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第十五話「暗躍」

 国立第一騎士学園、通称“ホワイトリリー”の敷地内には多くの店が営業している。

 雑貨店、飲食店、洋服店にとどまらず、時計やアクセサリーなどの小物を扱う店や、ちょっとした遊技場も存在する。

 学園内にあるので、利用客は当然、生徒や教員などがほとんどだが、学園内にはその店を運営している人や何かの用事で訪問している人もいるので、生徒や教員らしき人が店にいても不思議ではない。


「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」


 右の頬に傷があるやや長身の女性。

 衣服では隠しきれないがっしりと鍛えられた肉体、落ち着きがあるというには鋭い目つきをしているが、獰猛というには覇気のない瞳をしている。

 飲食店に入ったその女性は店員に話しかけられると「待ち合わせだ」とだけ言って店の中へ。

 まだ昼時前というのもあってか、店の中は閑散としている。

 

 一通り店内を見渡し、ポツンと一人座っている客を見るやそちらに歩いていく。

 座っているのはお淑やかな雰囲気を持った短髪の女性だ。

 

「よう、お待たせ」


「いえ、私も今来たところですので」


 短髪の女性の目の前には積み上がった皿がいくつもあった。


「今来たで食える量じゃねえよ。いやそもそも一食で食える量じゃねえよ」


 呆れながら、長身の女性は椅子に腰かける。

 

「ていうかこんな店で待ち合わせってどうなんだ? そこの店員に話を聞かれでもしたら……」


「問題ありません。彼女はもう術中・・です。それで、調査は済んだんですか?」


「ああ。にしても今回の作戦、遂行がオレ達だけってのはどうなんだ?」


「仕方がないでしょう。ここはホワイトリリー……関係者に悟られず潜入するのも一苦労です。ましてや人数が増えれば増えるほど気付かれるリスクが大きくなります。貴女の目算ではどれくらいいけそうですか?」


「五百……いや六百はいけるだろうぜ」


「そうですか。では四百人で切り上げましょう。その後は即時退散ということで」


「随分と弱気じゃねぇか。交流訓練中なら多少騒ぎを大きくしても教師連中は気付かねぇと思うぜ? それに相手は学生。それも全員がクワッドペタル以下だ。このチャンスに欲張らねぇでどうするよ?」


「学園でとある噂が広まってまして……。なんでも、“大輪七騎士セブンスリリー”が交流訓練の見学に来るとか」


「“大輪七騎士セブンスリリー”!? 学園の訓練にわざわざ見学に来るとか、国家最高戦力様は冷戦期の今じゃ暇なんかね? それで、一体誰が来るんだ?」


「それは分かりません。ですが可能性が高いのは“黒鴉姫レイヴンリリー”かと」


の様子でも見に来るってか?」


「どうですかね……。とにかく、その噂の真偽がどうであれ、なるべくリスクは避けるべきです」


「……分かったよ。そう言うことなら仕方がねぇ。引き際の判断は任せるわ」


「了解」


 話を終えると二人は席を立つ。

 その店の店員はこの数時間の記憶が一切なかった――――。



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