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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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329.メニュー

 とりあえず専任メイド(グレース)を宥めてから寝室に戻る。

 既にグレース配下のメイドさんたちが私のベッドメイクを済ませていた。

 効率厨か。


「お食事になさいますか?」

 いや、まだ早いのでは。

 というよりは予定はどうなっているんだろう。

「同席はいるの?」

予定(スケジュール)は入っていません。

 メロディアナ様からも連絡がなく」

 ロメルテシア様もどっかに行ったままだそうだ。


「ならちょっと早いけど食事にしようかな」

「御意」

 それから専任メイド(グレース)は驚愕するようなことを言い出した。

「何かご希望がございますか?」

「希望って……何の?」

「食事でございます。

 こちらがメニューになっております」

 そう言って専任メイド(グレース)が取り出したのは立派な装丁の薄い冊子だった。


「メニューって」

「これに載っているお食事なら何でもご用意出来るとのことでございます。

 無いものでも時間を頂ければご提供出来ると」

 改めて見てみたら私の前世の人の世界にあったという食事処(レストラン)のメニューにそっくりだった。

 それも廉価版じゃなくて高級なフランス料理店とかの。


 前世の人の記憶にあるファミレスとかいうレストランと何が違うのかというと写真や絵が載ってない。

 お品書きだけだ。

 私の前世の世界だと料亭とかうなぎ屋のメニューのようなものか。

 それを私専用で?

 何その贅沢!


 貴族の食事って基本は料理人(コック)任せなのよね。

 もちろん希望は出来るんだけど、準備に時間がかかる。

 材料を揃えたりメニューを組み立てたりする手間があるから。

 それに貴族の会食は基本的に(さん)だから、本人の希望よりむしろ客人の好みや礼儀(マナー)に会わせる場合が多い。

 国や人によっては食べられなかったり禁忌になっていたりする食材もあるのよ。


 その冊子(メニュー)を開くと何ページにも渡ってよく判らない料理が載っていた。

 文章だけで絵がないのでどんなものなのか不明だ。

 そもそも私、食事にはこだわりがないし好き嫌いもないから。

 孤児はえり好みなんかしてられないし。

 おかげで出された物は文句を言わずに全部食べる癖がついている。

 貴族としては下品としか言い様がない性癖だけど、みんな何も言ってくれないのがむしろきつかった。


「よく判らないんだけど」

「では何を、ではなくどういうものがよろしいのでしょうか」

 考えてみた。

 ていうか考える間もなく答えが出た。


「こってりした肉料理を」

「それではこれはいかがでしょうか」

 とあるページに載っている料理について説明してくれたけど、やっぱりよく判らない。

「ではそれで」

「御意」

 面倒くさくなって適当に言ったら通ってしまった。


「1時間ほどお待ちください」

 それはそうよね。

 後で聞いたら、この神託宮には私専任の料理人(コック)さんが常駐しているそうだ。

 それもそれぞれ得意な分野を持つプロが数人いて、どんな注文にも応えてくれるらしい。

 どこの大金持ちだよ。

 ああ、私は巫女だったっけ(泣)。


 そんなに料理人ばかりいても無駄金を使うだけじゃないかと思うんだけど、担当の料理人(コックさん)以外はその補助をしたり神託宮の職員の賄いを作ったりしてそれなりに働いているからいいのだと言われた。

 なるほど。

 中央教会とは組織が違うって事は、食事や生活も独自でまかなっているわけね。

 それどころか生活物資の調達も独自ルートでやっているらしい。


「これによって外部からの干渉を極力遮断できます」

 専任侍女(サンディ)が言うんだけど、つまりそうやって食事に毒を入れたり諜報員(スパイ)が入り込んだりするのを防いでいると。

 確かに教会なんか来る者は拒まずが基本(モットー)だもんね。


 必ずしも敵対者や悪意を持った者だけじゃなくて、過激な巫女ファンや何とかして接触しようとする(やから)も排除出来る。

 巫女ってそういう危険もあるのか。

 籠の鳥かと思っていたけど、ていうかそれは間違ってないけど、むしろ要塞に匿われているようなものなのかも。


 食事が来るまでの間、私は居間(リビング)に案内されてお茶などを頂いた。

 明るい色の壁紙が貼られた気持ちの良い部屋で、大きな窓からは外の景色が見渡せる。

 ここは私の執務室と違って純粋に寛ぐためのお部屋だということだった。


 ごく親しい人はここで接待しても良いらしい。

 それほどでもない人は応接室や書斎で会うことになる。

 食事が出来るまでの間、専任メイド(グレース)専任侍女(サンディ)を相手に雑談して過ごした。

 考えてみたらゆっくり話すのは久しぶりだったりして。

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