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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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337.アドバンテージ

 ああ、そういう意味か。

 天才といっても色々あるのよね。

 私の前世の世界では歴史に残るような天才がたくさんいた。

 音楽分野でも理論物理学でも。

 商売や経営の天才もいたっけ。

 何で知ってるかって?

 私の前世の人は、くり返すけど理系でそういう話が好きだったのよ。

 ○ル・ゲイツとか○ッカーバーグとか、あるいは○ーロン・マスクとか。

 コンピュータっていうこっちの世界だとあと数百年は出てきそうに無い分野での天才だけど。


「なるほど」

「実際に何かを作り出す方の天才だな。

 発想自体は誰でも出来るんだよ。

 でもそれを実現出来る才能は希少だ」


 確かに。

 私も色々と教えて貰ったから判るけど、大抵の人はただ生きるだけで精一杯で他の事をする余裕がない。

 自分が食って更に家族を養うだけで終わる。

 多少余裕が出来ても娯楽とか趣味とかに走って自分では何も生み出さない人がほとんどだ。

 だけど創造的な天才はただ生きているだけじゃなくて、思いついた事を形にしてしまう。

「難しいわよね」

「確かにな。

 何よりまず金がないと」

 そう、余裕がないとどうしようもないところがある。

 食べるだけで精一杯だったらどんな天才だったとしても何も始まらない。

 夢みたいな事を言っているロクデナシと言われて終わるだけだ。


「シアン嬢は?」

「運が良かった。

 伯爵家の令嬢だが実家が子だくさんで政略結婚の必要性が薄くて、しかも裕福だから学園に通わせて貰えていた。

 それでもあまり自由に出来る金銭は持ってなかったが、出来る範囲で色々と作っていたよ」

「ああ、そういう」

「そうだ。

 普通の貴族令嬢なら何か言っても無視されたり叩き潰されて終わりだ。

 強制的に輿入れさせられるか、逆らって廃嫡されても不思議じゃない。

 かといって平民に生まれたらもう、それだけでどうしようもないからな」

 そうね。

 こっちの世界ではまだ女性の地位が低い。

 貴族の淑女なんか当主の所有物だものね。

 私みたいに貴族家の当主になれないわけじゃないけど、よほど条件が揃わないと無理だし。


「何か話が逸れたけど、つまり向こうの大陸にも天才が生まれたと」

「前世持ちかもしれないが。

 それに、実際には現時点(リアルタイム)で存在する必要は必ずしもない。

 過去に開発された技術を発展させることは前世持ちや天才でなくても出来るからな」

 それはそうよね。

 凡人でも工夫や努力で何かを作り出せる。

 延々と試行錯誤していたら、そのうちに正解にぶち当たるかもしれない。

 技術ってそうやって進歩していくものだ。

 より高度な加工技術や精錬方法は積み重ねによって実現出来るし。


「ということは」

「向こうに前世持ちがいるかどうかはあまり関係ない。

 条件は互角と言っていい」

「でも天才戦術家とかいたら?

 前世で戦争の歴史を研究していたとか」

 考えすぎだろうか。

 だって私の前世の人が読んでいた小説(ラノベ)だと、転生者が覚えていた戦術や戦略で無双するような話もあったし。

 メロディはははっと大きく笑った。

「問題ない。

 そういうものはあまり関係ないんだ。

 それこそ古代から天才戦術家は普通に存在していたからな」


 メロディによれば、私たちの前世の世界でも大昔から戦争があって、歴史に残るような戦術や戦略を考え出して駆使した人はいたらしい。

 どんな時代でも戦いはあったし傑出した指揮官とか参謀とかがいて歴史に残った。

 それは技術の進歩とは関係がないそうだ。

「よく知ってるわね」

「私の前世は学校の勉強は嫌いだったがそういう話は好きだったみたいだ。

 乙女ゲームにも出てきたし」

「戦争が?」

「そういう話もあったんだよ。

 乙女ゲームは筋がワンパターンだからな。

 状況を色々揃えてウケを狙った話も多かった。

 戦場で花開く恋とか」

 そんな物騒な乙女ゲームがあるのか。


「魔法とかあったらレベル上げや魔物との戦いとか使えるだろう。

 冒険者もパーティ組んで戦ったり。

 よくあったのがヒロインが聖女で、一緒に魔王を倒して勇者と結ばれるという奴だった」

「王子じゃなくて?」

「王子が勇者なんだよ。

 絵空事だがな。

 普通に考えたら王家の者が碌な支援も受けずに最前線に立つとか暗殺まがいの戦いにかり出されるとかあり得ない」


 メロディが言っているのは正論だけど、乙女ゲーム自体がそもそも絵空事だからね。

 平民のヒロインが王子と恋愛すること自体、普通に考えたら絶対無理でしょう。

 いくら聖女だったとしたって王家の者の結婚は百パーセント政略だから。

 そもそも本人同士の関係ってあまり重視されないのよね。

 むしろ実家というか「家」が重要だ。

 だから、乙女ゲームによくあるようないきなり日本から転移してきたヒロインが王家に嫁ぐなんて出来るわけがない。

 だって孤立無援なんだよ?

 本人が優れているとか特殊な力があるとかは二の次だ。

 だって王家にしてみれば、そんな実用的な力があったら王宮に囲い込むより現場で使い潰す方が有益だから。

 血を取り入れるんだったら妃にする必要もない。

 妾で十分だ。


「話が逸れたな。

 まあ、そういうわけで向こうに前世持ちがいるかどうかはあまり重要じゃない。

 私やマリアンヌみたいな(ケース)(レア)だ」

「というと?」

「最初から王家の血筋だろ?

 これはとてつもないアドバンテージなんだよ」

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