4.平民臭がする
入学早々指示されたところのお部屋に行って見たけど、中に居たのは年齢がまちまちな雑多な集団だった。
もちろん女性だけ。
男はまた別の集団になるらしい。
そもそも貴族家の者が男女同席するのは食事とか儀式の時くらいなのよ。
そこは元は食堂か何かだったらしくて、板張りのだだっ広いだけの部屋だった。
テーブルと椅子が点在していてドレスを着た女性たちが腰掛けていた。
「あのう」
「あら、新入り?」
「ようこそ『始まりの部屋』に」
心配していたような虐めや無視はなくて、みんな気軽に迎えてくれた。
貴族だよね?
聞いてみたら、やっぱりほとんどの人が下級貴族の、それも跡取りや将来実家で何かのお役につくわけではないお立場だった。
「まあ男爵家の」
「気にしないでいいというか、むしろここでの身分は高い方だから」
「私なんか父親が平民上がりの騎士よ。女子なのに一人っ子だからって貴族名鑑に登録されてしまって」
やはり。
皆さん、確かに貴族令嬢ではあるんだけど庶民くさいというか、イマイチ成りきれていないんだよね。
私がそうだからよく判る。
本物の貴族って、やっぱりどこか違うのよ。
多分、生まれた時から貴族として育てられてきたからだと思う。
本人の自覚の前に周囲というか家族の意識がそうなっていて、根本がそれで出来ているんだろう。
例えば平民と一緒に育ったり、そこまでいかなくても家族の中に将来平民になる者がいたりしたら、やっぱり本物の貴族にはなれないんだろうなあ。
まあ、そんなことはいい。
思いも掛けず仲良くしていただいたお仲間達によれば、この教室? は私のような入学テストでトチッた者のためにあるらしかった。
あのテストに合格点を取れないようなレベルでは、とても他の方々と一緒に学んだりは出来ないということで、ここで勉強し直すことになるそうだ。
「ここで授業を受けるのですか?」