表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/371

78.ならばしょうがない

 数日後、執事の人に呼ばれて応接間に行くと数人の方を紹介された。

 家庭教師の方々だと。


「シシリーでございます。

 礼儀(マナー)担当です」

 やさしそうな初老のご婦人だ。

 引退した貴族夫人というところか。

「あ、はい。よろしくお願いします」


「グレッポ・ノユール。

 語学が専門。

 出身はミストアだが他にもいくつか」

 中年で浅黒い皮膚のいかつい殿方だった。

 気難しそう。

「よろしくお願いします」


「ギルボアです。

 貴族女性の護身術と非常時の行動についてご教授させて頂きます」

 平服着ているけど騎士くさい、やっぱり中年の殿方だ。

「頑張ります」


 (カーテシー)を取ると一斉に返礼された。

 シシリー様は礼儀(マナー)の教師らしく優雅に。

 グレッポ様は異国風に。

 そしてギルボア様は敬礼。

 皆さん、絶対私より身分が高そう。

 それから執事の人を交えて学習の予定(スケジュール)が立てられた。

 私の希望を優先してくださるそうだ。

 何という好待遇。

 もう逃げられないな。


 もちろん家庭教師の方々にも予定があるのですりあわせた結果、礼儀(マナー)は週に一回、語学は週三回、そして護身術は毎日に決まった。

 礼儀(マナー)の授業が少ないようだけど、家庭教師というよりは指導役なので毎回課題を出して頂いて、いらっしゃった時に修行の結果を観て矯正する形を取るらしい。

 つまり私の方は毎日課題を練習しなければならない。


 語学は週三回だけど、それぞれ違う国の公用語を習う。

 一緒にやると混乱するということで。

 これは私が無理を言った結果で、テレジア語は貴族社会での慣用句や発音、言い回しなどを教わる。

 他の二日はゼリナ王国語とミストア神聖語をそれぞれ習う。

 ゼリナ王国は大国なので、その言葉はテレジア王国の社交界でもよく使われる。

 もう学院でゼリナ語講座に参加してはいるんだけど、会話だけなのよね。

 なので普通の会話は当然として読み書きが出来る事を目指すことになった。

 ミストア神聖語は教会で使われる他、テレジア語やその他の国の言葉の(みなもと)になった言葉だから覚えておくと何かと便利らしい。

 普段は使わないけど貴族なら基礎教養といったところか。

 もちろん下位貴族にはあんまり関係ないんだけど、何か嫌な予感がするのよね。

 ほら、私の血筋の影響とかで。

 なので念のために読み書きを習得しておくことにする。

 大変だけど頑張らねば。


 ちなみに護身術は毎日の積み重ねが重要ということで、朝食後に一時間くらい教えていただける。

 というのはギルボア様はやっぱり伯爵家の王都常駐の騎士で、そのくらいなら勤務を空けられるからだと。

「お手数をかけて申し訳ありません」

「何、勤務にメリハリがあって楽しみでございます。

 それと追加のお手当も魅力的なので」

 後半は聞かなかったことにしよう。


 というわけでこれから忙しくなるみたい。

 学院の講義にも出るから他に何も出来なくなりそう。

 小説の(ヒロイン)、絶対こんなことしてなかったよね(泣)。


 冬からだんだんと春になって行く中、私は黙々と勉強を続けた。

 家庭教師の方々から怒られたり呆れられたり首を傾げられたりしながらもたまには褒められたりして。


 礼儀(マナー)は自分でも順調に上達していると感じているけど、シシリー先生曰く「これでいいということはない」そうだ。

 動作が正確で上品でピシッとしていれば大丈夫というわけではない。

 状況や立場によって礼儀作法(マナー)は変わる。

 相手が王族や高位貴族の場合と下位貴族とではもちろん違う作法があるし、式典や舞踏会、パーティ、お茶会と公的、私的な状況でそれぞれ違ってくる。

 更に言えば正解というものがない場合もあって、それはそれは奥深いものなのだそうだ。


「全部出来るようになる必要はございません。

 基本をしっかり覚えておいて、あとは臨機応変で」

 難しいことをおっしゃる。

 とにかく礼儀(マナー)には底がないので、常に学ぶという態度が重要と教えられた。

 孤児上がりの元平民にはきつい(泣)。


 言葉の習得は意外にも順調だった。

 グレッポ様がおっしゃるには私は耳が良いし言語感覚に優れていると。

 だから会話については結構自信がついた。

 ただ暗記が苦手で読み書きの進歩は遅々たるものだった。


「別に構わない。

 御身が将来官僚や事務官、あるいは商人を目指すというのなら別だが」

 貴族界においてすら、読み書きはむしろ特殊技能に近いらしい。

 普通の貴族は公的な書類が読めて私的な手紙が書ければそれ以上は求められないという。


「それはそれでハードルが高いみたいです」

「気長にやることだ。

 ただ神聖語は読めるようになっておくべき」

 教会関係はめんどくさいという。

 ならばしょうがない。

 頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ