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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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279.神聖軍事同盟

「いいよもう。

 その神聖軍事同盟(リガ・ミリティア)とかいうモノを作るんでしょ」

「いやそれは○ンダムだから。

 名前についてはまだ決めていないのだが……うん。いいような気がしてきた」

「そうですね。

 神聖国ミストアが公認するとしたらそのような名称になりましょう」

「よし。

 マリアンヌ、私たちに任せておけ」


 最悪の結果になってしまったので私は頭痛がすると言って撤退した。

 本当にもう、冗談じゃない。

 私はテレジアの公爵に過ぎないんだよ!

 その前は男爵令嬢で伯爵の育預(はぐくみ)だったし、さらにその前は男爵庶子。

 元々は孤児なのに!


 やさぐれてお風呂にも入らずに寝てしまった。

 夜中に目が覚めて喉が渇いたと思ってベッドを降りた途端に専任メイド(グレース)がお茶のセットを差し出してきたのには驚かされた。

 もう人外の技じゃない?


「殿下のあらゆる要求に完璧にお答えすることが私の存在意義(モットー)でございます」

「そう。

 ありがとう」

 どこまで行くんだろう。

 考えないようにしよう。

 すぐに寝直して起きたら言われた。

「おはようございます」

「おはよう」

 もう何も言うまい。


 それから私は通常運転に戻った。

 特に予定がない限り、起きて湯浴みして朝食の後は公爵領領主としてのお仕事をする。

 お昼まで書類にサイン三昧の後、アフタヌーンティー風の昼食(ランチ)を摂る。

 前は一人だったんだけど、王女様方がご希望なので数人ずつローテーションでご一緒することになった。

 もっとも何を話すかというと重要な打ち合わせじゃなくて雑談なんだけど。


「まあ、カレン様は長子でいらっしゃるのですか」

「はい。

 もっとも私の下に弟や妹が複数おりますし、近々上の弟が立太子する予定でございます」

 カレン様が淡々と言った。

 カンバーサ王国の王女殿下で白い肌に赤毛の麗しい姫君だ。

 カンバーサの言葉は判らないけどカレン様は立派なテレジア語を話すので助かった。


 ちなみに離宮での会話はテレジア語が基本(デフォルト)になっている。

 離宮の主人たる私の母国語だからなんだけど、王女様方はもちろんお付きの人たちまで全員がテレジア語が流暢なのよね。

 まあ、私と直接会えるくらいの身分の人たちだけだけど。

 それでも侍女や護衛騎士までみんな語学が堪能って(汗)。

 下働きまでそうなんじゃないだろうな。

 いや、王族に直接仕えるってそのくらいじゃないと駄目なのかも。

 私なんか落ちこぼれるだろうなあ。


「するとカレン様は第一王女、ということでしょうか」

 栗毛の可愛い王女が聞いた。

 ミモザ様はアランビル王国の王女だったっけ。

 私よりちょっと年下だけど、王族として成人式(デビュタント)は随分前に済ませているので社交も堂々とした態度だ。

 さすがは王女様。


「そのような称号はございません。

 王家の者は全員、平等でございます」

 カレン様のお話によればカンバーサ王国の王家は民主主義(違)だそうで、王家の者に序列などないらしい。

 みんな平等ということは、逆に言えば実力主義だ。

 カレン様のテレジア訪問も激烈な競争を勝ち抜いたカレン様が勝ち取った栄誉だという。


「すぐ下の妹と王弟殿下の次女が特に手強うございました。

 肉を切らせて骨を断つことで、やっと潰せた次第で」

 何があったんだろう。

 比喩的な表現だと思いたい。


「カレン様はさすがでございます。

 だから軍事部門をご担当なさるのでございますね」

 おっとりした雰囲気のミユレノン様がおっしゃった。

 ハンセルド王国の王女様で見事な金髪縦ロールの姫君だ。


 最初見た時は反射的に「悪役令嬢来た!」と思ってしまったけど、もちろんミユレノン様はそんなのじゃなかった。

 いついかなる時もほんわかした態度を崩さない、生粋の姫君だ。

 メロディとかみてるから王女に対する先入観があって、まさか本物? の王女らしい王女が来るとは思って無かったのよね。

 いや、他の王女様たちが王女らしくないわけではないんだけど。


「そう言われるミユレノン様は外交部門をご担当されるのでしたわね」

 ミモザ様が切り込む。

 可愛いだけじゃないミモザ様(泣)。

「はい。

 (わたくし)は母国でも外務大臣補佐を任されておりましたもので」

 おっと。

 ミユレノンさま、職業婦人だったのか。


「王女殿下が補佐、ですか」

 カレン様が意外そうに言った。

「普通ならむしろ大臣の方が補佐に回ると思うのですが」


「我が国の政府要人は平民身分の者が担当いたしております」

 ミユレノン様は相変わらずふんわりとした口調を崩さない。

「王族や貴族は政府の要職を占めることがないように、という制度でございます。

 かつては貴族身分の者が要職を占めていたのでございますが、どうしてもご自分の一族に便宜を図ってしまう(ケース)が後を絶たず」


「ああ、なるほど」

「それでは政府の権威が揺らぎませんでしょうか。

 領地は貴族が治めておられるのですよね?」

 ミモザ様、有能。


「そのために王族や高位貴族が補佐や顧問を担当します。

 後ろ盾と言ってもよろしいでしょう。

 この制度を導入後、汚職のたぐいは随分減ったと聞いております」

 ミユレノン様もブレないな。

 凄い人たちばかりだ。

 チンケな公爵風情がお相手していいのだろうか。

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