表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

298/371

297.同宿

 髪を乾かしていると窓から見える景色がゆっくり動いていた。

 いつの間にか出航していたらしい。


「朝早くから大変ね」

「日没前にロサント港に着く予定と聞いております。

 殿下を始め貴顕の方々には宿舎(ホテル)でお休みして頂き、その間に御用船の点検と物資補充などを行うとのことです」

「ああ、いきなり出航は無理よね」

「はい。

 天候その他の理由で出発が延期になる可能性もございます」

 ハイロンドやライロケルの留学生は冬の海がヤバくてテレジアに向かうのを断念したと聞いたっけ。

 外洋を航行するのは結構命がけだったりして。


「式典に遅れたりしないのかな」

「余裕は十分とっているはずでございます。

 万一、マリアンヌ様のご到着が遅れるような事態になれば、式典自体を延期すれば済むことです」

 いつの間にかいたロメルテシア様が平坦な口調で言った。

 凄いなおい。

 この人、どれだけ権限握ってるんだ。


「まあ、よくあることだ」

 メロディがしれっと言った。

「式典ももちろんだが、その後の神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の理事会には各国のトップが出席する予定だからな。

 全員が揃うまでは始まらない。

 ゆっくり出来るはずだ」


 そうなのか。

 忘れていたけど私の叙階式というかお披露目って神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の結成および第一回理事会を開催するための方便みたいなものだった。

 急ぐ必要はないみたい。

 別の大陸との戦争準備なんだからのんびりしていていいはずはないけど、それって十年単位の計画だからね。

 一月や二月くらい遅れてもどうってことないんだろう。


 そう思ったら気が楽になって、私は王女様方を招いてゆっくりと朝餐(ブレックファースト)を摂ったのだった。

 その後も順調だった。

 御用船は予定通り日没前にロサント港に到着した。

 ロサント港はテレジア王国の海の玄関口とも言える大きな港で、国内最大級の他国への物資の輸出入や人の流通を(つかさど)る。

 地理の講義で習った。


 もちろんテレジアには他にも港があるけど、立派な港湾施設が揃っているので大方はこの港が使われるとか。

 湾になっていて海が穏やかなこともある。

 ちなみに私の前世の人達が行っていた海水浴場はない。

 そもそもまだそんな遊びは認知されていない。

 だって貴族はもちろん庶民に至るまで出来るだけ肌を隠すのが美徳とされているのよ。

 というよりは肌を晒したら恥だ。


 特に淑女の衣服は手首から先と首から上以外は全部隠すのが原則(デフォルト)だったりして。

 私が導入した夏用のメイド服ですら薄いけど長袖だった。

 私の前世の人が観ていた絵物語(アニメ)では貴族令嬢が太ももの付け根まで剥き出しにした(スカート)を着て平気で歩き回っていたけど、テレジアでそんなことしたら痴女として逮捕される。

 学院の退学は当然どころか下手すると貴族ですらなくなるかもしれないし、何ならどんな教育をしていたんだと言われてその貴族家自体が廃爵されてしまってもおかしくない。

 もちろん私はそんなことするつもりはないし、しようとしても出来ないだろうけど。


 御用船を降りて案内されたのはちょっとした小高い丘の上にある貴賓専用らしい宿泊施設(ホテル)だった。

 テレジアの玄関口を代表する宿泊施設(ホテル)なので何とか王女様方を全員収容出来たそうだけど、後で聞いたら施設側は困ったそうだ。

 王族や高位貴族が泊まるのは珍しくないが、一度にこれだけの最高位の身分の方々が押し寄せてきたのは初めてだったそうで。

 それでも何とかしてしまったのは凄いけど。


 私にあてがわれたのは高位貴族用のお部屋だったけど、実を言えば王族や公爵家の当主を泊めるには格落ちというか、せいぜい侯爵家か伯爵家用のものらしい。

 それより上のお部屋は全部王女様たちに占領されてしまっていた。

「マリアンヌ様こそ至高でございますのに」

 ロメルテシア様がわざわざ訪ねて来て怒っていた。


 メロディは苦笑していたけど、この人も部屋なんかどうでもいいと思っているんだろうなあ。

 私もどうでもいい。

 ていうか伯爵家の使用人用宿舎でも別に構わないんだけどね。

 それでも公爵だから、本来なら最高級客室(スイート)に入れるはずなんだけど、同泊者たちが高貴すぎた。


「別にいいんじゃない?

 実際、身分で言ったら私は下っ端なんだし」

 公爵が下っ端って凄いけど。

「ですが」

「それより皆様の方が心配よ。

 あれだけの人数がいたらお付きの者も限られるのでは」


 王女がどこかに泊まるとしたら、最低でも十人くらいの側仕えや護衛が一緒にいるのが普通だ。

 この宿泊施設(ホテル)は大きいけど、まさかそこまでの余裕はないでしょう。

「最低限の側付き以外は周囲の宿舎に分散して宿泊するそうです。

 護衛騎士たちは交代で見回りを」

 なるほど。


 本当いうと、王女たちや私が全員同じ宿舎(ホテル)に泊まる必要はないんだけど。

 ここは確かに最高級の宿舎だけど、同じレベルの宿は他にもある。

 ただ、貴顕が分散してしまったら護衛が大変になるということでまとめられたんだよね。


「王女様方にご不満はない?」

「それどころかご満足頂けているそうです。

 同格の相手と同宿に泊まることなど普通は無理ですので」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ