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師の覚悟と弟子の選択

リリは、エリアーナから託された、最後の切り札「魂縛の封印術」を発動させようとする。しかし、魔王と化したギデオンの、憎悪の力は、それを、上回っていた。絶体絶命の窮地に、エリアーナは、自らの命を、触媒とし、封印術を、強制的に、発動させるという、最後の手段に、出る。師の、自己犠牲を、前に、リリは、ある、重大な、選択を、迫られる。

嘆きの山脈は、二人の、規格外の、天才によって、破壊と、創造の、実験場と、化していた。

一方は、憎しみを、糧に、魔王の力を、振るう、ギデオン。

もう一方は、師への、想いを、力に変え、無限の、魔法を、紡ぎ出す、リリ。

その戦いは、すでに、三日三晩、続いていた。

「はあっ、はあっ…!この、化け物め…!」

リリの、肩は、大きく、上下し、その、額には、玉の汗が、浮かんでいた。

彼女の魔力は、底なしと、思われた。しかし、相手は、魔王。その身に、世界の、負のエネルギーそのものを、宿している。消耗戦では、いずれ、こちらが、不利になる。

(…やるしか、ない…!)

リリは、覚悟を決めた。

エリアーナから、託された、最後の、切り札。「魂縛の封印術」。

それは、対象の、魂そのものを、世界の、理から、切り離し、永遠の、無の中に、封じ込めるという、神の、領域の、大魔法。

しかし、その発動には、膨大な、魔力と、極めて、精密な、魔法陣の、構築が、必要だった。

リリは、ギデオンの、猛攻を、紙一重で、かわしながら、地面に、魔法陣を、描き始めた。

それは、エリアーナが、十年という、歳月を、かけて、研究し、完成させた、人類の、叡智の、結晶。

幾何学模様が、複雑に、絡み合い、古代の、ルーン文字が、その周りを、埋め尽くす。

「…無駄だ、無駄だ、無駄だァ!」

ギデオンもまた、リリが、何を、しようとしているのかを、察していた。

彼は、憎悪の、全てを、込めた、最大の一撃を、放つ。

「――滅びの、黒陽ブラック・サン!!」

彼の、頭上に、全てを、飲み込む、闇の、太陽が、出現し、リリの、頭上へと、落下していく。

「…間に合え…っ!」

リリは、最後の、一筆を、描き終えると、魔法陣の、中心に、立ち、その、全ての、魔力を、注ぎ込んだ。

「《七つの、戒め、魂の、枷!理の、外にて、永劫の、眠りを!》――【魂縛の封印術エターナル・ゼロ】!!」

地面から、黄金色の、無数の、鎖が、現れ、闇の太陽と、激突した。

光と、闇。

二つの、究極の力が、拮抗し、空間そのものが、悲鳴を、上げる。

しかし。

純粋な、力の、ぶつかり合いでは、憎悪を、糧とする、魔王の力に、軍配が、上がった。

黄金の鎖が、一本、また一本と、砕け散っていく。

「…くっ…!嘘でしょ…!」

リリの顔に、絶望の色が、浮かんだ。

その時だった。

「…よく、やりました、リリ…。あとは、私に、任せなさい…」

声が、した。

リリの、背後に、いつの間にか、エリアーナが、立っていた。

その身体は、ボロボロで、立つのが、やっとのはず。

だが、その瞳には、かつてないほど、強く、そして、穏やかな、光が、宿っていた。

「エリアーナ!?だめだよ!あんたは、そこに…!」

「…ありがとう、リリ。あなたと、過ごした、数年間は、私の、人生の、宝物でした」

エリアーナは、優しく、微笑むと、リリの、隣に、立ち、魔法陣の、中に、入った。

そして、彼女は、驚くべき、行動に、出た。

彼女は、自らの、胸に、その手を、突き立てたのだ。

「…我が、魂を、触媒として、古の、契約を、ここに、結ぶ…」

彼女は、自らの、命そのものを、燃料として、封印術を、強制的に、暴走させようとしていたのだ。

「やめろ!エリアーナ!そんなことしたら、あんたが…!」

エリアーナの身体が、まばゆい、光となって、黄金の鎖と、融合していく。

封印術の力が、爆発的に、増大し、闇の太陽を、押し戻し始めた。

「…リリ…。一つ、言い忘れていた、ことが、あります…」

光の中で、エリアーナが、リリに、語りかける。

「…あなたの、その、規格外の、才能は、おそらく、偶然では、ありません…。あなたは、きっと、この星の、意思そのもの…ガイアが、魔王の、脅威に、対抗するために、生み出した、カウンター…『星の御子』なのです…」

「…だから、泣かないで。あなたは、一人では、ない。世界が、あなたを、愛している。…そして、私も…」

それが、彼女の、最後の、言葉だった。

エリアーナの、全てを、取り込んだ、封印の光が、ギデオンを、完全に、飲み込んだ。

憎悪の、絶叫が、響き渡り、やがて、静寂が、訪れる。

後には、巨大な、水晶の、塊が、残されただけだった。

魔王ギデオンは、その、魂ごと、永遠に、封印されたのだ。

しかし、その代償として、エリアーナは、消えた。

光となって。

「…いやだ…」

リリは、その場に、崩れ落ちた。

「…いやだああああああああああああああっ!!」

彼女の、絶叫が、嘆きの山脈に、響き渡る。

師を、失った。

唯一、自分を、愛してくれた、人を、失った。

世界を、救った、代償として。

絶望に、打ちひしがれる、彼女。

しかし、彼女は、まだ、知らない。

師が、遺した、最後の、言葉。「星の御子」。

その言葉が、意味するもの。

そして、この世界には、もう一つの、希望の光…永い、眠りについているはずの、賢者が、存在することを。

二つの、規格外の、魂が、出会う時、世界は、真の、変革を、迎えることになる。

それは、まだ、もう少しだけ、先の、物語。

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