259.疲労
謁見に使っている小部屋で待っていると先頭打者が来た。
近衛騎士が両開きのドアを開けて、静々と進んできたのはやっぱり美少女だった。
髪は亜麻色、瞳は碧、素晴らしく整った小顔に細身の身体。
地味だけど美しいドレスの色は緑だ。
私の前世の人が読んでいた軽小説のヒロインか。
歳の頃は私ととんとん?
成人したばかりに見える。
「ゼリナ王国シェルパトーレ王女殿下」
祐筆だか何だかの人が読み上げる。
王族か。
しかもゼリナということは。
「マリアンヌ・テレジアでございます」
相手が王族なので私より身分が高い。
だから私は立ち上がって礼をとった。
美少女は花がほころぶように笑顔を見せた。
「シェルパトーレでございます。
シェルとお呼び下さい。
マリアンヌ様」
いやいや、いきなり外国の王女を呼び捨てになんか……あれ?
「失礼ですがシェル様は」
「はい、マリアンヌお姉様。
私はお姉様の祖母上の兄に当たる前々ゼリナ国王陛下の孫でございます」
やっぱり。
どういう呼び名か判らないけど、かろうじて血は繋がっているのね。
「さようか。
よくいらっしゃった。
歓迎致します」
「ありがとうございます」
しかし、うーん。
ゼリナ、何を考えているんだろう。
こんな年端もいかない王女を送り込んでくるとは。
まさか国王陛下の名代というわけでもないだろうし。
「それでは」
考えている内にシェル様は綺麗に礼をとってから退出してしまった。
本当に顔見せだけだったらしい。
まあ、また後で話せるよね。
「ハイロンド王国王女、レイサーゼ殿下」
続いて入って来たのは美女だった。
長身。
メリハリの利いた身体つき。
白銀の髪に浅黒い肌で異様にエキゾチック。
Aラインのドレスはグラディエーションが利いた虹色。
歳は私より上だ。
二十歳くらい?
また王女か。
「お初にお目にかかります。
マリアンヌ・テレジアでございます」
「これはご丁寧に。
レイサーゼだ。
御身の従姉妹にあたる。
よしなに」
祖母上がハイロンドに輿入れしてお生まれになった方の息女だね。
こんなもの凄い美女が私の親戚なんてね。
「よろしければマリアンヌとお呼び下さい」
「うむ。
私のことはレイと」
うっ。
全然似てないけど、その名前は露骨にクローン少女を連想させる。
セーラー戦士とはまったく関係なさそうだけど。
「よろしくお願いします」
「よしなに」
鷹揚に頷いて去る美女。
もう疲れてきた(泣)。
「ライロケル皇国皇女、パルマティア殿下」
また美少女だった。
しかも皇女。
身分がインフレ過ぎない?
そういう方々が延々と続き、終わった時はまだお昼になってないのに疲れ切ってしまった。
精神的に。
大人しめのドレスに着替えさせて貰ってテラスで昼食を摂る。
いつものようにアフタヌーンティー的な段重ねのサンドイッチだったけど、食が進まない。
本当に疲れた。




