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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第二章 学院本科

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46.駄目だ詰んだ

 確かにお嬢様の生活じゃないことは判る。


「教会にも行っていますが」

「それはご立派ですが、人脈にはつながらないでしょう。

 そこでです」

 執事の人は懐から封筒を取り出した。

「ミルガスト伯爵令嬢よりお預かりしました。

 紹介状です」

 何と。

「あの……何の」

「お嬢様のお知り合いで王都在住の方のお茶会があります。

 もうお話は通っていますので」

 何を勝手に!


 お嬢様って領地伯爵家の嫡子だよね?

 そのお知り合いということは、やっぱり高位貴族の方なのでは。

「ええと……お断りするわけには」

「参りません。お嬢様の顔を潰すことになります」

 ですよね(泣)。

 判りました。

 死ねばいいんでしょう。

 震える手で紹介状を受け取る。

 立派な紙だった。

 紋章入りで私の名前もばっちり書かれている。

 これ自体、高価なのでは。


「正式なものですよね?」

「はい。服装規定(ドレスコード)があります」

「そのような場に合うドレス、持ってないんですが」

「お嬢様からご自分のドレスをお貸しするよう言いつかっております。

 サイズの調整や装飾も伯爵家で」

 駄目だ詰んだ。

 もう行くしかない。


「ありがとうございます」

「開催日は一週間後です。

 早速、ドレスを選びましょうか」

 というわけで大騒ぎになった。

 タウンハウスにはそれ専用の部屋があるということで、連れ込まれたその場でまず馬鹿でかいクローゼットにずらっと並んだドレスから好みの物を選ばされた。

 とりあえず5着選べと。

 これが高位貴族か!


「こんなに」

「一応の候補です。サイズ合わせとあなたにお似合いになるドレスの選別ですが、その前にまずご自身の好みがありますので」

 私についてくれたメイド、というよりは侍女の人が教えてくれた。

 執事の人はもちろん男性だから立ち会えない。

「良いのでしょうか」

「ここにあるものは少し前までのドレスですので、もうお嬢様はお召しになりません。

 お下がりで申し訳ないのですが」

「とんでもないです!」


 ここでいうお嬢様って伯爵令嬢の事だ。

 しかし凄い。

 少し前まで着ていたドレスを惜しげも無く貸してくれるとは。

 え?

 仕立て直ししちゃうの?


「どちみち捨てるしかない(ドレス)ですから」

 侍女の人はにっこり笑った。

「名目上は貸与ですが、実質お譲り頂けるということです。

 今後もパーティやお茶会に参加なさるのでしたら少なくとも数着は必要でしょう」

「ありがとうございます」

「それだけ期待されているということです」

 いや、逆に言えば「失敗して恥をかくなよ」という脅しだよそれ。

 寄子の男爵家の令嬢がやらかしたら伯爵家の顔に泥を塗ることになるから。

 ううっ。

 きつい。

 だから嫌だったのに!


 でも運命には逆らえない。

 ということで私はドレスを選び、前世の人の記憶で言う着付(スタイリスト)の人に合わせて貰った。

 意外にもぴったりだった。

「お嬢様って私と体型が一緒なんですか?」

「これらのドレスは数年前のものですね。

 その頃のお嬢様はちょうどあなたと似た体型だったので」

 お嬢様って私より年下だよね?

 なのに数年前の年格好が今の私と同じって。


「お嬢様は……とても発育がよろしいので」

 侍女の人が言葉を濁した。

 なるほど。

 胸とか腰とかが発達したと。

 だからドレスが着られなくなったのか。

 確かにこのドレス、胸の辺りが慎ましいんだよ。

 私にぴったり(泣)。

 着付けの人がドレスのあっちこっちを針で止めて合わせてくれた後、すぐに脱がされた。

 それで終わり。


「簡単なんですね」

「仮縫いの状態です。

 直してからもう一度合わせます」

 さいですか。

 プロって凄い。


「一着だけでいいんですか?」

「体型はこれで判りましたから。

 後は装い(コーディネート)になります」

 なるほど。

 片付けにかかる着付けの人を尻目に部屋を出ると執事の人が待っていてくれた。

「良い物がありましたか」

「問題ありません」

 侍女の人と会話してから私の方を向く。

「一度お店に戻しますので。

 数日かかります」

「よろしくお願いします」

 私としてはそう言うしかないよね。

 それでは、と挨拶して引き上げる。

 疲れた。

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