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World of Fantasia(ワールド・オブ・ファンタジア)  作者: 緋色牡丹
第三章「星詠みの巫女」

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第八十四話「弾丸が呼ぶもの」

「ノエル、いけるか」

 声をかけると、彼は長槍を構えた。

 十字に刃を広げた銀の槍──十字槍(クロスピア)というらしいが、見るのは初めてだ。

「いつでも!」

 目の前にいるのは、小型の熊だった。

 低く唸りながらこちらを威嚇している。

「試験の障害にしては、拍子抜けだな」

 そういったイルゼは、構える素振りすらない。

 ミレイユは藍色の長髪を揺らし、細身の杖を構えた。

「支援はいりますか」

「いや、マナには限りがある。任せてくれ──行くぞ」

 声をかけて踏み込んだ。俺は正面、ノエルは横へ。

「グルァッ!」

 唸りを上げ、太い前脚が襲いかかってくる。

 攻撃をいなすと、熊の上体が大きく泳いだ。

 熊の死角から、ノエルが距離を詰めた。

「はぁッ!」

 白銀の一閃──ッ!

 穂先が脇腹を貫いた。

「グァッ……!」

 槍はすぐさま引き抜かれ、さらに風を切っていく。鋭い突きが二度、三度。

 四度目の突きで、熊は数歩よろめいた。そのまま、地面へ──倒れ込んだ。

 直後、熊の巨体は淡い光へと変わった。

 あれだけ貫かれたというのに、血の一滴も流れていない。本物ではないようだ。

 駆け寄ってきたノエルと、ぱん、と手を合わせた。

「連携は問題なさそ──」


 ドォンッ!!!!


 爆発音が響いた。

「わぁっ!」

 ノエルが跳ねた勢いで、俺の腕に絡みついた。

「うおっ」

「ご、ごめん。大きい音、苦手で」

「遠くで、やりあってるみたいだな」

 ──巻き込まれないようにしたい。

 そう思ったところで、イルゼが舌を打った。

「目の前でイチャつくな、鬱陶しい」

 ミレイユは口に手を当て。

「そんな……男性同士で、ありなんですか」

 純粋な紫眼がこちらを見た──適当に返しておこう。

「多様性の時代ですからね」

「えっ、あっ、おれは、だめだよっ」

 ノエルは深い青髪をいじり、なぜかうろたえている。

「結婚とか、ごめん、せめて、告白はしてほしい、」

「早まるな、色々と……」

 

 中央の塔を目指し、森の中を歩いていく。

 ふと、ミレイユと目があった。

「──なんで俺を選んだの」

「何がですか」

「護衛の話だよ」

「……母さまに言われたの。理由はわからないけれど、ギルドに依頼するようにって」

「もっとランク高い人、いっぱい居ると思うんだけど」

 ミレイユは口を尖らせ、視線を逸らしていく。

「初対面の人と話すの、苦手なんだもん。うまく喋れなくなる」

「めっちゃ、喋ってた気がするんだけど……」

「あなたは不審者だったじゃない。人間と認識してなかったの」

「ひどい理由だ」

 軽く笑うと、イルゼが口を開いた。

「おい、道はあっているのか」

「ああ、大丈夫。問題ないよ」

 先ほどデカい樹に登って見渡したが、さほど難しいフィールドではなかった。エバーウッドの大森林に比べたら、森と言っていいのかも怪しい。

「もう地形は覚えた。ゴールの塔も大きいし、迷うことはないと思う」

「ふん。そこそこ使えるようだな」

「そりゃどうも」

 好感度を上げるのも大変だ。

 軽く息をついたとき、はるか遠く──切り立った崖の上で、何かがきらりと光った。

「姫さまッ!」

 イルゼはミレイユを突き飛ばした。

「きゃっ」

 浮いた二人の体。

 そして、イルゼが吹き飛んだ──ッ!

 横にあった樹幹が弾け、木片が雨のように散る中、


 ダァン──!!!!


 鈍い轟音が届いた。

「大丈夫か!」

 大樹へ叩きつけられたイルゼに駆け寄ると──彼女の右腕が、()()()()

 黒いボディスーツの肩口から、光の粒が溢れている。

 なんだ、

 挿絵(By みてみん)

「っ……ぐ、っ……私はいい。姫さまを……」

 ミレイユの方は、ノエルが手を取っている。向こうは無事なようだ。

 弾けた大樹の表皮は、深く抉れていた。中に、何かある。

 これは──銃弾か。鉛色の弾頭は、指三本はある大きさだ。

 

 その時。


 悪寒が背筋を這いあがった。

 突然だった。

 ()()は高速で、

 森を縫うように、

 たしかにこちらへ、

 

 来る。


 近づいてくる。

 気づかなかった、ここまでの接近に。

 そうだ。俺が楽に感じるということは──この程度の森は、()()にとっては庭ですらない。

「……ついてないな」

 樹から颯爽と降り立ち、それは現れた。

 舞うは水色の長髪。

 考えうる限り最悪の相手が、見慣れた顔が、静かに微笑んだ。

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― 新着の感想 ―
 ノエルさんと絡む元不審者……タヨウセイ ッテ スゴイデスネ。  あと、イルゼさんはイルゼさんで、なにやら訳ありの様ですな。
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