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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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299.擬態

 ということで昼餐(ランチ)の後、目立たないドレスに着替えた私とロメルテシア様は街に繰り出した。

 目立たないと言ってもお付きや護衛が2桁単位で随行している時点で注目は避けられない。

 でも貴族なら大抵似たような状況が当たり前(デフォルト)なので、私達もせいぜい伯爵令嬢レベルの貴顕だと誤認されそうな外見と行動を取ることになった。


「私は大丈夫だけど、ロメルテシア様は?」

「ご心配には及びません。

 これでも擬態の訓練は受けております」


 聞いてみたら使徒はどんな場所に赴く必要があるか判らないので、それこそ最高位の貴顕から庶民まで何でもそれっぽく見えるような礼儀(マナー)を身につける必要があるということだった。

 使徒の外交用の正式な衣装は最初に会った時に着ていた全身を覆うマントで、あれでは容姿どころか性別すら曖昧だ。


 なるほど。

 使徒は神職というよりは世俗に通じた巫女の支援者(サポーター)なわけか。

 ミストアの巫女ってどんな階層に出るか判らないものね。

 前世の記憶があるといってもこの世界ではあまり役に立たないから、その巫女が神聖教でちゃんとやっていけるように支援するのが使徒だ。

 私みたいに(泣)。


「マリアンヌ様は(わたくし)などいなくても立派に振る舞っておいでになります」

「そうかなあ」

 少なくともエリザベスとか侍女見習いの皆さんとか、もっと言えばメロディがいなければ詰んでいた気がする。

 もちろんロメルテシア様も。


「光栄でございます。

 我が身が一片なりともマリアンヌ様のお役に立つのでございましたら、どうぞこの身を磨り潰すまでご使役頂きたく」

 物騒な事を言わないでよ。

 思い出しちゃったじゃないの。

 今後、私は大陸中の国の国王陛下とやり合わなきゃならないのよね。

 今更ながら背筋が寒い。


「こちらへ」

 そんな私の心象風景に構わず馬車は進んでいた。

 私たちの宿は小高い丘の上にあってベランダからロサント港の全景を見渡せるんだけど、そのせいで街からはちょっと離れていたのよね。


 ゆるやかな坂を下っていくとだんだん港の風景がせり上がってきた。

 建物が大きくなって海が見えなくなった辺りになると、もう喧噪の真っただ中だ。

 貿易港だから。

 人も多いし貨物はそれ以上に多い。

 ひっきりなしに荷馬車が行き交い、道行く人はせかせか歩く。

 王都の貴族街では見られない光景だ。


「ここは?」

「港に通じる大通り、というよりは荷物の輸送路ですね。

 貨物は陸揚げされた後、一旦は倉庫に収納されますが、そこから行く先ごとに分割して馬車で送り出します。

 とはいえそれは近隣向けの貨物で、遠距離の場合は船便になると聞いております」

 ロメルテシア様、何でそんなに詳しいのよ。

 よその国なのに。


「マリアンヌ様のご降臨がございましたので学びました」

 さいですか。

 やっぱこの人もメロディに匹敵する怪物(チート)だった。

 ミストアの使徒は伊達じゃないってか。


「どこか行きたい場所はございますか?」

 ロメルテシア様が聞いてきたのでちょっと考えて答える。

「海軍って見学出来る?」

 ロメルテシア様はすぐに馬車から身を乗り出して従者の一人に声を掛けた。

 従者が走り去る。

「ただいま確認しております」

「それじゃ、とりあえず港をぐるっと回りたい」

「かしこまりました」


 港は戦争の(かなめ)だ。

 私の前世の人は理系なので、戦国SLGでも正面戦力より総合的な国力を重視していたみたい。

 まだ飛行機がないからよその国との戦争で重要なのは海軍と陸軍だ。

 今回は他の大陸から攻めてくるとしたら、やっぱり重要すべきは船でしょう。

 船って単独では戦力にならない。

 後方支援基地としての港はもの凄く重要なのよね。

 と言うようなことを最近叩き込まれたので視察してみたいと思っていたのよ。


「それでは」

 港の見学は別に許可はいらないらしい。

 もともと私達はテレジアの高位貴族とミストアの姫君だから、基本的にはどこでも視察を拒まれることはまずないと言っていい。

 特に私はテレジア公爵だ。

 ロサント港を支配しているのはこの領地の領主であるロサント伯爵のはずだから、権力にものを言わせれば大抵の事はどうにかなる。


 でもまあ、目立ちたくないしお忍びだし。

 それでも馬車の列が目立ってしまうんだけど、しょうがない。

 それにちょっと見ても私達と似たような馬車は結構行き交っていたから問題なさそう。


 沿岸というか埠頭に近づくと混み合っていた。

 荷揚げや船積みの邪魔はしたくないので外縁部から観察する。

「クレーンがあるのね」

「ここは大型の貨物を扱う部署のようです。

 ここから倉庫に運ばれます」


 私の前世の人の世界では動力機械が発達していたから、もの凄く大きな重機が当たり前に使われていたんだけど。

 こっちはみんな人力や動物力だから意外だった。

 見ていると屈強な殿方たちが巨大な輪を回していて、それでクレーンを動かしているみたい。

 なるほど。

 私の前世の人の記憶にあった。


 意外だけど、中世というよりはもう古代の時代から何かを動かすための仕組みって当たり前に存在していたらしい。

 そのまま引っ張ったり持ち上げたりも可能ではあるけど、ギアとてこの原理で小さい力を集めて巨大な物を動かしたり持ち上げたりは普通に出来ていたみたい。

 考えてみたら投石機とかは古代からあったわけで、人間って思ったより昔から機械文明を築いていたのよね。

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