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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 名誉学長

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338.名誉学長

 そうか。

 メロディの場合、王女として生まれたことが一番の強みだ。

 ただそれだけで絶大な影響力がある。

 前世の知識とかは付け足しに過ぎない。

 前世があるからこそ、よその大陸からの侵略に対処できるとも言えるけど、それはむしろメロディ自身の性格なんじゃないかな。


「マリアンヌは何といってもその桃髪(ピンクヘアー)だな」

 悪かったわね。

 これのせいである意味騒動に巻き込まれたと言っていいのに。

 もっとも直接の原因は王家の瞳だけど。

 例えば私がごく普通の茶色とか青色とかの目だったとしたら、多分母上に連れられてハイロンドに行って政略結婚要員として教育を受け、順当にどこかに輿入れしていたはずだ。

 その進路(ルート)はテレジアの「王家の瞳」のせいで駄目になってしまった。

 桃髪(ピンクヘアー)は目立つけど、それだけでは大した問題にはならなかったと思う。

 母上と祖母上のせいだ。

 ていうか露骨に王家の血筋だから。

 もっとも「王家の瞳」自体は珍しくはあってもテレジアの高位貴族や時として平民にも時々は出るのよ。

 珍重されはするけど、それだけだ。


「マリアンヌに前世がなかったらその髪でも巫女にはならなかったとは思うが。

 だが、巫女になった。

 そして前世持ちがミストア神聖教のトップに立ったということの影響はもの凄く大きいんだ。

 それを自覚してくれ」

 さいですか。

 自覚も何も、私は神輿ですから。

 担がれるだけだ。

 不毛な議論によって立場を自覚させられてしまった私はふてくされてベッドに飛び込んで寝るのであった。


 それからも私にとっては平穏だが不穏な日々が続いた。

 平穏は日々何も起こらないで過ぎて行くことで感じるんだけど、逆に私の知らないところで色々と起こっていそうで怖い。

 気にしてもしょうがないので気にしないようにしているけど。

 でも何か嫌な事が起こるんじゃないかという疑いが晴れない。

 そしてある日、珍しくモルズ様、じゃなくて侍女見習いでもなくて、テレジア王立貴族学院助教のユベニアが来て言った。

「マリアンヌ様。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)付属学院設立の素案が出来ましたので奏上させて頂きます」

 何それ?


 私が呆然としているのにも構わずユベニアはテキパキと説明を始めた。

 お付きの人がテーブルの上に書類を広げる。

神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)本会議場の近くに本校を設立します。

 学生は各国より選抜して確保する他、自薦他薦でも受け入れる予定でございます。

 上級講座では実際の業務に補助要員として従事することで経験を積み」

「ちょっと待って!」

 いきなりすぎて頭が追いつかない。

 ユベニアたちは頭が良すぎて自分に判っていることなら人にも判ると思い込んでいる節があるのよね。

 だから途中をすっとばして全力で進んでしまうことがある。

「何も判らないから最初から説明して」


 それから私はユベニアを初めとしたやる気満々の連中に「神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)付属学院」とやらの構想を説明された。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)設立委員会はこれからどうやって大陸全土をまとめていくかについて検討会を開いて議論したそうだ。


 理事会の委員は各国から派遣される理事が務め、その補佐としての人選も各国に自由に選んで貰うことは確定している。

 これは言わば戦略的な部分なので、大局的に方針を決めるだけだ。

 人選は各国に任せられる。

 その下に参謀本部というか大本営を置いて戦争計画を立てるんだけど、これも幹部については各国から経験を積んだ軍人や官僚を派遣して貰うことに決まった。

 そこで問題になったのが、言わば実践部門というか官僚組織だ。

 この人達はどっかから引っ張ってきてよろしく、というわけにはいかない。

 言わば専門家の集団で、しかも戦争計画に特化した組織を作らなければならない。

 知識技能はもちろん目的意識も重要ということで。


「なので要員を独自で養成します。

 第一期生は各国からの推薦で確保しますが、いずれは志願制にしたいと」

「それで学院なの?」

「テレジアの王立貴族学院がモデルになります。

 推薦状と試験で受け入れを決めると」

 無試験全入制じゃないらしい。

 うーん。

 いい手かもしれない。

 これ、言わば私の前世の世界で言う専門学校よね。

 大学じゃなくて。

 最初から専門特化した人を育てるための機関か。


「予算はどうするの?」

神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の一部になりますので」

 なるほど。

 言わば士官学校か。

 戦争計画が十年単位のものだから、これから専門家を育てるわけね。

「これ、貴方たちが考えたの?」

「……検討委員会での結論でございます」

 メロディやロメルテシア様も噛んでいるな絶対。

 でなければ学院なんていう発想が出てくるわけが無い。

 というよりユベニアたちでは提案しても撥ねられるだろう。

 隠れ巫女なメロディや使徒のロメルテシア様くらいじゃないと押し通せまい。


「判った。

 了承致します」

 私には関係ないから、と言いかけて口をつぐむ。

 好きにやって頂戴。

 するとユベニアは嬉しそうに言った。

「ありがとうございます。

 同盟の盟主たるマリアンヌ様が名誉学長ということで、意気益々上がることでございましょう」

 ちょっと待って!

 何か今、不穏な言葉が聞こえたんだけど?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 学院…生活… うっ頭が [一言] 海外からの侵略って、国力によっぽどの大差でもない限り絶対失敗するんですよね 輸送にコストがあまりにもかかりすぎるので 相手に知識や戦略眼があるはずなのに…
[良い点] タイトル回収キタ(*´▽`*) 学院に戻る前にミストアに来ちゃったから、もう学院生活もう無理だと思ってた
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