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(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!  作者: みん


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1 双子

エヴィ(わたし)には、双子の妹─リンディがいる。


生まれた時、私達はそっくりな容姿をしていた。母と同じ、ピンクブロンドの髪に琥珀色の瞳。無事に生まれてきた事を喜んだのも束の間。生まれた私達を綺麗にしようと抱き上げた時、リンディの体が光に包まれたそうだ。

それは、その者が“光”の魔力を持って生まれた事を現す光だった。


“光”の魔力は、とても珍しい魔力。人を癒やす力を持っている。ただ、その力はとても強い。強いが故に、子供の身体が耐えられずに、最悪幼いうちに儚くなる─と言う事もよくある程に。


そして、リンディもそうだった。


赤子のうちから、よく熱をだしては邸の皆で付きっきりで看病をしていた。光の魔力持ちは、国にとっても大切な存在となる為、国─国王陛下からの命で、国一番の医師や薬師がリンディを無料で診に来てくれていた。

そのお陰もあってか、病弱ながらも命の危険に陥るような状態になる事はなかった。


私が物心ついた頃には


“リンディは病弱で可哀想”

“エヴィは元気な子”

()()()エヴィは我慢してね”


勿論、両親からも使用人達からも虐げられる事はないし、優しくしてくれるから、愛されていない事は無いと思っていた。病弱で、いつもベッドで寝ているか、部屋の椅子に座って静かに本を読んでいるリンディ。同じ容姿なのに、どこか儚げで…


ー稀な光の魔力を持っていても、可哀想なリンディー


と、思っていた。だから、両親がリンディを第一に考える事も理解していた。仕方無いと思っていた。それに、私が良い子でいると『エヴィは良い子ね』『流石はお姉ちゃんだな』と、両親が私を褒めてくれる。だから、私は笑っていられた。




『エヴィは、寂しくないの?』


と、私に訊いて来たのは……()()()は誰だった?



あれは、私が5歳の時だった。弟が生まれた。


この国は、家督を継ぐのは基本は長男ではあるが、第1子が女の子であれば、その者に継がせる事もできる。

我が家─ブルーム伯爵家は、私が継ぐ予定だったけど、弟が生まれた事で、どちらが継ぐかは未定となった。

ただ、初めて生まれた男の子。両親の関心は、リンディと弟のサイラスに向けられた。


弟のサイラスは、父と同じ金髪に、母と同じ琥珀色の瞳をしている。2人の色を持って生まれたサイラス。両親は殊更サイラスに愛情を注いでいる。


ー羨ましいなぁー


と、何度思っただろう?

サイラスは、素直に両親に甘えていたし、両親もそんなサイラスを笑顔で受け入れていた。


ー私も、素直に甘えていたら、受け入れてもらえていた?ー


そんな思いがふと湧き上がったけど、フルフルと首を振る。


ー良い子は我慢しなきゃいけないー


良い子で居れば……()()()()()()から。





********


私が10歳の頃──


「お母さま、今日はお外でお茶をする約束だったよね?」


ずっと前から約束していた、久し振りのお母さまとのお茶の時間を、ずっと楽しみにしていた。お母さまには内緒で、料理長とブルーム家の侍女長のエメリーと一緒にクッキーを作った。『きっと、喜んでくれますよ。』と、エメリーも笑ってくれた──のに。


「エヴィ、ごめんなさい。リンディが熱を出してしまって…。お茶は、また違う日にしてくれるかしら?」


リンディは、熱を出すとお母さまが側に居ないと泣いてしまうのだ。だから、分かっている。分かっているけど──


「リンディばっかり…ズルい。私が病気になったら、お母さまと一緒にいれるのに…」


ハッ─と、こんな事を言うつもりなんてなかったのに!と、慌てて母を見上げると


パンッ───


「─っ!?」


母に、頬を叩かれた。


「何て事を言うの!?リンディは、病気になりたくてなっているのではないのよ!?」


「………ごめん……なさい………」


ポロポロと涙が出た。分かっている。私が悪いんだ。


「あ……エヴィ、私も…叩いてしまってごめんなさい!」


母も、泣いた私を見て慌てて謝り、ギュッと抱きしめてくれた。


ー良かった。嫌われて…なくてー


久し振りに感じた母の温もりに、私はホッとして、そのままお母さまの腕の中で涙を流した。


その一週間後だった。


今迄病気らしい病気に罹らず、元気な毎日を過していた私が、熱を出して倒れてしまったのだ。




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