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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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336.天才

 そうか。

 確かに。


 私達の前世の世界では「厨二病」という概念があって、自分に前世があったり何か使命があったり、あるいは邪悪なものが左腕や目に封印されているとか、それが漏れ出しそうになっているとか主張する人もいたらしい。

 そういう人の末路は悲惨だ。


 ていうか、前世の世界では避けられたり引きこもりになったりするだけで済むかもしれないけど、こっちでは危険分子として処分されかねないのよね。

 命の値段が安いから。

 増して私達はマジで前世があったりするのよ。

 真・厨二病かも。


「なるほど」

「常識がある成人なら転生したとかは絶対に漏らさない。

 というよりは普通は黙っているだろう。

 我々もそうだし」

「確かに」


 私もメロディもお互い以外には前世の事は話していない。

 私はそもそも話せるような人もいないし言っても何のメリットもないしね。

 メロディも両親にすら打ち明けてないそうだ。


「でも知識チートで色々やったと聞いてるけど?」

「そこは慎重に動いた。

 状況からして前世がない人でも不自然じゃない程度しかやってない」


 メロディはもともと基本性能(スペック)が高かったせいもあって、突出した能力を示しても単なる神童と思われただけだったそうだ。

 地方の街で平民として育ったんだけど、ご両親がこっそり王族として恥ずかしくない教養を叩き込んでくれたし、成人まで庶民として育ったことが知れ渡ったせいで下々の生活に通じていることも納得して貰えたらしい。

 そういう背景に加えて突出した才能を示したことで、前世持ちとか疑われる事無く神童認定されてチートをやれたと。


「運が良かったのね」

「そういう意味ではマリアンヌも同じだろう。

 前世のことはほとんど出してない。

 歌劇(アレ)を除いては」

「アレは……別に出そうと思ったわけじゃなくて」

「言い訳しなくてもいい。

 疑われていないんだから正解だ」


 そうなのよね。

 過分な私の評価に「まったく新しい型式の歌劇(オペラ)を発案して広めた」というものがある。

 芸術の革命とも言われた。

 前世の絵物語(アニメ)を適当に持ってきただけなんだけど、こっちでは斬新だったみたい。

 でも歌劇(オペラ)という型式の芸術が既に存在していて、それを発展させたという解釈だから疑われなかった。

 そういう事は実は結構あるのよ。

 天才はどこにでも生まれるから。

 それに芸術は貴族の嗜みのひとつで、思ったより評価が高かった。

 私なんかそれだけで何もしてないのに芸術分野のメダルを頂けたくらいで。


「こっそり調べてみたが、今のところ我々のことは誰も疑っていない。

 まあ、前世(アレ)がバレたところで大した問題じゃないけどな」

 メロディは軽く言うけどどうかなあ。

 ロメルテシア様なんかはあっさり受け入れそうだけど。

 そうだ。

 思い出した。


「メロディ、その侵略してくる他の大陸の国ってこっちより技術的に進んでいるのよね」

「そうだ。

 といっても拿捕した船や捉えた船員の尋問からの類推だと聞いている。

 ちなみに平民の生活水準そのものはこっちと大差ないらしいぞ」

 どこがやってるのか知らないけど、それなりの諜報機関(スパイ)が活動しているらしい。

 シルデリアか?


「技術的に進んでいるって知識チートの結果だとは思わない?」

 聞いてみた。

 そう、私やメロディがいる以上、他の大陸でも前世持ちが生まれていても不思議じゃない。

 というよりは確実にいるだろう。

 こっちでは千年前からいたみたいだし。

「その疑いはある」

 メロディの口調から軽さが消えた。

 やっぱり気づいていたか。


「戦術や兵器だけが突然、極端に進歩するって軽小説(ラノベ)によく出てくるよね」

「だな。

 前世の社会制度を導入したり平民の生活水準を上げたりするのは大変だが、戦術や兵器に限って言えばそんなに難しく無い」

 なぜならそれは単に技術的な発達で可能だから。

 戦争技術は天才がいれば進歩するし、兵器の優劣は極端に言えば金属の精錬や加工技術に尽きたりして。

 もちろんプラスチックや合成樹脂、高性能爆発物、あるいはハイオクタンガソリンの開発なんかも必須だけど、そういうのは全部、精密な金属加工技術の延長線上にある。

 まあ半導体やマイクロチップとかはまた別の問題なんだげと。


「技術は方向性が正しければ、あとは試行錯誤と実験の繰り返しで進歩し続ける。

 そういう方面に詳しい前世持ちがいたのかもしれないな」

 女子高生には無理でも、例えば前世で技術職だったり実際に工場で何か作っていたりする人だったら可能か。

「やっぱり前世の事は隠して?」

「当然だ。

 前世なんかなくても技術を発展させることは出来る。

 私の参謀のシアンなんか、前世があるんじゃないかと思えるくらいの天才だぞ」

 シアン嬢というとシルデリアの伯爵令嬢か。

 メロディがシルデリアの学園で出会って引き抜いたと聞いたっけ。


「天才って」

「私らの前世で言うとレオナルド・ダ・ビンチみたいな存在だな。

 アインシュタインとかじゃなくて」

「アインシュタインって相対性理論の?」

「そうだ。

 理論じゃなくて実践的な技術開発における天才だ」

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