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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第十章 盟主

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359.文通

 というわけで語学研修の時間が増えた。

 どうせ暇を持て余していたのでむしろ助かった。

 私って地道な努力とか毎日コツコツとかは得意だから。

 それに、色々な国の言葉の読み書きが出来れば読書の範囲がぐっと広がるものね。

 言い忘れていたけど神託宮には独立した図書館があって、それこそ何万冊も蔵書がある。

 その大部分はテレジア語やミストア語じゃないから読みたければ言葉を覚えるしかないのよ。


 ちなみに読み書きの勉強方法は通信添削だった。

 会話の授業とは別に担当の講師から宿題が出て、私は辞書を片手に指定された言語でせっせとお手紙を書く。

 テーマは決められていて、単語や文法に加えて文章力や構成力まで問われるという面倒くさいものだった。

「どうせなら実践的なものがよろしかろうと」

 それはそうか。

 読み書きの目的がお手紙なんだから、最初からそれ一本に絞った方が効率が良い。

 それに、私的なお手紙という設定なので専門用語とか複雑な政治情勢的な内容はいらないからね。

 ていうか書いたら駄目だろう。


 私のお友達というか配下というかになっている各国の王女様との文通を目指すということで、それぞれの国の主要言語を習得することになった。

 目標は王族と文通出来るようになること。

 十ヶ国以上あるんですが(泣)。

「大したことはない。

 どこの国も起源(ルーツ)を辿れば(いにしえ)の大帝国に連なるからな。

 まずは古代帝国語を覚えて」

 私はメロディみたいな化物(チート)じゃないんだよ!


 メロディは恐ろしい事に、既に各国の主要言語を読み書きを含めてマスターしていた。

 しかも私みたいに家庭教師に習ったわけじゃない。

 自然に覚えたそうだ。

「自然って何よ」

「普通に会話していただけだが?

 後は辞書を引きながらその国の小説や論文とかを読んで」

 怪物(モンスター)めが。


「ねえ、ロメルテシア」

「何でございましょう」

「どう考えてもメロディの方が真の巫女という気がするんだけど」

 するとロメルテシア様は目を丸くして言った。

「とんでもございません。

 マリアンヌ様こそが当代の巫女。

 これは神聖教全ての見解でございます」

「でもメロディと私とでは性能(スペック)に差がありすぎるような。

 私って巫女の資格無くない?」


 するとロメルテシア様は姿勢を正して言った。

「巫女の資格とは何でございましょうか。

 単に頭が良いとか実行力があるとかカリスマに満ちているとか、あるいは指導力があるというようなものではございません。

 それらは些細な特徴でございます」

 いや、それだけあったらどうみても支配者でしょう。

「でも」

「マリアンヌ様こそが真の巫女でございます」

 駄目だった。

 ロメルテシア様の中では既に結論が出ていて小揺るぎもしない。

 ちなみにそんなに桃髪(ピンクヘアー)がいいのかと聞いてみたら違うそうだ。

 そんなものはヅラで誤魔化せるし、そもそも巫女は外見で選ばれるものではないと。

 じゃあ何なのよ。


 メロディに聞いてみたらため息をつかれた。

「そういう事を言うこと自体が私には納得出来る理由になると思うけどな。

 心配するな。

 マリアンヌが巫女だ」

 さいですか。

 みんながそう言うのならそうなんたろうけど。


 腹立紛れに各国の言語でメロディ宛の手紙を書いたら翌朝には添削されて戻って来た。

 私はレベル上げ不足のまま魔王に挑んだ勇者か!

「どれ、回復してやろうか」とか言われそう。

 嫌になったけど、よく考えたらこれまでの私の人生ってずっと同じだった事を思い出した。

 相手()は私と比べものにならないほど強大で。

 いつも自分の力の無さに泣きながらコツコツ頑張って生き延びてきたのよね。

 諦めないのが私の唯一の長所かも。


 しばらくメロディ相手の多言語文通を続けていたらロメルテシア様とメロディから「まあ、いいだろう」というお墨付きを貰ったので王女様達にお手紙を出してみた。

 それぞれの言葉で。

 内容はと言えば他愛のない、時候の挨拶のようなものだったけど。

 時間差はあったけど怒濤のように返事が返ってきた。

 内容は全部似たようなもので、思いも掛けず私からの親しいお手紙を頂いて感激したと。

 本当は向こうからお手紙したかったんだけど、忙しい? 私の迷惑になるんじゃないかと言われて遠慮していたと書いてあった。

 いや暇ですが?


 まあ、嫌がられてないことが判ったので、これからは定期的にやりとりしましょうとお返事したら迅速に返事が返ってくる。

 向こうは私と一対一なんだけど、私はそれぞれ違った言葉で一斉に話しかけられているようなものだぞ?

「いいじゃないか。

 これで連中は完全にマリアンヌ贔屓だ」

 無責任に言い放つメロディ。

 今や神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の何とか局長に就任していて殺人的に忙しいはずなのに、しばしば神託宮に来ては駄弁っていくのよね。

 いいの?


「盟主の意向を伺うのは立派な職務だぞ?

 私がマリアンヌの寵愛を受けているという証拠にもなる。

 神託宮参りは必須だ」

 メロディも巫女なんだけどなあ。

 専用の執務室もあるし。

 でもそうじゃないふりをしていた方が仕事が捗るらしくて、メロディの正体については禁忌(タブー)になっていた。

 知ってる人は知ってるけど。

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― 新着の感想 ―
あれだな。ギリ自分たちと同じ階層にいて、「神秘性」とかいうオーロラみたいなのがかかってるから巫女に相応しいんやな。 メロディは地頭の関係で巫女より上になりかねないから巫女になれない。
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