43.恋愛などない!
いつの間にか冬が来て、庭での水浴びが死に直結しそうなので部屋で身体を拭くだけになってからしばらくたつと、年が明けた。
王都だから王宮で何か式典とかあるのかと思ったけどなかった。
社交シーズンじゃないしね。
というのは冬は寒くて何をするのも大事なのよ。
パーティとか舞踏会とか開いたら暖房費が凄いことになる。
そもそも王国の北部の貴族は出歩くことすら大変らしい。
雪の中を王都に来いとか言ったら反乱を起こしそう。
王都に住んでいる貴族やお金持ちの人たちの多くは南の方に避寒しに行っているそうだ。
エリザベスも家族と一緒に去った。
一緒に行かないかと誘って貰ったけど遠慮した。
だって今のところ、私は下位貴族の庶子というだけでエリザベスからみたら付き合って何の旨味もないのよ。
親しい友人ではあるけど、それだけだ。
避寒旅行にご招待なんかされたら何かあると疑われる。
そんなことでミルガスト伯爵様やお嬢様の反感を買いたくない。
そのお嬢様も伯爵家の領地というか実家に戻っている。
よって冬のタウンハウスは気楽なものだった。
学院も開いてはいるものの、教授方の大半は出てこないので生徒もいない。
開店休業状態。
こういう時こそ何か半端仕事をして少しでも稼ぎたいものだが、貴族令嬢にはそんなことは出来ない。
前世の人の言葉でぼらんてぃあ、とかいう教会の手伝いくらいしかすることがない。
「だったら楽器の練習でもしたらいかがでしょうか」
ある日、執事の人に言われた。
伯爵領のお屋敷の執事の息子で王都のタウンハウスを仕切っている人だ。
「王都に残られたんですか」
「伯爵領に戻っても父にコキ使われるだけですので。それにこのタウンハウスを放り出すわけにもいきませんし」
まあ、お茶でもと言われて応接間に案内される。
「いいんですか」
「お嬢様もおられませんし、このくらいは」
伯爵様の末の令嬢は学院に通っているが、今は領地に戻られている。
噂では輿入れが決まりそうらしい。
それは気楽でしょうね。
今のところ、この執事の人がタウンハウスで一番偉いわけだし。
私?
居候には権力なんかありません(泣)。
執事の人は手ずからお茶を煎れてくれた。
そういう技能もあるのか。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
私も学院で鍛えられたせいで、貴族のお嬢様の真似くらいは出来るようになった。
ソファーに向かい合って座り、しばらく黙ってお茶を飲む。
外は寒いけど暖房が効いていて居心地がいいなあ。
こういう場にいると、私って本当に貴族令嬢になったんだなあと思ってしまう。
だって孤児院って冬は寒いし夏は暑いのよ。
ちなみに若い男女が密室で二人きりでいるわけだが、男女間の甘い雰囲気は皆無だ。
執事の人にとって私はご主人の預かり物だし、そもそも私と親しくなっても何のメリットもない。
私も執事の人とどうにかなろうなどとは思わない。
恋愛?
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だって私、乙女ゲームのヒロイン、というよりはそのなれの果てだよ?
攻略対象は全滅していて今更どうにかなりそうにはないけど、それでも心配だ。
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まあ大丈夫だろうけど、可能性は少しでも潰しておきたい。
命がかかっている。




