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第五十二話「生徒会執行部会長」

 重く真面目な空気が漂う指導室に、とてつもない賑やかな人が入って来た。

 翡翠色の短めな髪と切れ長な眼、長身でスタイル抜群のその人は、黙っていればイケメン女子としてワーキャー言われても不思議じゃない。

 ただファーストインパクトでその美観を上回る印象を植え付けられて、あたしは言葉を失った。

 

 そんな彼女は足は肩幅以上に広げ、両こぶしを上げて叫ぶ。


「ホワイトリリー最強の~生徒会長は~……私だッ!」


「こんにちわ。生徒会執行部、副会長のリサナです」


 あたしの中ではまだ自称の生徒会長の人がキラリと決めると、その後ろからひょっこりと現れたもう一人が自己紹介する。

 橙色の長い髪は後ろで束ねられて、ピンと伸びた背筋とキリッとした目つきが、自称生徒会長のヤバさも加わって彼女の真面目さを際立たせる。


 そんなリサナさんの対応に自称生徒会長は不服そうに頬を膨らませる。


「リサナ君、打ち合わせと違うじゃないか。そこは『くぅ~会長カッコいい~!』と言ってから私の武勇伝を語る流れじゃないか」


「会長が一方的に言っただけで私は了承してません」


「まーそんなこともあろうかと一人バージョンも用意してたんだ。ゴホンッ……空前絶後のォォォ!! 超絶怒涛の生徒かぃ――――」


「こちらが生徒会執行部会長のティアナです」


 本当に生徒会長なんだ……。

 ティアナ会長の自己紹介をぶった切るリサナ副会長に、ティアナ会長は自身の行為の優位性について語りだす。


「…………リサナ君、ことごとく私のプランを潰してくるね。いいかい? 初対面の人に顔を覚えてもらうには最初のインパクトが大事なのだよ。このままだと転入生に覚えてもらえないじゃないか?」


「安心してください。おそらく変な人として未来永劫忘れることはない印象を与えていますよ」


「そんな失礼なこと思ってるわけないじゃないか。なぁ転入生君?」


「えっ……ははは……」


 突然ティアナ会長の視線があたしに向いて思わず苦笑いしてしまった。


「ほら! そんなことはないと笑ってくれてるじゃないか」


「会長、あれは“そんなことあるけど本人に言えない”時に使う笑いですよ」


 おそらくいつも通りなんだろう会長と副会長のやり取りを見て、あたしは視線を逃がすようにみんなの様子を伺う。

 アレクシア先生が『だからアイツに頼みたくないんだ』とボソッとため息をついて、アリシアとクレア、クリスタ先生はもう慣れたかのように振る舞い、それ以外は知ってたけど未だにこのテンションについていけない様子だ。


「アリシア、生徒会長ってどんな人なの?」


 本人に聞こえないように小声で聞いてみる。

 アリシアは生徒会執行部に属しているから良く知ってるだろう。

 アリシアは数秒考えた後、


「凄い人ではあるよ。確かに変わった人ではあるけどね。一対一の公式戦では無敗の実績を誇り、今まで受けた全てのペタル試験で満点の成績を収めてる。文武両道、才色兼備、天衣無縫、唯我独尊……いろんな肩書を含めてついた異名は“最優姫(エクセレントリリー)” 。時期大輪七騎士(セブンスリリー)候補の一人さ」


 こんな人が!? というのが率直な感想だけど、そんな感想が失礼にあたるほど凄い人なのは理解できた。

 話が逸れていきそうなのを察して、アレクシア先生が話の指揮を執る。


「お前達には生徒会長と副会長指導の下、特別訓練を行ってもらう。こんなのでも実力は確かだ。お前達の時間を無駄にはしない有意義な訓練になることは私が保証する」


「そういうことだ諸君! アレクシア先生に今回の一件を任され、私の優れた頭脳は君達に最適な強化プログラムを組む為に回り始めた。厳しく鍛えるだけなら簡単だがそれでは柔軟な思考が削られ、かといって甘やかすだけでは訓練の意味がない。そこで今回のテーマは“よく遊び、よく学べ!” 。場所は南のリゾート地――アステル。諸君、水着の準備は出来てるか!!」


 緊張か高揚か、まさかの場所にあたしの心臓は高鳴った――――。

 

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― 新着の感想 ―
久しぶりに上質な百合を楽しめました。ありがとうございました。
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