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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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331.ブラック

 ふと思いついて専任侍女(サンディ)に言ってみた。

「何か書くものってない?」

「書くものでございますか」

「うん。

 ちょっと考えている事があって」


 専任侍女(サンディ)は素直に用意してくれた。

 ていうか執務室に連れて行かれたんだけど。

 私の執務机には立派な書類仕事用の道具が揃っていた。

 高級そうな紙や高級そうなペンとか。


 ちなみに私の前世の人が思っていたような羽ペンとかはない。

 普通にインクを付けて書くペンだけだ。

 もちろん万年筆やボールペンはないから結構面倒くさいんだけど。

 私の前世の人と違って私はこれが現実だものね。

 時々、間違った場合なんかシャープペンシルとか鉛筆とか消しゴムとか欲しい気がする。

 誰か発明してくれないかな。


「ありがとう。

 これでいいわ」

「御意」

 そういえばいつの間にか「お心のままに」と言わなくなったけど、何で?

 あれは王族や公爵家の当主に対するお返事だからだろうか。

 つまり今の私はテレジア公爵の前にミストア神聖教の巫女としての立場が優先されるということ?

 まあいいか。


 それから私は「これからの人生(サバイバル)に必要なこと」についてリストアップしていった。

 まずは神聖教についてもっと詳しく知らなければならない。

 ロメルテシア様から色々聞いているけど、そんなの表面をなぞっただけだということは私にも判る。

 最低限、神官が出来る程度の基礎知識は必須だと思う。

 家庭教師というか指導役を用意して貰おう。


 次に、身体を鍛えたい。

 身体は資本だものね。

 私が雌虎(タイグリス)を名乗れたのは、孤児院時代からずっとある程度は自分で鍛えていたから。

 小柄で非力は変わらないけど、その分素早く動いたり相手の不意を突いたりして切り抜けてきた。

 そのためには俊敏さと基礎体力が必須ということで、男爵家に引き取られてからも庭を走ったりお部屋でストレッチしたりしていたんだけど。


 学院に通わされたら人目があって出来なくなってしまった。

 それでも専任メイド(グレース)の旦那さんには驚かれたけどね。

 貴族令嬢にはあるまじき体力馬鹿ということで。

 公爵にされてからはそんなことをする暇がなくて、だから今は相当鈍っているはず。

 明日から体力作りを再開しないと。


 語学は継続的に学ぶ必要があるし、それ以外の知識も出来るだけ吸収したい。

 大陸全土の地理と歴史を大まかにでも把握しておかないと、神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の会合で置いていかれたりしそう。

 その他にもいくつか今後の方針を決めて、私はため息をついた。

 何だ、暇なんてないじゃない。

 それどころかブラック必至だ。

 趣味なんか持ってる余裕はないなあ。


「サンディ」

「はい」

「こういうことをしようと思うんだけど、どうかな」

 慎ましく控えていた専任侍女(サンディ)に聞いてみた。

「拝見させて頂きます」

 リストを読んだ専任侍女(サンディ)は私をじっと見つめてから深々と頭を下げた。

「畏まりました。

 すぐに手配させて頂きます」


 そのまま退出しようとする専任侍女(サンディ)に慌てて声をかける。

「ちょっと!

 そんなに急がなくても。

 それに全部一度にやりたいわけじゃなくて」

「心得ております」

 静かにドアが閉まる。

 拙った。

 私自らブラック環境を作ってしまったかもしれない。

 どっと疲れが出た私は専任メイド(グレース)に先導されて寝室に行くとそのまま眠ってしまった。


 翌日から早速、拷問が始まった。

 テレジア公爵にされる前の家庭教師攻めより酷い。

 最初は寝る暇もないくらい予定(スケジュール)を入れられたけど、必死で抵抗して何とか許容範囲内に収めてもらった。


 早朝の体力作りや格闘訓練、というよりは逃げる技術を始めとして、朝食の後は語学研修だ。

 午後からはそれぞれの専門分野の教師が来てくれることになった。

 夕食後はとりあえず神託宮で働く人との面接。

 といっても雑談になるけど。


 私の立場だと下働きとは接触出来ないので、ある程度身分や位階が高い人たちに来て貰って居間(リビング)で気軽に話す。

 向こうはガチガチだけどしょうがない。

 巫女って普通は神聖教の枢機卿以上の人としか接触しないらしいのよね。

 でも同じ職場? の人というよりは雰囲気を知っておきたいと言ったらセッティングしてくれた。


 ちなみに私の正体はバレバレだった。

 だって桃髪(ピンクヘアー)だ。

 神託宮にはそんな人は私しかいない。

 最初は声を掛けただけで気絶しかける人もいたけど、だんだんと噂が広まって今ではそんなに忌避されている感じはしなくなった。


「聖下は気さくでお優しいという話が広まっております」

 さいですか。

 元男爵家子女で元孤児だった経験が思いも掛けず役に立ってしまった。

 私、下々と言われる人に対する偏見とかないから。

 そうやって毎日を過ごしているうちに、ある日言われた。

「そろそろでございます」

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