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賢者の遺産と託された少女

レクスが姿を消してから、十年。エリアーナは、若くして宮廷魔術師長となり、彼が残した知識「賢者の遺産」を基に、王国の復興と発展を導いていた。彼女は、レクスとの約束を胸に、平和を守り続ける。そんな彼女の前に、一人の、不思議な才能を持つ、孤児の少女が現れる。

「光の御子」が、世界を救い、そして、忽然と、姿を消した、「大浄化の日」から、十年という、歳月が、流れた。

アストライア王国は、あの日の、壊滅的な被害が、嘘だったかのように、見事な、復興を、遂げていた。いや、復興、という言葉では、生ぬるい。王国は、以前とは、比べ物にならないほどの、発展と、繁栄を、謳歌していた。

その、中心にいたのが、エリアーナ・フォン・ヴァレンシュタイン、その人だった。

彼女は、あの事件の後、弱冠二十歳にして、宮廷魔術師長の地位に、就任した。そして、彼女が、次々と、打ち出す、革新的な魔法技術や、政策が、この国の、全てを、変えていったのだ。

魔力を、効率的に、エネルギーへと変換する、「魔導炉」。

天候を、安定させ、農業生産を、飛躍的に、向上させた、「天候制御魔法陣」。

遠隔地の、情報を、瞬時に、共有できる、「魔法通信網」。

それら全てが、この十年間で、実用化され、人々の暮らしを、豊かにしていた。

誰もが、彼女を、百年、いや、千年に一人の、天才だと、讃えた。

しかし、彼女自身だけが、知っていた。

これらの知識は、全て、自分のものではない。

あの、三歳の、幼き賢者が、自分との、日々の、知的ゲームの中で、戯れのように、示してくれた、知識の、断片。「賢者の遺産」を、自分が、ただ、再現しているに、過ぎないのだということを。

彼女は、執務室の、机の、一番、奥に、あの日、彼が残した、一枚の、書き置きを、大切に、しまっていた。

『――あとは、よろしく。すこし、ねむる』

その、拙い文字を、見るたびに、彼女は、決意を、新たにする。

彼が、安心して、眠れる、平和な世界を、守り抜く。それが、自分に、課せられた、使命なのだ、と。

彼女は、今や、王国で、最も、多忙な人間だった。政務、研究、そして、後進の、育成。休む暇など、ほとんどない。

そんなある日、彼女は、一つの、報告書に、目をとめた。

それは、王都の、孤児院から、提出された、一人の、少女に関する、レポートだった。

少女の名は、リリ。年は、十歳。

彼女には、不思議な、才能があった。

どんなに、複雑な、魔法の、数式も、一度、見ただけで、完璧に、理解し、そして、応用してしまうというのだ。その才能は、並の、宮廷魔術師を、遥かに、凌駕していた。

孤児院の院長は、この才能を、埋もれさせてはいけないと、宮廷魔術師団に、報告してきたのだ。

「…面白い」

エリアーナは、興味を、惹かれた。

彼女は、自ら、その孤児院へと、足を、運ぶことにした。

孤児院の、裏庭。

そこで、彼女は、その少女、リリと、出会った。

赤毛の、そばかすだらけの、やせっぽちの少女

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