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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第二章 学院本科

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66.詰んだか?

 サンディに連れて行かれたのは応接室だった。

 前に執事の人と打ち合わせしたあの部屋じゃなくて、伯爵邸の正式? なお客様対応のためのお部屋みたい。

 そこで待っていたのは執事の人、だけじゃなくてやっぱり今まで観たことがない中年の人だった。

 紳士(ジェントル)

 いや、多分貴族、もしくは貴族家のものだ。


「サエラ男爵令嬢をお連れしました」

 サンディが丁寧に言って頭を下げ、そして下がった。

 つまりそうする必要がある方だと。

「サエラでございます」

 同時にその場で(カーテシー)

 スカートを摘まんで膝をちょっとだけ折る。


 この角度というかタイミングが重要なのよ。

 貴族、でもあまり高位ではない方への敬意だ。

 そういうのは学院の「始まりの部屋」で覚えさせられた。

 貴族の礼儀(マナー)って果てしなく広くて深いんだから(泣)。


「これはご丁寧に。

 こちらへ」

 紳士の方が言って執事の人が誘導してくれる。

 上司臭いな。

 ひょっとしたら執事の人のお父上?

 いや本家の執事が王都のタウンハウスなんかには来ないか。

「失礼します」

 落ち着いてソファーに腰を下ろす。

 この動きにも型があって、例えばソファーとお茶会のテーブルの椅子と晩餐での腰掛け方ではそれぞれ違いがある。

 ご指導の方の前で死ぬほど何度もやり直したなあ。


 心を飛ばしながら、表面上は慎ましく正面を見る。

 中年の方が微笑んでいた。

「お見事でございます。

 よくここまで精進なされた」

「ありがとうございます」

 いやホント、頑張ったよ私(泣)。


「自己紹介させて頂きます。

 私はコレル、伯爵家の渉外を担当させて頂いております」

「よろしくお願いします」

 私の方から自己紹介なんかしない。

 全部知られているはずだし。

 しかしコレル様か。

 家名を言わなかったところをみると平民かな?

 いやサンディの例もある。

 貴族家の人だったとしても、伯爵家に仕えている以上は敢えて平民として動いているのかもしれない。


 貴族はもちろん他の貴族の臣下にはなれない。

 でもそれは「本物の」貴族つまり爵位持ちやその正室、そして跡継ぎの話で、それ以外の「貴族家の者」なら便宜上は平民として臣下を名乗れるのよね。

 サンディがそうだし。

 まあいいや。

 コレルさんの正体が何であれ、執事の人が従っている以上はミルガスト伯爵家でお役に就いているはず。

 だったら私にとっては寄親の家の方だ。


 それから私はモルズ伯爵邸でのお茶会について報告した。

 参加者が言ったことやそのご身分、そして実は皆様高位貴族家の令嬢だったことも。

 知ってるだろうけど、報告しないと痛くない腹を探られそう。

 30分くらい質問に答える形でしゃべり続けて、喉が枯れかけていつの間にか配膳されていたお茶で潤していたら言われた。

「ご苦労様でございました」

 コレル様が執事の人に合図すると、執事の人とサンディが二人とも出て行ってしまった。

 そういえばこの二人、ずっと立ってなかった?

 大変だな。


 ちなみにドアは開けたままだ。

 一応、私は未婚の貴族令嬢だからね。

 男性と密室で二人きりにはなれない。

 ドアのそばには誰かが待機してるんだろうなあ。


「さて」

 コレル様が身体を崩した。

「君も疲れただろう。

 ここからは私的(プライベート)だ」

 うーん。

 どうするべきか?

 貴族の礼儀(マナー)のパターンから外れているな。

 コレル様の身分も判らないし、もっと言えばこんなことをする目的も不明。

 だけど判った事がある。

 コレルさんって思ったより大物だ。

 執事の人とサンディの上司、ではないにしても立場的には相当上だね。

 とすれば。


「判りました」

 私はちょっと姿勢を崩した。

 ほんのちょっとだけ。

 具体的には背筋をまっすぐ伸ばすのを止めた。

 だって疲れるんだよあれ。

 私の前世の人の言い方だとずっと「正座」しているようなもので。

 今の私は身体の力を抜いていて、ソファーに座っているというよりはもたれかかっているというか。

 この姿勢ならまだ結構頑張れる。


「いいね。

 打てば響く。

 しかも的確だ」

 コレル様はにやりと笑った。

「だから言っておこう。

 私はミルガスト伯爵の実弟だ。

 一応、准男爵を継いでいる」

 貴族だった。

 しかも爵位持ち。

 詰んだか?

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