湯けむり棒状
彼は虚な目で空を見上げている。
そこは、某温泉地にある檜で出来た風呂の中。彼は胸まで浸かり風呂のへりに両腕を乗せぼんやりと外を眺める。
目が合う。
「あっ、どうも。こんちわ」
コミュ障な自分を呪う。
彼は私の声掛けに反応せず、虚な目で空を見上げる。
どうしても気になる。勇気を振り絞り尋ねる。
「どれくらい入ってるんですか?」
そこから聞くか!?ふつう。
「かれこれ6時間ちょっとかな。タモさん見てからだからそうだね。5時間くらいかな」
どっちだよ!いや、どっちでもいい。おかしいだろ?風呂に5時間以上入ってるって。なんだか心配になってきた。
「ふやけて檜の一部になってたりして笑」
失礼すぎるだろ!初対面の人に!
「なってますよ。ほら、僕少し透けてるでしょ?」
なわけない。人間が透けるわけがない。失礼な質問に面白おかしく返してくれるなんていい人。
ん?向こうが見える。
「お、お兄さん!透けて」
「だからそう言ったじゃないですか。でも、内臓は見えないようにしてます。だって。だってエッチじゃないですか」
ならねえよ!内臓がないぞー。
私は湯から出て彼に一言。
「ちょっとあなたを助けに行ってきます」
着替え向かった先は
ガラガラガラガラ
「すいませーん。訴えたいんですけどー。裁判官さんはいらっしゃいますか?」