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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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307.襲撃

「殿下。

 こちらへ」

 専任侍女(サンディ)が瞬時に私を引き寄せると同時に馬車の窓の障壁(シャッター)が降りる。

「あれって」

「何らかの襲撃があった模様ですね。

 幸い事前に阻止出来たようでございます」

 襲われたのか!

 ていうか未遂だけど。


「何の目的で?」

「詳細は不明ですが、これは予期してございました。

 この大陸の国家も一枚岩ではありませんので」

 そうか。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)に反対する勢力もあるってか。


「どこの勢力なんだろう」

「色々考えられます。

 他大陸から工作員(スパイ)が入り込んでいることは確実でございますが、この地で隊列を襲撃出来る程の勢力を維持できるかどうか。

 最悪の場合はいずれかの国家が他大陸と組んでいる可能性も」


 ぞっとした。

 そういうことか。

 テレジア王国国内ですら意見が割れているのよね。

 ならば漁夫の利を得ようとしたり、敵側と組んで覇権を握ろうとする国が出ても不思議じゃない。


「やっぱりあれ、私を狙ったのよね?」

「そうでございましょうね。

 殿下は現時点では神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の要でございます。

 殿下が倒れても連盟の結成がなくなることはございませんが、相当支障が出ることは確実かと」


 まあそうか。

 今のところ、大半の国と密接な関係を持っているのは(マリアンヌ)だけだ。

 焦点(ウィークポイント)と言ってもいい。

 その私を消してしまえば神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)構想が大きく後退することは間違いない。

 よね?


 ていうか、実はそうでもないんだけど。

 私はあくまで神輿としての意味しかないから、消えてもそんなに影響はない気がする。

 (こころざし)半ばで凶弾に倒れたヒロインってそれなりに使えそうじゃない?

 事切れる時に「私がいなくなっても……連盟は不滅よ」とか呟いたことにすれば、後はメロディとかロメルテシア様とかが何とかするでしょう。


「あり得ません」

 専任侍女(サンディ)が言った。

「殿下は唯一無二。

 倒れられるようなことは有ってはならないと」


 いや、そんな狂信的なことを言われてもね。

 そもそも装甲ドレスを着せられた時点である程度のリスクは考慮されているじゃない。

 頭でも撃たれたら一発だし。

 ていうか私、囮くさくない?


「そのようなことはございません」

「いやいや、こんな狙われやすい状況をわざわざ作ってるし」

「殿下の安全には万全を期しております。

 この馬車にしても特注品でございます」


 言われて見たら私が乗っている馬車、一見普通の作りなんだけど何か重々しいのよね。

 大きさの割に速度は遅いし。

 壁を叩いてみたらガンガンという音がした。

「これって」

「鉄板で装甲されております。

 弓矢や並の銃弾なら跳ね返せると」


 さすがに大砲で撃たれたら木っ端微塵になるだろうけど、こんな街中ではあり得ないそうだ。

 直接襲ってくるのは論外。

 そのために馬車の周囲は腕利きの騎士や兵隊で固めてあるらしい。

 馬車の中にいるので弓や銃では撃ってもまず当たらないし、それ以外に遠距離からは攻撃の手段がない。


 私の前世の人の世界では、それこそ何キロ先とかから狙撃出来る(ライフル)があったけど、こっちの世界の銃では今のところ射程は最大で百メートルくらいが限界だとか。

 しかも初速が遅いから限界距離まで飛んで来た銃弾は運動エネルギーを失って当たってもポロリと落ちるだけだ。


 そういえば私の前世の人が読んでいた海洋冒険小説にも出てきたっけ。

 軍艦は帆船でも大砲を積んでいるんだけど、射程距離が短いからせいぜい数十メートルの距離から撃ち合うらしい。

 そこまで近づかないと当たらない、というよりは砲弾が届かない。

 銃もライフルがないから弾丸に威力がなくて、撃たれても革鎧でも着ていれば跳ね返せる。

 ピストルもあったけど、そんなの数メートルも離れたら狙って撃っても当たらない。


 では戦う時はどうするのかというと、軍艦同士を横付けして敵艦に乗り移って格闘戦が定石で。

 主な武器はナイフや湾曲剣(カットラス)で、ピストルを使う時は銃口を相手の腹に押しつけて引き金を引く。

 これなら確実に当たる。

 でも装填出来る弾丸はせいぜい二発なので撃ったらピストルを投げ捨てて後は斬り合いだと。

 そんな恐ろしい話を平気で読んでいた私の前世の人って(泣)。


「大丈夫のようでございます」

 専任侍女(サンディ)が言うのと同時に馬車が動き出した。

 敵対勢力は排除されたらしい。

 その後は特に何もなく港に着いた。


 周り中を護衛に囲まれてそのままミストアの御用船に乗り込んだ私は背後にずらっと各国の王女殿下を並べて甲板から演説(スピーチ)させられた。

 誰かが用意した原稿を棒読みしただけだけど、歓声が凄い。

 この程度の羞恥プレイにももう慣れた(泣)。

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