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春の音  作者: うぃ
7/8

第七章:「夕暮れカフェの秘密」

福祉センターでの出会いから数週間。

 誰からともなく「また会いませんか」と声が上がった。

 場所は、駅前の小さなカフェ。古いけれど居心地のいい店だった。


 5人が揃うと、自然と話が弾んだ。

 美羽がLGBTQ支援の話をすれば、千代が昔の恋の武勇伝を笑いながら語り、

 梨花は「職場では言えないんだけどね」と前置きして、初めて自分の心の揺れについてぽつりと話し出した。


 「…女の人を好きになることが、あるんだと思う。最近、はっきりしてきた。」


 その瞬間、カフェの空気が少しだけ変わった。

 誰も驚かない。ただ、静かにその言葉を受け止める。

 そして和子がゆっくりとカップを置き、小さな声で答えた。


 「私も…最近、誰かにドキドキするなんて、思ってなかった。」


 視線は、朋子に向けられていた。

 朋子はゆるく笑いながらも、目をそらさなかった。


 「…同じかもしれないわね。私も、あの時から。」


 頬が少しだけ染まり、指先が震えていた。

 それに気づいた和子が、そっとその手をテーブルの下で包み込む。

 触れた瞬間、言葉では伝えきれない温度が流れた。


 その様子を見ていた千代は、ワインをひと口飲みながらぼそりと言った。


 「若い子には、わからないわね。この感じ。熟れた果実のほうが、甘いのよ。」


 カフェの中に、笑いが広がった。

 そして、美羽がふと立ち上がる。


 「…このあと、どこかもう少し静かな場所に行きません? もっと話したい。」


 梨花が彼女の視線を受け止め、頷いた。


 「ええ。今夜は、まだ終わらせたくない。」


 外はすっかり暮れていた。

 カフェを出た5人の背中が、街灯に照らされ、やわらかく重なっていった――

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