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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 名誉学長

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343/371

342.哀しいけどこれ、戦争なのよね。

「まあ、それについてはどこの国でも多かれ少なかれ認識はしていたはずだ。

 いきなり始まったわけじゃないからな」

 メロディが言うには、それこそ数百年前から他大陸にも国があることは知られていたそうだ。

 それ以前から時々明らかにこの大陸産じゃない船が寄港したり、どこの国のものでもない商品が細々と出回ったりしていたらしい。

 ただ、そういう接触は個人的というか、組織的なものではなかったので大した影響はなかったという。


「三百五十年ほど前には大きな事件があったようでございます」

 ロメルテシア様が言い出した。

 そんなに昔の事をなぜ知っているんだろう。

「それもミストア、いや使徒としての知識か?」

「はい。

 神託宮は常に情報(データ)を収集しております。

 それによりますと」

 大陸北部の何とかいう国に数隻の船団が寄港した、というよりはたどり着いたことがあったらしい。

 貿易や探索じゃなくて避難だったそうだ。

 つまり、どこかで政争に敗れた人達が船で逃げてきたと。

 その何とかいう国は数百人の難民をとりあえず受け入れて難民キャンプを作り、事情聴取を行った。

 最初はお互いに言葉も通じなくて困ったが、何とかこの大陸の国じゃない所で使われている言葉が通じる人を探して意思疎通に成功したという。


「別の国って?」

「かなり遠い島国があるのだそうです。

 そこでしか採れない特殊な香料や果物を細々と輸入している商人がいたということで」

 ああ、その国の言葉が共通語になったと。

 まだるっこしいけどそれしかないのなら仕方がない。

「それで?」

「最終的にはその国は難民を受け入れました。

 土地を提供して移住してもらい、技術交流などを通じて知識を交換して」

「それは良かった」

「その後、当該国は政変などで消えましたが元難民の方々はこの大陸に同化したとのことでございます」

 うーん。

 数百年前だったらもう完全にこっちの人になっちゃってるだろうなあ。

 あんまり戦争の役に立ちそうにも無い。


「それは幸運だったな」

 でもメロディは違う意見みたいだった。

「そう?」

「ああ。

 少なくとも他の大陸には数百年前に既に船団を組んで大陸間を渡航出来る程の勢力が存在していたことが判る。

 しかも政変で追われてきたのなら、それなりの勢力が群雄割拠していても不思議じゃない」

 なるほどなあ。

 類推するとそうなるのか。

 私の前世の人は納得しているようだ。

 私自身はよく判らないけど、どうも類推って色々なデータを組み合わせて結論を引き出す手法らしい。

 理系、エグいよ。


「その人たちは進んだ技術とか持っていなかったの?」

「数百年前だからな。

 こっちと大差なかっただろうし、それからどう進歩したのか見当もつかない。

 ただ」

 メロディは肩を竦めた。

「その時代には既に長期の外洋航行能力がある大型船を複数製造・維持運用していたわけだからな。

 侮れん」

 確かに。

 難民とはいえ、それだけの人数でこっちの大陸まで渡ってこれたわけだ。

 それを拡大すれば侵攻軍が実現出来そう。


「今はどうなっているのか判らないのよね」

「……それについては軍機というか、秘匿情報でな。

 あまり詳しくは言えないが、こっちからも偵察船は出していると聞いている。

 その他にも交易商人に扮した諜報員(スパイ)が」

 うわー。

 聞きたくなかった。

 エリザベスのお父上みたいな人がいるのかもしれない。

 表向きは商人なんだけど、実は王家の手の者とか。

「この話題はここまでにしよう。

 我々とはあまり関係ない」

「それはそうよね。

 私たちが詳しく知る必要はないし」

 神託宮に閉じこもっている巫女だものね。

 私はニコニコ笑っていれば良いのだ。


 何となく気まずくなって解散したけど、メロディやロメルテシア様が色々と動いていることは判った。

 私と違って実務担当だものね。

 これについては前に話し合ったことがあるんだけど、(マリアンヌ)の役目は旗振り一辺倒だということだった。

 軍隊で言えば前線で戦う兵隊やそれを指揮する士官じゃなくて、みんなから見える所で軍旗を持って立っているのがお仕事という。

 志気を鼓舞するお役目ね。

 だから何があっても立ってなきゃならない。

 私が倒れたり逃げたりしたら全軍が崩壊する恐れがあるらしい。

 そんなお仕事は嫌だけどしょうがない。

 哀しいけどこれ、戦争なのよね。

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