表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/371

71.後援

 その後、私はメイドさんに案内されてミルガスト伯爵家タウンハウスの大食堂に連れて行かれた。

 覚悟していたけど、そこにいたのはコレル准男爵様だけだった。

 十人くらいは一緒に食事出来そうな大テーブルの端の方に向かい合って腰を下ろす。

 メイドさんが椅子を引いてくれた。


「皆出払っていてね。

 というよりは休養がてら景勝地に行っている」

「はい」

 そういえばエリザベスも一家でどこかに出かけたんだった。

 別に休暇というわけではないんだけど、社交シーズンからは外れているから貴族の皆さんはこういう機会に羽を伸ばすらしい。

 もちろん王国自体は休んでなんかいないから仕事をしている人はしている。

 学院もやってはいるけど、臨時休講している教授も多いから、みんなそれに合わせて休んでいると。


「コレル様はご一緒しなかったのですか?」

「渉外という役目はみんなが休んでいる時にこそ本領を発揮する。

 正直言えば、普段は雑事が多くてまとまった時間が取れない。

 だからこの機会に色々と片付ける」

 にやりと笑う。

「例えば君の対処について兄上に丸投げされたとか」

「……それはお手数をおかけしました」

「何、久々に楽しい仕事になりそうでわくわくしているよ」


 本当に楽しそうに笑うコレル閣下。

 いつもやってる仕事ってつまらないんだろうか。

 まあいいや。

 気楽にして良いと言われたので貴族のお嬢様としての礼儀(マナー)は守りつつ会話しながら食事する。

 正式なディナーだった。

 晩餐(フルコース)っていうの?

 いつもの賄いと違ってお皿やスープが一皿ずつ出てくる。

 苦手なんだけどなあ。

 それでも美味しいからいいか。

 いつもの賄いもいいんだけどね。

 やっぱり私、使用人の皆さんと一緒だと浮いていたし。

 変な緊張感もあったから早々に片付けてすぐに引き上げることにしていたのよ。

 それに比べたら晩餐(ディナー)は楽だ。


「なかなか綺麗に食事するね」

「一応、男爵家で鍛えて頂きました。

 得意というわけでもないのですが」

 そう、男爵家も貴族だから夕食は一応、晩餐(ディナー)だったのよ。

 まあ、滅多に一家全員は揃わないのだけれど。

 でも練習だからといって私も参加させていただけた。

 最初は見よう見まねで失敗していたんだけど、さすがに半年もやっていれば貴族令嬢らしいお食事作法が出来るようにはなっていたのよね。

 王都に出てきてからは、そんな技能はほとんど使ってないけど(泣)。


「こうやって会話しつつ動作に乱れがない。

 大したものだ」

「あの……これもテストですか?」

「確認と言ってくれ。

 必要があれば家庭教師を手配しようと思っていたんだが、いらないようだ」

 あ、そういうことか。

 ミルガスト伯爵家が私を後援してくれるということは、逆に言えば私を観てミルガスト家の評価が決まることになる。

 貴族は貴族個人を通じてその貴族家を観る。

 私が変な行動をとったら伯爵家の恥になるわけね。


「それでしたらお願いします。

 礼儀(マナー)全般がまだ心もとないので」

 言ってみた。

 本来ならこれって厚かましいお願いだ。

 だってお金がかかる。


 男爵家でも家庭教師をつけて頂けたんだけど、あれは今になって思えば付け焼き刃だった。

 男爵領には他に貴族っていないし、周りは平民ばかりだったから。

 つまり、平民に対する貴族としての礼儀(マナー)を覚えれば良かったのよ。

 王都に出てきて学院の入学試験と「始まりの部屋」でそんな知識や技能は木っ端微塵になってしまった。

 それから貴族令嬢の礼儀(マナー)を必死で覚えたんだけど、ほぼ自習だから実を言えば心許ない。

 モルズ伯爵邸でのお茶会でまだまだだと思い知ってしまった。

 幸い、参加者の皆様がいい人ばかりだったのでお咎めはなかったけれど。

 でも恥ずかしかった。


「いいね。

 その向上心は見上げたものだ」

「そんなのではないです。

 恥をかきたくない一心で」

 どこかで大恥をかいてミルガスト伯爵様の怒りを買いたくないし。

 もっとも心配ではある。

 伯爵家が用意する家庭教師って凄く高いのでは。

 少なくとも男爵家で教わった教師とは比べものにならないと思う。

 だってあの人、片手間(バイト)くさかったし。


「ご負担をおかけして心苦しいのですが」

「そんなことは気にしなくても良い。

 ミルガストの身内になったのだから、むしろこちらからお願いしても良いくらいだ」

 コレル様は寛大だった。

 そうか。

 ミルガスト家はそういう態度(スタンス)になるわけね。

 後援する、というのはそういうことか。


「では」

「早速手配しよう。

 礼儀(マナー)全般だけでいいか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ