3.エネルギー論的解釈と電磁気学的検証
3.1 熱力学的魔力理論の登場
3.1.1 熱力学第一法則との整合性検証
1850年代、エネルギー保存則の確立を受けて、魔力をエネルギーの一形態として理解する試みが始まった。この研究を主導したのは、物理学者ルドルフ・クラウジウス・メルケルであった。
メルケルは、構文魔法による現実変化がエネルギー保存則に従うかどうかを検証するため、精密なカロリメーター実験を設計した。
◎実験設計
1.断熱容器内での火系構文《エニフ=カリド・フェルス・ノーグラム》の発動
2.発生熱量の精密測定
3.術者の代謝エネルギー消費量の同時測定
4.エネルギー収支の計算
◎実験結果
・構文発動による発生熱量:4200J
・術者の代謝エネルギー増加:85J
・エネルギー差:4115J(出所不明)
この「消えたエネルギー」問題は、魔力研究における最初の重大な謎となった。メルケルは「魔力は既知のエネルギー形態ではないが、エネルギー的性質を持つ」と結論づけた。
3.1.2 熱力学第二法則との関係
1865年、メルケルは魔力とエントロピーの関係についても検討した。構文魔法による秩序形成(例:土系構文による物質構造化)が熱力学第二法則と矛盾しないかを検証したのである。
詳細な測定の結果、構文魔法による局所的秩序増加は、周辺環境でのエントロピー増加により完全に補償されることが判明した。魔力は熱力学法則に従うが、その作用機序は不明であった。
3.2 電磁気学的検証実験
3.2.1 ファラデー・アンペール実験群
1870年代、物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル・ハミルトンは、魔力と電磁場の相互作用を検証する一連の実験を実施した。
◎電気的性質の検証
・魔力使用中の術者の電気抵抗値測定
・魔法陣周辺の電場・電位測定
・魔力による電気回路への影響検証
◎磁気的性質の検証
・魔力使用中の術者周辺の磁場測定
・魔法陣発現時の磁気コンパスへの影響
・強磁場中での構文発動への影響
◎電磁波的性質の検証
・魔法陣からの電磁波放射の検出試行
・電磁波による魔力への干渉効果検証
すべての実験において、魔力と電磁場の直接的相互作用は検出されなかった。ハミルトンは「魔力は電磁場とは独立した現象」と結論づけた。
3.2.2 波動論的解釈の挫折
1880年代、物理学者アンリ・ポアンカレ・デュボワは、魔力を「未知の波動現象」として理解する理論を提案した。
デュボワは、魔力が光や電波と同様の波動的性質を持つと仮定し、その検証実験を設計した。
・干渉・回折実験による波動性の検証
・偏光実験による波動の性質調査
・ドップラー効果の検証
しかし、3年間の実験研究により、魔力には波動的性質が認められないことが判明した。デュボワは「魔力は既知の波動現象ではない」と結論せざるを得なかった。
3.3 19世紀末の理論的混迷
19世紀末、魔力研究は深刻な理論的混迷に陥っていた。魔力は明らかに存在し、観測可能な物理効果を持ちながら、既知のあらゆる物理理論では説明できなかった。
◎確認された事実
・魔力は確実に存在する
・魔力は物理的効果を生み出す
・魔力は人間の意識と相互作用する
◎否定された仮説
・物質説(元素・化合物・粒子)
・エネルギー説(既知のエネルギー形態)
・場理論説(電磁場・重力場)
・波動説(既知の波動現象)
この状況について、1895年の第1回国際魔力研究会議では「魔力は既知の物理学では記述不可能な現象」という暫定的合意が形成された。