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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第二章 学院本科

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37.教科書などない!

 講座は学院内のお部屋で開催される。

 専用の部屋とかはなくて、どこそこのお部屋で何曜日の何時から何時まで、という予定表(スケジュール)があるそうだ。

 試しにとあるお部屋を覗いてみたら何ということもない普通の部屋だった。

 というか客室?

 窓際に机がある他はソファーが並んでいるだけだ。

 私の前世の人の記憶だと、教室って教壇とか黒板とかがあって、向かい合う形で個人用の机と椅子がたくさんあったけど。


「そんなものはないわよ? 何その黒板って」

 エリザベスに変な顔をされた。

「いや、教える事を板書きするためのもので」

「教授はそんなことしないから。

 口述だけね」

 何と。

 先生はお話するだけで、生徒はそれを聞いて覚えるそうだ。

「ノートとかないの? 教科書は?」

「どこの王家のお話なのよ。そんな高価なものを使えるわけ無いでしょう」


 衝撃!

 テレジア王立貴族学院には教科書もノートもない!

 それどころかいわゆる「教室」もない!

 あるのは先生を囲んでお話を聞くためのお部屋だけ?


 エリザベスが言うには、そもそも本というものは高価すぎて貴族といえども持ち歩けるようなものではないそうだ。

 生徒が読める本は図書室にあるけど、本には鎖がついていて持ち出せない。

 私の前世の人の記憶にある紙のノートの話をしたら呆れられた。

「どこで聞いてきたのそんな馬鹿な事。紙ってもの凄く高いのよ」

 そもそも、そんなに多くは造られていないから何かの書き物で使い捨てにするなど考えられないそうだ。


「なぜそんなに高いの?」

「だって需要がないから。字を読めるのって貴族の他は役人や商人くらいなものだし、使う書類も量も限られるでしょ。

 大量生産しても売れないから商人は手を出さない。

 確か王政府直属の役所が製造して専売しているはずよ」

「本にすれば」

「誰が読むのよ。平民の識字率って百人に一人くらいよ」


 そうだった。

 私の前世の人の記憶が詳しすぎて忘れていた。

 この世界には本当に本が少ない。

 サエラ男爵家には一応図書室があったけど、机の他は棚がひとつだけで法律とか経済とかの本ばかりだった。

 娯楽本というものはほとんど皆無だ。

 だって文字の読み書きって貴族の他は仕事に必要な役人や商人、あと教会の関係者しか出来ないのよ。

 そもそも義務教育などないから平民は大人になっても満足に読み書き出来ないのが当たり前。

 もちろん商人は商売に必要だから文字や計算を学ぶけど、それは特権と言っていい。

 平民が行く学校って、ほぼそれだけが目的だったりして。


「そうか。だから商人が授爵したりするわけね」

「そうそう。

 後は騎士だけど、騎士団でも見習いには文字や計算を教えているからね。

 読み書き出来ないと騎士にはなれないから」

 役人も同じか。


「あ、そういえば学院の入学試験は紙だったよね?」

「貴族専用だからね。

 口述で試験するよりは安く上がるし」

 なるほど。

 一対一の口頭試問では手間がかかってどうしようもないわけか。

 それに筆記試験にすれば、解答以前に読み書きの能力を試せる。

 問題文すら判らない人は問答無用で「始まりの部屋」行きだ。

 良かった男爵家で教育して貰えて。


 私は孤児院で育ったから男爵家に引き取られた時は自分の名前くらいしか書けなかったのよ。

 家庭教師をつけて貰ってもまともに読み書きが出来るようになるまで半年もかかったっけ。

 それから礼儀(マナー)とかだもんね。

 思えば遠くにきたもんだ。

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