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第四十一話「罠」

 損壊エリア。

 非損壊エリアと同じような建物があった痕跡はあるも、家屋は倒壊、ガラス片や瓦礫が道に転がり、穴の開いてない奇麗な壁は少ない。

 

「うぉっしゃぁあ!! 獲ったどぉー!!」


「うるせぇ」


 あたしは人ひとり分の重さがある人形を背負って拳を上げる。

 突然叫びだしたものだからか、イリスが驚きつつも呆れた声でツッコミを入れた。


 なぜあたしがこれほどまでに感極まっているか。

 それは今は三日目の昼過ぎ、保護した人形は三体目。

 損壊エリアに人形はあるみたいだけど、びっくりするくらい見つからず二日目が終わった。


 そんな絶望から一転、三日目の午前中に二体を保護し、最後の三体目もようやく見つけた。

 あとはこれを指定場所に持ち込むだけ。

 

 地獄のような三日間がようやく終わるんだから叫びたくもなる。


「思えば大変だったよね。休んでたら家屋が壊れるし」


「そうだな。壊れた原因はお前が寄り掛かったからだけどな」


「見つけたと思った人形は別の生徒に取られるし。運がなかったよねー」


「そうだな。お前があんな分かりやすい嘘に騙されなければ取られなかったんだけどな」


「二日目なんて何度襲われたことか。隠れてひっそり行動してたのにね」


「そうだな。お前があんなに響く腹の音鳴らさなければ居場所バレない時もあったのにな」


「誠にすいませんでした!!」


 必死に正当化しようと思ったけど観念してイリスに土下座するパート2。


「まぁでもこれで一安心。あとは任務指令書を守り切れば勝ちだし」


「だな」


 イリスはなぜかあまり嬉しそうじゃない。


「どうしたの?」


「……いや、少し気になることがあって」


「気になること?」


 あたしが聞くもイリスは無言を貫く。

 バツが悪そうなその顔は、初日に見せたものとまったく同じで。


「いや、なんでも――」


「イリス」


 はぐらかそうとするイリスにあたしは詰め寄る。

 こうなったあたしが止まらないことをこの数日で理解したイリスは観念するかのようにため息をついた。


「ライア達がここまで何もしてこなかったのが引っかかる」


「試験に忙しいとか?」


「それもあるだろうけど、試験開始時は位置の割り出しがしやすいとはいえ初日から自分の試験を置いて襲い掛かってくる執念を持ってる連中だ。それに人形が全く見つからなかったのに最終日になって見つかったのも何かあると思えて仕方がない」


「偶然じゃない?」


「ならいいんだけどな。お前が人形を騙し取られたってことはこの人形を保護する任務はオレ達以外にも指定されている。ならそれなりの人形が用意されているはずだろ。それに三日目に見つかった人形はどれも近くに置いてあった」


 イリスは指令書を開きそこにかかっている地図を指さす。

 

「ここが一つ目、ここが二つ目、そしてここが三つ目の人形があった場所だ」


「なんか誘導されてるみたいな……」


「ああ。意図的に人形を隠し、今保護してる人形を持っていく場所に誘導しているのなら危険だ」


「でもライアさんの目的があたし達を試験に落とすつもりなら全部の人形を隠せば済む話じゃない?」


「いやライア達の目的は試験に落とすことじゃなくてオレを学園から排除することだ」


「……一緒じゃない?」


「少し違う。試験を不合格にする為なら人形をすべて隠せばいい。でもその場合オレ達は追試を受けることが出来る」


「あーダブルペタル試験は他の試験と違って後期に追試が受けられるんだっけ?」


「そう。アイツらも今回の試験を落としてまで追試に参加しようとは思わない。だから今回の試験で追試を受けられないようにする必要がある」


「つまり追試に影響するような負傷をさせる気ってこと?」


「いや、むしろ危ないのはお前だ」


「は? あたし?」


「仮にオレが重傷を負ってもこの学園の魔法なら一週間で完治できる。それはお前も同じだ。けど仮にお前がそんな目にあったとき、またオレとパートナーになるかは別の話だ」


 ペタル試験は必ずパートナーを必要とする。

 それは追試も同じだ。

 今回の試験に落ち、追試の時にあたしがイリスのパートナーにならなかった場合、イリスは他のパートナーを探すしかない。

 見つけられなかった場合は追試も不合格、つまりは退学だ。


「舐めないでよ。こちとら処刑されそうになった身だよ。多少痛い目にあわされたからってイリスとのパートナーを解消すると思う?」


「お前がどう思うかは別として連中はそう考えてるって話だ。狙いはオレでも、オレを狙うよりパートナーを狙った方が有効的だ」


「……どうする? 少し遠いけど別の指定場所にする?」


「そうしよう。今向かえばまだ間に合う」


「あら、せっかくの誘いに乗ってくださらないのかしら?」


 方向転換しようとしたその時、今一番会いたくない人に遭遇してしまった。


「ライア…………」


 立ちふさがるライアさんを筆頭に四方を十数人の生徒で囲い込まれ、あたし達の逃げ場はなくなった――――。 

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