表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

283/371

282.象徴的存在

 だって司教とか司祭とかは、と抵抗したけど無駄だった。

 知らなかったけど、ミストア神聖教の位階持ちって必ずミストア神聖国の教都にある中央教会に行って叙階されなければならないそうだ。

 これはミストア人以外も同じで、正式な叙階式が終わらないと位階が認められない。

 戦争とか災害とかですぐにミストアに行けない場合は仮就任してそのお仕事をすることは出来るんだけど、それはあくまで仮であって都合が付き次第ミストアに行かなくてはならないとか。


「大変そうね」

「ミストア神聖教の初代巫女のお言葉がございます。

 信徒は奉仕が基本。

 ただし、ご自分を貶めてまで滅私奉公することはいけない。

 無理をせず、長期的展望を持って少しずつでも良いから前進せよと」


 初代巫女さんって何者だったんだろう。

 ひょっとしたら本物の聖女だったのかもしれない。

 そんなことを言う宗教指導者って。


「大変そうね」

「はい。

 ですのでミストア神聖教の位階を授ける時に、その者が位階持ちに相応しいかどうかを調べます。

 教都で叙階するのはそのためでございます」

 なるほど。

 そうですかそうですか。

 つまり、私が巫女に相応しくない、と判断されたらこのお話はなくなると。

「いえ?

 巫女は特別でございます。

 実を言えば、マリアンヌ様の叙階は既に済んでおります」


 ロメルテシア様が訳が判らないことを言い出した。

「え?

 でも叙階式ってこれからなんでしょう?」

「式典はその通りでございますが、叙階自体は資格がある者が立ち会えばどこでもいつでも可能でございます。

 その資格がある高位聖職者が基本的にはミストア本国の教都にしかおりませんので叙階をそこで行うと定められているだけです。

 今回は使徒たる(わたくし)、ロメルテシアが僭越ながらマリアンヌ様の叙階をとり行わせて頂きました」

 平然とおっしゃるミストアの使徒(ロメルテシア)

 使徒にそんな権利が!


「叙階って上の階位の者が行うことでは」

「はい。

 この場合、マリアンヌ様は巫女に叙階される以前は無階でございました。

 よって使徒たる(ロメルテシア)が叙階することは可能でございます」

 ガーン。

 そういう理屈か!


 使徒って単なる巫女の配下や補佐役じゃなくて、むしろ神託宮の影の支配者なのね。

 その証拠に使徒は巫女の叙階権限を持っていると。

 つまり使徒が「この者は巫女だ」と言えばそれが通ってしまう。

 ロメルテシア様って何物?

(わたくし)巫女(マリアンヌ様)の忠実なる(しもべ)でございますれば」


 頭がクラクラしてきたので撤退する。

 ミストア教が宗教なのは判っていたけど、これはちょっとついていけない。

 メロディに相談してみたらちょっと考えてから言われた。

「判らないでもないな。

 ええと、前世の物語でアーサー王の話って覚えてる?」

「知ってる。

 でもあれって史実というよりは物語なのでは」


 アニメでは女の子になっていたり超人というよりは化物みたいな能力を持っていたりしたけど。

 原作(・・)の方も似たり寄ったりだったような。

 剣の一振りで六千人殺したとか?


「そうなんだけど、似たようなお話はたくさんあるから多分、現実でもそうだったんじゃないかと思う。

 映画で観たんだけど、少年時代のアーサー王は平民なんだよ。

 横暴な貴族に対する反乱に加わって、その貴族と一対一で剣で戦うんだけど」

 そんな映画、私の前世の人は観てなかったような。

 アニメは観ていたんだけど。


「貴族を追い詰めて剣を突きつけるとその貴族は『さあ殺せ!』とか言うんだ。

 でもアーサーの様子を見て『御前、平民なのか?』と。

 そして『我は由緒ある誇り高き○○家の末裔! 平民などに討たれるわけにはいかぬ!』と叫んでアーサーから剣を奪い取って跪かせてその場で騎士に叙爵する」

「何そいつ。

 馬鹿じゃないの?」


 思わず言ってしまった。

 だってアーサーから剣を奪えるんだったら、そのまま斬りかかればいいだけじゃない。

 アーサーも何ぼやっとしてるのよ。

 殺し合いしている最中に剣を奪われるって(笑)。


「まあ、その辺は演出だろうとは思うけどな。

 問題は、その時点では平民身分のアーサーを騎士に叙爵出来る貴族の方が身分が高かったということだ。

 つまり、身分が高い者が低い者に対して身分を授けることが出来るってこと。

 もっともその貴族はおそらく高位の爵位持ちで、騎士なんかより遙かに高い身分だったはずだけどな」


 それは判る。

 国王陛下が貴族に叙爵出来るのは身分が最高位だからだ。

 でも与えられるのは自分より下の身分だけだ。

 国王は貴族を国王には出来ない。

 ていうか譲位なら出来るけど、それは叙爵とはいえない。


「ロメルテシア様って使徒なのでしょう?

 それが巫女を叙階するって変じゃない?」

 疑問を言ってみたらあっさり言われた。

「巫女って特別位階だと言われたんだろう?

 使徒は多分、神託宮というかミストア神聖教における正式な位階なんだけど、それは神託宮限定なんじゃないかな。

 その代わりに神託宮では絶対権力というか権威を持たされている。

 巫女の叙階もその権能のひとつということで」


「でも使徒って巫女に仕えるのでは」

「巫女という位階はミストア神聖教内では象徴的なものだと言われたんだよな?

 だからどっちが上とかないんだろう。

 私たちの前世の小説(ラノベ)に出てくる聖女みたいなもので」


 やっぱりそう思うよね。

 なるほど。

 巫女って階級じゃないんだ。

 ミストアの位階ではあるけど、神聖教の権力構造からは切り離されている。

 神託宮は使徒が仕切っていて、巫女はむしろ居候?

「そこまでは言わないけど。

 命令権などはない、象徴的な存在なのは確かだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] つまり日本で言えば千代田区千代田一丁目的な
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ