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第六十話「リサナ副会長」

「こりゃ驚いたな。あの副会長の知り合いか」


「こんな偶然あるもんなんだねー」


 あたしとイリスは思わず目を合わせた。

 本来なら簡単に来ることの出来ない島で、たまたま遊びに来た施設で、たまたま助けた人が、たまたまこの場に来ているリサナ副会長の知り合い。

 それも何年も会っていないという知り合いだ。


 色素の抜けたような白髪がメッシュのように一部見られる白みがかった青い髪。

 絡まれていたときはおどおどとしていた子だけど、今となっては元気で活発な雰囲気が感じ取れる。


「その反応……お知り合いなんですね。っと、自己紹介が遅くなりました。あたし、ミリナって言います。リサ姉には養成施設時代に良くしてもらってたんです」


「あたしはサラ、こっちはイリス。副会長にはお世話になってて……あ、そうだ。ちょうど今日――」


 ここに来ていると言おうとした瞬間、イリスがあたしの口を押える。

 

「オレ達はそろそろ行かねぇと。それじゃあ、縁があったらまた会おうや。ほら、行くぞサラ」


「えっ、あ、うん……」


 あたしはイリスに引っ張られて、手を振るミリナに手を振り返してその場を去った。

 すでにミリナの姿が見えなくなった時、あたしはイリスに尋ねた。


「どうしたのイリス? こんな逃げるみたいに……」


 少し速足であたしを連れて行くイリスにあたしは問いかける。

 するとイリスは呆れるようにため息をついた。


「あのミリナって女が本当に副会長の知り合いか分からねぇから下手にここに来ているなんて情報流さない方がいい。軍政国家のユリリアにおいて騎士学園の生徒はつまるところ未来を担う存在。副会長くらいの存在なら外部に知られてても不思議じゃねぇ。もし仮に、ミリナが副会長の命を狙っている、あるいは何かしらの悪意を持っている場合、副会長を危険にさらすことになる。養成施設時代にお世話になったなんて、本当だろうが嘘だろうがありきたりなりなエピソードだ」

 

「もしかしてあたし達もあんまりホワイトリリーの名前出さない方がいい?」


「ホワイトリリーの名前自体は脅しの効力もあるから問題ねぇだろうけど個人名は控えた方がいいな。特にオレ達はあるいみ機密情報の塊なんだから」


 まー魔法複合計画の成功例と応化特性持ちだもんね。

 機密情報が服着て歩いてるようなもんだよ――正確には水着着て歩いてるわけだけど。


 そんな出会いもありつつ、あたし達はみんなの所へと戻った。

 二人でどこに行ってたのかとクレアから懐疑的な視線を受けたが、そんなことより先にリサナ副会長にミリナのことを伝えないと。


 あたしはさっきの出来事をリサナ副会長に伝えると、普段クールなリサナ副会長には珍しくとても驚いていた。


「ミリナがここに……」


「その様子だとお知り合いではあるんですね。なら良かった」


「え、えぇ……まぁ……」


 とりあえず暗殺者とかの線はなさそうで一安心。

 けれどリサナ副会長の表情はあんまり明るくないようで。


「もしかして……あんまり嬉しい再会じゃない感じですか?」


「そんなことはないですよ。……ただ、少し気まずいといいますか……」


 これほどまでに言葉に覇気がないリサナ副会長は初めてだ。

 何があったのか気になるけど、踏み込んでいいものか分からず言葉に詰まる。


「何を似合わない顔してるんだいリサナ君。そのミリナという少女と何かあったのかい?」


「ちょ、ティアナ会長!?」


 さらっとリサナ副会長のプライベートに踏み込むティアナ会長。

 まーそこがティアナ会長の凄い所ではあるけれど、こういう場合は少しヒヤッとする。


「何がって言うほどでもありませんよ。ただあの子は養成施設を辞める時、私は何もすることが出来ませんでしたから……少々気まずいといいますか……」


 リサナ副会長が思いつめた顔を見て、それでもティアナ会長は豪快に笑い飛ばす。


「ハハハハッ、つまりは君が勝手に思い詰めているだけではないか。話を聞くに向こうはまだ友好的な意思を示しているようだし、とっとと行って心のしこりを取って来たまえ。私の右腕ともあろう君がそんな感じでは他の生徒に示しが付かない」


 ティアナ会長の一つ一つの言動が、おそらく二人の関係性じゃなければ地雷でしかないようでヒヤヒヤものだ。

 それでも、二人の関係に亀裂が入ることはなく、リサナ副会長は曇らせていた顔に笑顔を見せる。


「会長の言う通りですね。すいません、少し行ってきます。皆さんはそのまま楽しんでください」


 リサナ副会長はミリナの所に行こうとして、すぐに足を止めて振り返る。


「あーそれと会長。忘れているかもしれませんが今日一日貴女は私の犬のはずですよ。先ほどの言動は少々主人である私に対して失礼ではないですか? 戻ったら躾してあげますので大人しく待っててくださいね」


 ニッコリ笑顔のリサナ副会長。

 その笑顔を見てティアナ会長はさっきまでの豪傑で余裕な表情が不自然に固まっていた。


「サラ君……私はなぜあの時罰ゲームなど提案してしまったんだろうか」


「ティアナ会長……そういうのは大体言い出しっぺがなるので今後は気を付けた方がいいですよ」


 私に出来るのは見守ることだけだ。

 頑張れリサナ副会長……ティアナ会長もある意味ガンバ。

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