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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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296.叙階(仮)

 速いな。

 テレジアは南北に細長い国なので、王都から海までは結構距離がある。

 街道を通ると普通の乗り合い馬車なら5日くらいかかるらしい。

 騎馬というか騎兵が1日半で駆け抜けたとかいう話を聞いたことがあるけど、替え馬を乗り潰しながらだから相当だ。

 その距離をたった2日で走破してしまうとはさすがに船。

 河下りだけど。


 実際、この河はテレジアの大動脈だ。

 この河があるから王都がここにあると言ってもいいくらいらしい。

 歴史と地理の講義で習ったのよね。


 暇なので舷側に寄って外を見ていると、大小様々な船が頻繁に行き交っている。

 貨物船が多い。

 物流は順調に流れている。

 テレジアは大丈夫そうだな。

 でも戦争になったらきついかも。


 昼餐(ランチ)は私と貴顕だけの会食だった。

 つまり王(皇)女と公爵しかいないって(泣)。

 それだけでも2桁なんだもんね。

 私の前世の人が読んでいた小説(ラノベ)だったら絶対に襲われるぞ。

 海賊というか河賊が襲撃してきたりして。


「ご心配には及びません」

 ロメルテシア様が淡々と言った。

「当船の周囲は護衛船で固めてございます。

 海軍部隊でも襲撃など不可能かと」

 うん、まあそれくらいはやるよね。


 お食事の後は皆様思い思いに過ごしているらしかったけど、私はロメルテシア様に拘束されてお勉強三昧だった。

 ミストア神聖教の儀式に必要な礼儀(マナー)とやらを叩き込まれた。

 もっとも私は巫女なので、基本的には黙って坐ってニコニコしていればいいということだった。

 それより大変だったのはミストアの偉い人たちを覚えることで、そんなこと言われてもね。

 そもそも絵姿でもあれば別だけど、観たこともない人なんか覚えられっこないでしょう。


「服装で覚えればよろしいかと」

 ロメルテシア様が何やら重そうな本を持ち出して来た。

「階位装事典?」

「はい。

 ミストアの神殿内では全ての者が自らの階位に合った服装を纏っております。

 よって個人名が曖昧でも服飾で覚えておけばよいかと」


 なるほど。

 テレジアや他の王国で王族が貴族を覚えるようなものか。

 王国の場合は側付きや参謀が外部記憶装置として教えてくれるんだけど、ミストアではさすがにそんなわけにはいかない。

 よって偉い人は服装によって区別しているらしい。


「個人名は知らなくてもいいの?」

「そもそも真名(マナ)は隠すとまではいかずとも普通は使いませんので。

 お互いに役職名や家名で呼び合うのが習わしでございます」

 真名、つまりマリアンヌとかロメルテシアとかいう名はよほど親しくないと明かさない風習だそうだ。

 その辺はテレジアと同じね。


 途中からメロディも加わってクイズ型式でお勉強しているうちに日没になった。

 晩餐(ディナー)はまたしても貴顕大集合で、もはやすっかり打ち解けた王女様方が活発にお話ししていてやかましい。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)なんかなくてもこれだけで成果は十分かも。

 夕食後はしばらく雑談していたけど、さすがに疲れたので船室に引っ込んですぐに寝てしまった。


 何か喧噪が伝わって来て目が覚めた。

 窓の外はまだ暗い。

「おはようございます」

 専任メイド(グレース)が声をかけてきた。


 この人、私が行くところには何があってもついてくる。

 ミストアの御用船だろうが神託宮だろうがおかまいなしだ。

 ミストア側も最初は神託宮で私に仕える神職を用意しようとしたらしいんだけど、グレースやサンディを見ていたロメルテシア様が強行すると血をみることになるので、と言って止めさせたそうだ。


 もっともミストアの神殿でお役につくためには神職の資格というか階位が必要だ。

 なので私付きのメイドや侍女の皆さんはロメルテシア様が手配した促成教育過程を受講したと聞いている。

 よって私のメイドや侍女は全員最下級とはいえミストア神聖教の階位持ちになってしまった。

 正式には叙階されていないから仮免だけど。

 教都に着き次第、即決で叙階されるらしい。

 よくやるよ。


 ちなみに今回の叙階は特例ということで、本来は実習や試験を含めた結構厳しい選別が行われるとのこと。

 それはそうだよ。

 だって神職だよ?

 まあいいけど。


「おはよう」

「湯浴みの用意が出来ております」

 船なのに凄い。

 浴室は狭いけど豪華な仕様だった。

 宗教って儲かるんだなあ。


「王女殿下方は」

「人数が多いので入れ替わりで」

 やっぱり随行員用の浴室もあるらしい。

 御用船だものね。

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