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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 名誉学長

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350.安定

「メロディアナ様は各国の国王陛下名代とのご親交を担当されます。

 第一回の理事会はともかく、以後はミストアに常駐して各国の代表として活動される方々ですので」

「ああ、そうか。

 国王陛下がいつまでも国を離れているわけにもいかないものね」

 メロディから聞いてはいる。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)は単なる連絡組織じゃなくて、それ自体が一種の政府だ。

 というよりは議会と執政府が一緒になったようなものとか。

 理事会が常設されていて、各国から派遣された理事はミストアに駐留して議論や決定を行う。

 私の前世の人の世界でいう国連大使みたいなものらしい。

 よく知らないけど。


 理事を任命するのは各国のトップで、自国の利益代表でもあるから重要人物が選ばれる。

 それこそ国王の名代にもなれそうな立場の人たちだ。

 メロディはそういう人たちと親交を強めていると。

 遊んでいたり逃げたわけじゃなかったのか。

「適所適材でございます」

 それもそうか。

 私に各国の国王陛下やその名代と親しくなれとか言われても無理だものね。

 同様に、メロディが巫女として奉られてずっと坐っているとか出来そうにない。

 だから私はこれでいいのだ。


 髪が乾くと巫女のローブを着せられたけど、さっきのと違って少し重かった。

 しかもその下には厚手の革のコルセットみたいなものを装着された。

 装甲かよ。

「暑いんだけど」

「御身をお守りするためでございます。

 ご辛抱を」

 つまり、まだ危険が危ないというわけね。

 厳選されているとはいえ、よく知らなかったりほとんど初対面の方々が多数参加するのだ。

 どんな人が紛れ込んでいるのか判らない。

 もちろん本当にヤバかったらそもそもそんな席には出さないとは思うけど、でも万一のことは常にある。

 だから防御力をできる限り上げておく、と。


「毒とかは?」

「極力、何もお口にされないようにして頂きたく」

 宴会に出て飲み食い出来ないとは!

 まあパーティなんかも似たようなものなんだけど。

 モブならともかく、ある程度の身分や立場にいる人は料理を食べている暇なんかないのよね。

 最初から最後まで人と会ってお話するだけで終わる。

 だからそういうパーティに出る王族や高位貴族は出席前に腹を満たしておくとか。

 私はそんな立場じゃないからこれまでパーティに出たら喰いまくっていたんだけど、もう駄目みたい。


「それでは」

 最後に姿見で全身を真正面から見たら何か凄かった。

 私の前世の人の世界にあった軽小説(ラノベ)に出てくる聖女とかみたいだった。

 小柄で細身でグラデーションが効いた美しいローブを身につけた桃髪(ピンクヘアー)の美少女。

 いや17,8にもなって少女もないとは思うけど、前にエリザベスに言われたとおり私は歳より幼く見えるのよね。

 前世の世界だと下手したら小学生、いやそこまではいかないけど(泣)。

 特に桃髪(ピンクヘアー)が泣ける。

 私の前世の世界で流行っていた何とかキュアのキャラ、いやそのコスプレそのものだ。

 あのアニメに聖女とか巫女とかって出てたっけ。

 つい現実逃避しそうになったけど、ここは堪えなくては。


「では行こうか」

「御意」

 そして私は巫女就任祝賀会(戦場)に向かった。

 会場は神託宮でも中央教会でもなく、ちょっと離れたところに建っている迎賓館だった。

 教都には大陸の各国から結構頻繁に各国の貴顕が訪れたり聖地参拝に来たりするので、その歓迎のために建てられたそうだ。

 豪華さは王国の宮殿に引けを取らない。


 ミストアって実はもの凄く豊からしい。

 普通の王国なら王族を初めとした貴族階級が富を独占しているんだけど、ミストアにはそういう階層がいない。

 大富豪とか大商人とか、あるいは各地での支配階層は存在するけど何せ支配者である教会が質素節約を旨とするので、あまり華美には走れない。

 そのために富は庶民階級に分配されるので、全体的に余裕がある。

 更に言えば宗教国家だから人民の統制がもの凄く楽らしいのよ。


 普通の王国だと土着の宗教や狂信的な思想なんかに(かぶ)れた不穏分子が騒ぎを起こしたりするんだけど、それがほとんどない。

 だからそういうのを取り締まる警察的な組織も最小限でいい。

 軍隊にしても徴兵じゃなくて志願制だという。

 普通の国だったら喰うに困って入隊したという兵隊が多いんだけど、その代わりにミストア神聖教の信徒としての義務感や使命感に燃えた若い人達が志願してくれるそうだ。

 そう出来るのは、結局は人民に余裕があるからなんだけど。


 というような理由をロメルテシア様が説明してくれたけど、メロディは難しい顔になった。

「それは表の顔だろう。

 裏は?」

「おっしゃる通り、全てが上手くいくことはございません。

 飢餓感(ハングリー)に欠けるために、ミストアは国家としての活力が今ひとつ、というところでございます」

 人は満ち足りると欲がなくなるとまではいかないけど、あまり前に出ようとしなくなるという。

 ここ数十年、ミストアの人口は僅かずつだけど減少傾向にあるそうだ。

 理由としては若い人たちが結婚しなくなったり子供を作りたがらなくなったりしたため。


 何か私の前世の状況みたいだなあ。

 日本という国も平和が続いたことと、社会が安定してみんながあまりガツガツしなくなったために活力が失せていたらしいのよね。

 若者はのし上がりよりは手近な娯楽に走っていて。

 乙女ゲームとかもその一環らしい。

 まあ、本当の原因は社会構造が固定化されて貧富の差が拡大し、貧乏な人が結婚出来なくなったからということになっていたんだけど。

 でももし戦争とか大災害とか起こったら、みんな我先に結婚したり子供を作ったりするんじゃないかなあ。

 生存本能に勝る衝動はないから。

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