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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 名誉学長

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347.無茶振り

「御身の祖母上は逆だな。

 自分では直接は動かないのだが圧倒的な戦略に絡み取られて、気がついたら署名させられていた」

「『沈黙の龍(サイレンスドラゴン)』でございますか」

「そうだ。

 恐ろしいぞ。

 機嫌を損ねたら火炎(ブレス)でなぎ払われそうで」

 陛下は何か思い出したのか身震いしていた。

 そんなに赤裸々に話していいんでしょうか。

 私、テレジアの貴族なんですが?


「御身はもう、そんなちっぽけな場所にはいなかろう。

 大陸を統べる立場なのだぞ」

「とんでもないことでございます」

「現実を観よ。

 もはや後戻りは出来ぬ。

 というわけで我が国は御身を支えることにする。

 よしなに」

 そうのたまって頭を下げる陛下。

 国王がそんなことしたら駄目でしょう!


「お戯れを」

「本気だ。

 御身と話して確信した。

 御身以外に神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の盟主が務まる者がいるとは思えぬ」

 唖然とする私を置いて満足そうに笑う陛下。

 どこの国だったか最後まで判らなかったけど。

 でもそれから何度も似たような状況に追い込まれた。

 晩餐の席で教皇猊下が名代の王弟殿下とかと話している間、隅の方で私が国王に絡まれる。

 そして個人的なお話を延々とさせられたあげく、最後は「御身を支える」とか言われて終わるのよ。

 あんまり多いからルーティンになってしまった。


「素晴らしいじゃないか」

 昼餐(ランチ)の席でメロディが楽しそうに言った。

「何がよ」

「順調に各国の国王陛下(トップ)を籠絡していると報告にあった。

 皆、ミストアの雌虎(タイグリス)にメロメロだそうだ」

 何てことを!

 雌虎(タイグリス)が国際的な通称(二つ名)になってしまった。

 祖母は(ドラゴン)、母は女帝(エンプレス)、そして娘の私は雌虎(タイグリス)

 どんな化物一家なんだ(泣)。


「私らの前世の世界では甲乙付けがたい力関係を竜虎と呼ぶんだが、これでマリアンヌもハイロンド王太后殿下(シェルフィル様)に匹敵する強者だと国際的に認められたわけだな。

 いや目出度い」

 メロディ、死にたいの?

 本人は安全圏に居るくせに人をデスッてくるって。

「さすがはマリアンヌ様でございます。

 各国の国王陛下をいとも簡単に籠絡させておしまいになる。

 ミストアの巫女としても出色の方かと」

 ロメルテシア様の方はもう駄目だな。

 完全に目が曇って(フィルタリングされて)しまった。

 もともとミストア神聖教の教義からして巫女を神格化している上に自分は使徒という立場で巫女に帰依するものだと思い込んでいるからなあ。

 何か失敗しておいた方が良かったかも。


「止めておけ。

 マリアンヌの立場は未だに不安定ではある。

 同盟が成立して動き出すまでは自重することだな。

 マリアンヌは座っているだけでいい」

 その他の事は私がやる、と言い切るメロディ。

 ヘラヘラしているようだけど真剣だった。

 汚れ仕事も出来てしまうんだろうなあ。

 メロディの前世って本当に21世紀日本の女子高生だったんだろうか。

 平和ボケの兆候がまったく見られないんだけど。


 疑問が湧いたけど、私の視線を感じたらしいメロディは肩を竦めて言った。

「マリアンヌ、お互い様だがもう前世に拘るな。

 そもそも前世は限定された記憶しかない上に個人情報が皆無だ。

 我々に関係ない何かの物語のようなものだ。

 それに、我々は既に前世で過ごした期間よりこっちの方が長いんだぞ」

 そうか。

 それはそうよね。

 私ももう17歳。

 前世で過ごした人生と同じくらいは過ぎたんだ。

 しかもこちらの(マリアンヌ)は私自身。

 加えて結構過激(ハード)な環境だったものね。

 正直言って私の前世の人の人生というか生活って露骨に平和でぬるま湯に浸っていただけだった。

 こっちと違って命が危ないとか殺さなきゃ殺られるとかいう極限状態なんか皆無だった。

 責任もなかったし。


 そう、私の前世の世界って「子供」で居られる期間が異様に長かったみたいなのよ。

 生まれてから20年くらいは未成年で。

 そうじゃない人もいたけど、私の前世の人が生まれた国では大半の人が20歳過ぎてもまだ正式な社会の一員として認められていなかった。

 働くことは出来たけど、責任ある立場についたり重要な仕事をまかされることもなかったような。


「とにかくマリアンヌはそれでいい。

 出来れば連盟が成立する前にすべての国のトップと親しくなっておいてくれ」

 メロディは平気で無茶振りしてくるけど、実際このままでは実現してしまいそうだ。

 私が何かするんじゃなくて予定(スケジュール)に余裕があればだけど。

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