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(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!  作者: みん


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13 アシェルハイド=アラバスティ

「ようやく、婚約が調いました」


そう言い出したのは、俺の側近の一人─ブレイン=アンカーソンだった。


「ようやくだな。で?相手の…ジェマ=ブルーム嬢だったか?彼女はどんな子なんだ?」


「控え目な感じの子ですね。いつも穏やかで落ち着いていて……祖父同士が決めた婚約ですが、仲良くやっていけたら良いなと思いますね」


それには少し驚いた。ブレインは、優しそうな顔をしているが、何処か他人とは一線引いている。特に、令嬢達からのアプローチ等は、全て無視をしていた。

正直、()()リンディ嬢の姉だ。どんなもんか?と思っていたが──あぁ、そうか。ジェマ嬢とリンディ嬢は、母親が違うのだったな。

兎に角、この2人がこのままうまくいけば良いな─と思った。





******



「馬車通いが嫌で断って来た?」


「そうらしいですよ。凄いですよね?」


リンディ嬢が王城で過ごす事になり、一緒にエヴィ嬢も─と、ブレインの父である宰相の誘いをアッサリ断ったと言うエヴィ嬢。目の前のブレインは笑ってはいるが、内心では憤っている感じだ。


ーいやいや、その理由が本当なら、面白くないか?ー


なんて思った事は内緒だ。


そんなブレインは、ついでとばかりに今迄の事を語り出した。


「エヴィ嬢とは、最初に挨拶に行って以来、喋るどころか挨拶すらしていません」


「ん?別に良いんじゃないのか?お前の婚約者はジェマ嬢だろう?エヴィ嬢がお前に挨拶をしなきゃいけない理由があるのか?逆に、何故リンディ嬢が同席しているのか─の方が気になるが?」


同席している理由は、なんとなく想像がつく。ブレインの気を引く為。あわよくば、ブレインの婚約者に─と言ったところだろう。その事に関しては、ブレインも思うところはあるようだが、ジェマ嬢も文句を言わない為、ブレインも何も言わずにいるようだ。


「ジェマは、本当に普段から人の悪口とか噂とか一切言わないんですよね。ただ、妹のエヴィ嬢に関してだけは…敏感に反応するんですよね」


どうやら、そのエヴィ嬢の事でジェマ嬢が怒ってしまい、デートも早々に帰る事になったらしい。


「よほど、ジェマ嬢とエヴィ嬢は仲が良いのだな」


「なんですかね?あまり一緒に居る所を見たり聞いたりした事はありませんけどね」


ブレインが知らされているかどうかは別として、アンカーソン公爵も、ブルーム伯爵家の内情もある程度は把握しているだろう。王家としても、リンディ嬢が光の魔力持ちの為に内情は調べてある。まぁ…ある意味、“あるある”な家庭内事情が存在していた。方や光の魔力持ちで、方や魔力を失った者。仕方無いと言えば仕方無いのかもしれないが……


ーますますエヴィ嬢が分からなくなったなー


未だよく分からないエヴィ嬢。その時初めて、彼女が少し気になる存在になった。




入学式当日。


俺は、生徒会会長として、在校生代表で挨拶をする為に壇上横に控えていた。

壇上では弟のイズが挨拶を述べている。そのイズの挨拶が終わると、次は俺の番だった為、イズと入れ替わりで壇上へと立つ。いつもの事ながら、令嬢達からは控え目だが黄色い声と共に熱の篭った視線を向けられる。


ー毎回飽きずに、権力と(自分で言うのもなんだが)顔だけに反応するとは。ある意味尊敬するー


と、内心毒づいていると、その令嬢達の中に、それとは違う視線を向けられているのを感じ、スッと目を細めて一瞬だけその視線を感じる方へと視線を向けると、俺に対して恐怖感?のようなモノを表している令嬢が居た。


ー何だ?ー


気にはなりつつも、俺はその令嬢から視線を外し会場全体を見回しながら挨拶を述べていった。

その間にも、時々あの令嬢が気になりチラチラと視線を向けてみるが、視線が合ったのはあの時だけで、後は彼女が顔を下に向けていた為、どんな表情をしているのかは分からなかった。




入学式が終わり、在校生は授業はない為、俺はブレインと共に生徒会室へとやって来た。

そこで、お茶を飲みながら考えるのは、先程の令嬢の事。


ー何処かで見た事があるようなー


成人前の令嬢だ。社交界デビューをしていない為、夜会などにも参加はしていない。だから、知らない顔だったとしても不思議ではない。ただ、デビュー前でも王子の婚約者探しの昼間のお茶会にでも、彼女を見た記憶がない。


ー誰かは分からなかったが、この学校の1年生だ。すぐに…分かるだろうー


そう思うと、次に彼女が俺を目にした時、彼女は一体どんな反応をして、どんな視線を俺に向けて来るのか楽しみだな─と、俺は自然と口元を緩ませて笑っていた事には、「何か良い事でもありましたか?」と、ブレインに訊かれる迄気付かなかった。




だが、その令嬢が誰なのか──


思いの外、アッサリと、その日のうちに知る事となった。




驚きの事実と共に──




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