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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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289.語学研修

 それはそうか。

 私の前世の人の世界ではそういう物語がたくさんあったんだけど、国王や皇帝が王命や勅命を出す時は大抵「○○を守れ」とかなのよね。

 どうやってとかどのようにとかは言わない。

 判らないから。

 つまり方法論は命令を受けた人に任される。

 ちなみに曖昧だけど、皇帝の直接の命令が「勅命」で国王や帝王のそれが「王命」だ。


「メロディってそんな命令受けていたの」

「酷いだろ?

 父上も陛下も私のことを神童いやむしろ神算鬼謀の徒とか思っているからなあ。

 そんなんじゃないのに」

「いえ、それは正しいと思うけど」


 だってメロディ、実際にどうにかしてしまっているし。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)の構想自体、メロディ発案だと睨んでいる。

 神聖ローマ帝国なんかこっちの人たちが知ってるはずがないものね。


「そんなことはない。

 私は手近にあった材料を組み合わせてとりあえず機能しそうなものをでっち上げただけで」

「それがチートでしょ」

 まあ、確かにメロディの周りにはテレジア公爵()とかロメルテシア様とか使い勝手が良さそうな道具(ツール)がゴロゴロしていたけど。

 でもその事自体がメロディの類い希なる資質を示しているのでは。

 英雄とか。


「まことにメロディアナ様は素晴らしい」

 ロメルテシア様がうっとりと言った。

「マリアンヌ様の補佐として、これ以上の方はおられません」

「そうだろうそうだろう。

 私は一生、マリアンヌから離れないぞ」

「それはもちろん。

 (わたくし)もいつまでもマリアンヌ様を支えてゆく所存でございます」


 おい。

 人んちの居間(リビング)で物騒な話をするんじやない。

 観ていてほとんど人外とも言えそうな美しいお二人だが、今の私の心境としては疫病神に取り憑かれたようにしか思えないのよ。

 私を隠れ蓑にして好き勝手やる様子が今から見えるようだ。


「さて、これでマリアンヌは自由に動けるようになったわけだ。

 テレジア公爵家の領主権限委譲はもう済んだのか?」

 メロディがサバサバと聞いてきた。

 効率厨か。

「終わってるわよ」

「よし。

 ロメルテシア」

「準備は出来ておりますわ」


 それが引き金(トリガー)だった。

 その日から物事が急速に動き始めた。


 まず、私のテレジア公爵としてのお仕事がほぼ消えた。

 具体的には書類の決裁ね。

 ただ、重要事項は家令(ヒース)から報告を受けて口頭で決裁する、という手順は残ったけど。

 それも大抵は家令(ヒース)やその参謀団が予め対応策を立てていて、私はそれを聞いて承認するだけだった。


 私への謁見は中止になった。

 そんな暇はないということで。

 もちろん私より身分が高い王家や他国の貴顕からの要請は拒めないけど、どうしてもという以外は理由を説明してお断りしているみたい。


 空いた時間で私が何させられているのかというとお勉強だ。

 歴史や地理や政治の家庭教師が入れ替わり立ち替わりやってきて最新情勢を叩き込んでくれる。

 全員が碩学だから大変なんてもんじゃない。

 もっとも王家が選んだだけあって皆様優秀過ぎて、何を聞いても即答してくれるから効率がいい。


 テレジア王政府の命令があったらしくて軍隊の将軍や参謀、海軍提督、騎士団長などが来て軍事面での知識も説明(レクチャー)された。

 神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)(つかさど)るわけだから最低限の軍事に関する知識は必要だといわれたんだけど。

「一度に言われても無理だから!」

「基礎的な用語や概念だけでございます。

 根本知識がないと五里霧中になります」


 面倒くさい。

 特にきついのは海軍で、提督さんの言ってる事が全然判らない。

 専門用語のオンパレードなんだもん。

 私、まだ海も見た事無いのに!

 前世の人は海水浴に行った事があるらしいけど。


 それどころか前世の世界は進んでいて、海から遠い場所でも人工的な湖を作って遊べるようになっていた。

 殿方はともかく淑女も水着という水浴用の衣類を着るんだけど、前世の人の記憶ではほとんど全裸じゃないかと思うくらい肌を晒すのよね。

 耐えがたい。


 それはともかく、そういった知識とは別に語学も磨かされた。

 理想的には大陸中の国で話されている言葉を全部、会話が出来る程度に習得して欲しいそうだ。

「無理」

「殿下は耳がよろしいので、とにかく会話されれば良いかと。

 気がついたらお話出来るようになっておられます」

 習うより慣れろって奴?


 さすがに全部は無理なので、とりあえず離宮に滞在している王女様方を招いてお茶会を開くことにした。

 列強の姫君たちばかりだから、ここにいる王女全員と母国語で会話出来るようになって下さい、と言われたんだけど。

 これが意外に捗った。


 始めに「本日は○○語縛りで」と決めて、以後の会話はその○○語だけで通すのよ。

 何を話すかは自由。

 大抵は○○語が母国語の王女が司会となって色々話すことになる。

 まあ、王女様方の性格も色々でそういうのに向かない方もいらしたけど、他国に使節として派遣されるような方ばかりだから基本的には陽キャでスペックが高い。

 初めはぎこちなかったけど、次第に会話がなめらかになるどころか国際的な問題についての議論が出来るようになってしまった。


 これは大当たりで、私はもちろん参加した王女様方の語学力が著しく向上したのと同時に、私と王女様方の親近感というか同志感が高まった。

 メロディ、これが狙い?


 ちなみにメロディは語学力でもチートで、最初から王女様方全員の母国語を話せたみたい。

 ロメルテシア様はそれほどでもなかったけど、顔には出さないが悔しかったらしくてしばらくしたら誰とでも母国語で会話が出来るようになってしまった。

 化物(チート)共め。

 (ヒロイン)性能(スペック)が一番低いってどうよ(泣)。

 これでも家庭教師から「殿下は語学の天才です!」と絶賛されているのに。

 化物(チート)が周りに居たら私なんか雑魚(モブ)だ。

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