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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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265.作業

「まあ、いいじゃないか。

 殿下(マリアンヌ)も知らない男たちに言い寄られたくはあるまい」

「それはそうですけど」


 どうも専任執事(コレル)相手だとへりくだってしまう。

 人の目がある場所なら別だけど、私的な会合ではコレル閣下って私の「上司」だからね。

 そんなこと言い出したら家令見習い(アーサー)なんかミルガスト家では露骨に上役だった。

 今はもちろん私の方が上なんだけど、でもなぜかアーサーはアーサーなのよね。


「何か気をつけることはある?」

 家令(ヒース)に聞いてみた。

 何と言ってもこの人は宮廷政治のエキスパートだし。


「殿下はご自由にやってよろしいかと。

 御身は公爵でございます。

 王家以外、頭上に抱くものはございません」

「でもやらかしたら」

「良いではございませんか。

 ここは離宮でございます。

 ある意味、治外法権の地」


 なるほど。

 離宮(タウンハウス)はテレジア公爵領の一部と見なせるから、そこで何をやろうがテレジア公爵()の勝手だと。


「王家と違って御前さん(マリアンヌ)には(しがらみ)がないからな。

 自分で責任をとれるのなら何やったっていいんだよ。

 誰かに失礼なことをしたとしても、それはテレジア王国ではなくテレジア公爵家の問題だ。

 その代わり王家は庇ってくれないが」

 コレル閣下が私の立場を要約してくれた。


 そうよね。

 貴族ってそういうものだ。

 何かあってもテレジア公爵()の問題であって、王家は干渉してこない。

 まあ、国に不利になるような事態だと動くだろうけど。

 よし判った。

 好きにしよう。


 というわけで、私は乾杯の後にずらりと並んだご挨拶の列を片っ端から捌いた。

 周囲を社交秘書じゃなくて社交侍女の皆さんに囲まれ、列の先頭の方が近寄ってくる前に情報(データ)を教えて貰う。

 王女の皆さんは既に謁見を終えているので、双方スムーズに会話出来た。

 初対面なら身分から言って私からは話しかけられないところなんだけど、もうお互いに紹介しあった後だからね。

 初っぱなから会話が出来る。


「おめでとうございます」

「これはご丁寧に。

 厚く御礼申し上げます」

 そのくらいなので、最初はどんどん捌けた。


 他国の貴賓が終わると国内の貴族家だ。

 もっとも大半は名代だった。

 あるいは奥方とか。

 ちなみにテレジア王家は参加していない。

 名代として侯爵がご挨拶してくれただけだ。


 王家に遠慮された理由は家令(ヒース)が説明してくれた。

 そもそも披露宴とか誕生パーティとかの、貴族が主役のイベントに王家の者が参列するのは御法度なのだそうだ。

 なぜかというと、もし王家の者が参加したらそっちが主役になってしまうから。


 貴族は序列がすべてで、例えば国王陛下が臨席されたらどんな状況でもそれ以外の方は脇役に成り下がる。

 誕生パーティで祝われる人が無視されたりするのはヤバい。

 もちろん、ごく親しいとかの理由で参列する場合は王家の者ではなく従属爵位を名乗るんだけど、それでも気を遣ってしまうからね。

 だから私の誕生パーティには名代を送ってきたわけ。


 実はもう一つ理由があって、今の王家には私と合う年代の方がおられない。

 王太子殿下は30代の既婚で既に嫡男がおられるけど、その方はまだ年齢が一桁だ。

 それ以外の王家の方は、王太子殿下の嫡男がある程度育たれた時点でみんな臣籍降下されてしまっている。

 もう王家の者とは言えないのよね。

 いたとしても私から見たらおじさんおばさんとか子供でしかない。

 我々は知らんから勝手にやれば? という無言のメッセージを頂いてしまった。


 無限に続く貴族のご挨拶を機械的に捌きながらふと見ると、向こうの方で各国の王女殿下方が集まっていた。

 その周囲が露骨に空いている。

 王女の塊なんか近寄りたくもないのは判る。

 王女様方の中心にはメロディがいた。

 やっぱあの転生者はチートだわ。


 30分くらいかけて何とかご挨拶の列を捌き終えると、私はお花摘みを口実に一時退避した。

 参加者の方々には勝手に親睦を深めて頂こう。

 パーティ会場の控えの間でソファーにどっかと座り込んでジュースをがぶ飲みする。

 疲れた。


「お見事でございます」

 専任侍女(サンディ)が言ってくれたけど、社交侍女の方々のアドバイスというかアンチョコがあったからね。

 口を動かさずに私に聞こえるように助言してくれるのだ。

 高位貴族令嬢のスキル、恐るべし。

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