い事尽くめで良いんですか?試すだけ試して、『やっぱり、隣国に行きます』ってなっても良いんですか?」


「勿論構わない。こちらとしては、契約さえ守ってもらえればね」


ーなんて言いながら、俺はエヴィを逃がすつもりは無いけどねー


と、心の中で呟きながらニッコリと微笑む。

その微笑みに、エヴィは逆に少し訝しんだ表情をしたけど、これはいつもの事だ。エヴィは俺の笑顔に、見惚れたり顔を赤らめる事は決して無い。


エヴィは、少し思案した後


「では、お言葉に甘えて……“お試し”させていただいて宜しいでしょうか?」


「勿論だ。早速、外交官に話をしておくから、色々決まったらまた報告する。あーなんと言うか……ブルーム伯爵には、色々決まってから、王太子(オレ)から話をするから、それ迄は黙っておいて欲しい」


ーこんな話を耳にすれば、あの夫人とリンディ嬢が何をするのか分からないからなー


「分かりました。どうせ、私は寮生活で、両親に会うことも滅多にありませんから、その辺は特に問題ありません。殿下、それでは宜しくお願いします」


エヴィからお礼を受け入れた後、俺はそのまま王城へ帰るべく荷物を取りに教室へと向かった。





******



「国王と王妃と宰相以外の人払いを」


と城に着いた時に出迎えた女官に伝言を頼み、俺は一度部屋に戻り服を着替えてから父の執務室へと向かった。




俺がお願いした通り、執務室には国王()王妃()と宰相の3人だけが居た。


「アシェル、おかえりなさい」

「アシェル、何かあったのか?」

「王太子殿下、おかえりなさいませ」


3人から出迎えられ、「ただいまかえりました」と軽く返事だけをして、俺はこの10ヶ月の間に起こった事の話をした。




「闇の……魔力持ち!?」


「はい。本人は隠していますが、エヴィは闇の魔力を持っています」


「何故、そうだと言い切れる?その、アシェルが感じる()()()()が視えて祓えるだけで、闇の魔力持ちだとは限らないだろう?」


「理由は、私の()調()()()()事です。私はエヴィと接点を持ってからの10ヶ月の間、一度も体調を崩していません。おそらく、エヴィの闇の魔力が、無意識に私の強過ぎる光の魔力を中和しているんだと思います」


「確かに……アシェルはここ最近寝込んだりはしてないわね。と言うか……アシェル。もう既に名前呼びなのね?ふふっ─」


王妃は母としての顔でニヤリ─と笑っている。女性と言うのは、()()()()()()は鋭い。


「それに、彼女は母国語と大陸共通語以外に3ヶ国語が話せて、外交や貿易に興味があるようです」


「宰相、後で外交官を呼んでくれ」


流石は父である。俺の言いたい事が分かったようだ。


「恐れながら……その、エヴィ=ブルーム嬢は()()リンディ嬢の双子の姉ですよね?夫人やブレインから聞くエヴィ嬢は………」


「「「あ、ソレ、嘘だから」」」


3人─国王、王妃、王太子─の声が重なった。


「は?嘘?」


どうやら、ブルーム家の正確な内情は、宰相も把握し切れていなかったようだ。ブレインは置いといて、宰相であるドリュー公爵は、まともにエヴィに会った事も無いから、それも仕方無い事かもしれない。きっと、本人に会って話をすれば、ドリュー公爵もすぐに気付いた筈だ。

兎に角、エヴィを逃がすつもりがない為、宰相にもブルーム家の内情を説明した。




「──なるほど。これで、色々と腑に落ちて……納得しました」


説明した後の宰相は、スッキリした笑顔を見せた後、「私も随分と…舐められた様ですね……」と、黒い笑みを浮かべた。




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