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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

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90.坐ってるだけ

 貴族って、ただ貴族なだけでは沈んでしまう。

 特にシストリア令息みたいな人は、いずれ子爵家そして侯爵家を継ぐ立場だ。

 そんな人がのほほんと生活してました、というのでは外聞が悪い。


 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説だと、ただ王子だとか貴族の嫡男というだけですんなり親の跡を継げるみたいだけど、実際には生存競争(サバイバル)だ。

 もっと優秀な跡継ぎ候補がいたら、いくら血筋が正統でもあっさり廃嫡されてそっちが爵位を継いだりするらしいのよ。


 何度でも言うけど貴族家って「家」が重要で、血筋は実のところ二の次だ。

 不出来な子孫だと家の存続が脅かされかねないからね。

 息子可愛さに乱行に目をつぶったりもみ消したりするって、まずないらしい。

 やったらその親ごと潰されたりして。

 テレジア王立貴族学院でそういう事を叩き込まれるのよ。


 なので、例えばシストリア子爵家令息だったら嫡男であってもまず、自分が子爵家を継ぐに相応しい貴族であることを証明しなければならない。

 これって結構大変で、乙女ゲーム小説みたいに学院で優秀な成績だったとかでは駄目だ。

 そんなのは当たり前。

 ていうか学業は訓練(エクササイズ)と見なされるから実績にはならない。

 やっぱり現実に何かやったとか残したとか、目に見える形での業績が求められるらしい。


 エリザベスなんか学院に入る前からお父上の元で商売やって結果を残しているものね。

 そのくらいでないと認められないそうだ。

 なので今回の楽隊の話はとっても美味しいということだった。

 シストリア子爵家令息から見たら棚からぼた餅だろうな。

 だって妹やそのお茶会仲間がほとんど全部用意してくれた楽隊の話に、いきなり責任者として加われるのよ。

 ほとんど手がかからない上に派手で社交界の話題になりそうなお話だ。

 例え失敗したとしたってシストリア令息の瑕疵にはならないしね。

 上手いことやったものだ。


「いや、今日もサエラ嬢は可愛いね」

 シストリア令息と話していると横から声が掛かった。

 こっちはいかにもチャラ男風の金髪で緑の瞳の人だ。

 ただ乙女ゲームの攻略対象と違って背は低いし身体つきも弱々しい。

 イケメンというわけでもない。

 ヒルデガット子爵家令息だ。

 つまりいずれは子爵家当主、そしてヒルデガット辺境伯閣下。

 辺境伯の一族は全員、筋肉ムキムキという話は嘘らしい。


「ごきげんよう」

「堅いよ。

 もっと気軽にしてよ」

 そういうわけにはいかないでしょう!

 こっちは男爵家の庶子なんだよ!

「お戯れを」

「うーん、しっかりしているというか、つまらないというか」

 もういや(泣)。


 かように下位貴族は高位貴族のオモチャだ。

 何を言われても抵抗出来ない。

 その点は私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説に出てくるのと同じ。

 私もヒロインみたいに気軽に会話すればいいのかもしれないけど、ご本人はよくても周囲から顰蹙を買うこともあるからね。

 ここは堅かろうが無粋だろうが礼儀(マナー)を守る。


 幸いにしてヒルデガット令息はすぐに私に興味を失ったらしくて、シストリア令息とお話しながら向こうに行ってしまった。

 私はため息を隠しながらモルズ伯爵令嬢の影に逃げ込んだ。

 何となく、この方が私の保護者みたいになっているのよね。

 悪いけど風避けになって頂いている。


 そのうちに人数が揃ったらしくて、一同テーブルについた。

 私やご令嬢方はテーブルにはつかない。後ろの方の傍聴席みたいな椅子に並んで腰掛ける。

 貴族令嬢ばかりだからみんなドレスで、並んでといっても間隔が空いているんだけど。

 そして壁際には侍女やら侍従やらメイドやら下僕やらが並んでいる。

 それだけで結構人数がいたりして。


 テーブルについている人たちの大部分は貴族ではない。

 貴族家の者が半分くらいかな。

 後は楽団の責任者とか劇場の支配人とか、あるいはその代理とかの人たちだった。

 つまりこれは実務者会議というか、実際に現場でものを動かす立場の人たちの打ち合わせだ。

 そんなの私たちには関係ないと思うんだけどねえ。

 でも発起人だから出ろと(泣)。

 出ても坐っているだけなんだけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 地球だと家が重要だけど、血の方がもっと重要で 青い血にこだわりすぎて近親婚をした挙げ句に家が絶えたハプスブルグ家って有名な王家がありましたね
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