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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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267.おめでとう

 するとコレル閣下と家令(ヒース)が顔を見合わせた。

「殿下」

「何?」

「殿下はご自分のお値打ちが判っておられない。

 この機会に是非とも認識を改めて頂きたく」


 言われてしまった。

 それでも判らなくて聞いてみたら、今や私は国際政治の舞台では流行(トレンド)なのだそうだ。

 テレジア国内では単なる一貴族、というよりは王家のご意見番でしかないけど、個人的にはよその国とのコネが有り余っている重要人物(キーパーソン)らしい。


「直系の血縁関係だけでもゼリナ、ハイロンド、ライロケルの王家がございます。

 もちろんテレジア王家とも縁戚で。

 殿下はこれらの国の王家の王位継承権持ちであられます」

「親類ということなら更に。

 今回、パーティに参加して頂いている王女様方はほとんど全員が殿下の親類と言えます」

「殿下ご自身も他国からの支持が大きい。

 ゼリナやハイロンド、ライロケルはもちろん、シルデリアやミステアも殿下への支援を表明頂いております」


 家令(ヒース)専任執事(コレル)にたたみかけるように言われて耳を塞ぎたくなった。

 何でそんなことになったんだろう。

 まあ、母上や祖母上は判る。

 私を孤児院に叩き込んで放置したという負い目があるからね。

 でもメロディはどうよ。

 面白がっているだけでは。

 ロメルテシア様に至っては宗教上の理由で私をご神体にでも仕立て上げそうだ。


「そんなに酷いの?」

「私の見たところ、殿下へのご支持は絶大でございます。

 それこそ各国の盟主として立たれてもおかしくないかと」

 嫌だよ。

 孤児院出の男爵庶子に何を期待しているんだよ。

 仮初めの公爵としてですらアップアップなのに。


「殿下、そろそろ」

 専任侍女(サンディ)が呼びに来たので尻切れトンボのまま話が終わってしまった。

 まあいいや。

 後で考えよう。


 パーティ会場に戻ると人が押し寄せてきた。

 先頭はメロディだ。

 隣にロメルテシア様もいる。

 やっぱりこの二人が双璧というわけね。

 ずらっと並んだ王女様方は、メロディの合図で一斉に(カーテシー)をとった。

「「「「「お誕生日、おめでとうございます」」」」」

「……ありがとうございます」


 不意を打たれてぎこちなく返すのが精一杯だった。

 誕生日のケーキ入刀とか出てくるんじゃないかと戦慄したけど、さすがにそれはなかった。

 ここは21世紀の日本じゃないし、私は女子高生じゃないんだから!

 その後、数人ずつ固まって私に話しかけてくる王女様方と語らったり、遠慮がちな貴族や名代の方々に声を掛けたりしているうちに夜が更けていった。


「お時間でございます」

 家令(ヒース)が言って、パーティが終わった。

 ていうか私が宣言したんだけど。

 王女様の中にはまだ幼い方もおられるので、あんまり遅くなると拙いかもしれないし。

 皆様素直に従って下さって、私もほっとしながらパーティ会場を引き上げたのだった。

 何とか無事に済んだ。

 暗殺とか毒とかなくて良かった。


「まず、ございません。

 これだけの貴顕が集まっている中で騒ぎを起こせば、企んだ国は袋叩きに遭います」

「それが狙いとかは?」

「メリットがございません。

 王宮ならともかくここはテレジア公爵家の離宮(タウンハウス)でございます。

 防御(セキュリティ)は考えられる限り施しました」


 なるほど。

 実を言えば王宮ってある意味テレジアの公共の場だから結構隙があるのよね。

 警備兵や近衛兵はいても、その人たちって大抵はどこかの貴族家の紐付きだ。

 ていうか貴族のコネがないと王宮には勤められないから。

 下働きの下僕やメイドすら、いずれかの貴族と繋がっている。

 よってある程度力のある貴族なら何かを引き起こすのは結構簡単だったりして。

 貴族の臣下や配下はその貴族家の命令には従わなければならないからね。


 でもここは離宮で、働いているのは全員がテレジア公爵家の配下だ。

 自分の職場を荒らそうとか思う人ってそんなにたくさんはいない。

 いても相互監視しているからすぐにバレる。

 スパイなんかもやりにくいだろうね。


「でもうちの離宮(タウンハウス)って結構いろいろな国の人が棲んでいるわよね?」

 字が違うとは言われたくない。

 ハイロンドとライロケルの連絡所はまだ居座っているし、シルデリアはメロディのお付きが事務所を開いてしまった。

 ミステアなんか政府の部署だ。

 着々と勢力を拡大している。


「外国の方が騒動を起こすのは難しいでしょう。

 何かやったら追い出されます」

 それもそうか。

 あの方々って、別に権利があって離宮に居座っているんじゃない。

 テレジア公爵()が黙認しているだけで、気が変わったらいつ追い出されても不思議じゃないのよ。

 よって大人しくしていると。


「安心した」

「それはようございます」

「じゃあ、後は任せていい?」

「お心のままに」

 というわけで、私はお風呂に入って髪を乾かしてからベッドに飛び込むのだった。

 疲れた。

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