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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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335.前世持ち

 それ以外は特に何か起こる事も無く、淡々と日々が過ぎて行った。

 冬になり、年を越しても変化はなかった。

 ミストア独自のお祝いというか年越しの儀式があったくらい。


 私も参加を要請されたものでしょうがなくて出ていったんだけど、大聖堂の一番高い席で坐っていただけだった。

 寒くて参った。

 特に尻が冷えた。

 ロメルテシア様はそばについてくれたけど、メロディは逃げたらしくて姿が見えなかった。

 あの隠し巫女は好き勝手やれていいなあ。


 何せ桃髪(ピンクヘアー)じゃないから巫女だとバレる心配はないし、世俗の身分は最高位だ。

 それでいて神聖教においては巫女として振る舞える。

 無敵じゃないか。

 私はがんじがらめにされて身動き出来ないのに。

 まあいい。

 人のことを羨ましがるような素直な性格してないし。

 サバイバルに必死だと他人の事なんかどうでもよくなるのよね。


 それでもミストアにおける私の生活は悪くなかった。

 相変わらず勉強三昧だけど、その合間には各国の王女様方とお茶会を開いたりちょっとしたパーティなんかもやってみた。

 王女様の一行に変装して紛れ込んであちこち観光もした。

 とはいえ教都からは出られなかった。


 夜はロメルテシア様が貸してくれた歴代の巫女についての資料を読みながらまったりする。

 初代巫女の行動は聖書という形で残っている伝記で大体判った。

 本人は別に宗教を作ったり国を征服したりするつもりはなかったらしい。

 奉仕活動も特に目的があったわけじゃなくて、むしろ趣味みたいなものだったようだ。

 前世の人の仕事がケースワーカーということで、その延長で人の相談にのったり悩み事を解決して回っているうちに付き従う人や支援者が増えていって、気がついたら組織化されていたそうな。


 珍しくメロディが現れたので晩餐の時に言ってみた。

「ケースワーカーねえ。

 生活相談員とか民生委員とか?」

「だったらしい。

 女子高生じゃなかった」

「そういえば初代以外の歴代の巫女の前世ってみんな日本の女子高生だったのか?」

「みたいね。

 何でだろう」


 メロディはもりもり食べながら肩を竦めるという器用なことをした。

 変な才能(スペック)持ってるな。

「女子高生が考え無しだったからじゃないか」

 何よそれ。

「つまり」

「普通の人だったら巫女なんて面倒くさい立場にはなりたがらないだろう。

 だから逃げた」

 なるほど。

「つまり逃げ遅れて捕まるようなどんくさい人が巫女にされると」


「世間知らずということもあるだろうな。

 成人して世の中の事が判っていれば、前世持ちは凄いアドバンテージだ。

 巫女なんかにならなくてもいくらでも成功出来る」

「女子高生以下、例えば小学生とかだったら」

「前世があっても知識不足で巫女に認定されないのかもしれない。

 使徒連中と話して判ったんだが、どいつもこいつも天才というか化物だぞ。

 そういうのが候補者を巫女かどうかを判定してきたんだ。

 合格者は限られただろう」

 なるほど。

 本人が出来すぎたら逃げるし、出来なかったら巫女とは認定されないのか。


「中途半端に出来るレベルが女子高生と」

「高校まで進学しているということはそれなりの常識や基礎知識を持っていることになる。

 だが社会に出てないから実務的な知識や技量はない。

 まだスレてないから神聖教の理想というか思想に染まりやすい。

 そういうのが巫女にされてきたんだと思う」

 さすがはメロディ。

 それが正解のような気がしてきた。


「すると、前世持ちの人って私達以外にも結構いると?」

「可能性はあるだろ」

「でも、だったら何で表に出てこないのかしら。

 知識チートでヒャッハーしそうなものなのに」

 メロディはなぜか可哀想な人を見る目を向けてきた。

「あのなあ。

 私が言うのも何だが、前世の世界で成人してちゃんと働いていたのなら、そんな馬鹿馬鹿しいことは考えないと思うぞ」

「そうかなあ」


「まともな神経していたら絶対に表には出てこない。

 我々の前世の世界ならともかく、こっちは普通に生きていくだけで大変なんだよ。

 人権なんかない。

 異物は差別どころじゃなくて即排除されてもおかしくない。

 下手に目立ったらいずれは誰かに目を付けられて潰される。

 それどころか前世の知識を持ち出したら狂人か精神異常として扱われるのが関の山だ」

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