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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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254.誕生日

 こうやって逃げているうちに物事がどんどん複雑になってしまったのよね。

 もう泥沼の深みにハマッて足抜け出来ないところまできていたりして。

 かといって何かやれるかというと何もやれないし。

 結局、私に出来るのは毎回力を振り絞って何とか切り抜けることだけだ。


 そろそろ暖かくなってきたな、と感じた頃に唐突に専任メイド(グレース)に言われた。

「おめでとうございます」

「何?」

「来週でございますね」

 何だろう?

 ここまで言い切るってことは、私が知らないだけで確実に何かありそう。


「心当たりがないんだけれど」

「殿下はご自分のことには無頓着であられますから。

 ご心配には及びません。

 配下の者共が準備を進めております」

 何なのよ!

 睨みつけたら平然と答えられた。


「殿下の17歳のお誕生日でございます」


 それか!

 そういえばそうだった。

 何で忘れていたんだろう。

 そういえば去年はゴタゴタしていて何もしないうちに過ぎた気がする。


「そんなのよく知っているわね」

「テレジア公爵家の相続などの手続きのために家令(ヒース)が書類を整えている時に気づいたそうでございます。

 それまで思い当たらなかったことを恥じておいでです」

「いや、私自身忘れていたんだし」


 そうなのよ。

 孤児院時代も誕生日のお祝いはやって貰っていた。

 もちろんお粗末この上もないイベントだけど、孤児一人一人の誕生日に誕生会があった。

 生まれた日が判らない場合は孤児院に入所した日と決められていた。

 みんなでお祝いの言葉をかけて、その日の夕食がちょっと豪華になったりして。

 スープに肉の切れ端が入っているとか(笑)。


 なぜそんなことをやっていたのかというと、孤児院の在籍期限には年齢制限があるから。

 孤児はテレジア王国の習慣的な成人である14歳の誕生日から数週間以内に孤児院を追い出される。

 もちろん、その前に引き取り手が決まったりしたらそのまま快く送り出すんだけど、そうでない場合でも出て行かなくちゃならない。


 孤児院側はただ放り出すだけじゃなくて色々な伝手を辿って見習いとか下働きとかの職を世話する。

 もちろん、その前に養子とかが決まっていれば誕生日前でも送り出すわけで。

 雇用先や行き先が決まっている場合は例外的に半年くらい留まらせて貰える場合もあるけど、いつまでも残っていたら孤児院の予算を圧迫するからね。


 成人したんだから自分で喰っていけ、というのは納得出来る理由だ。

 私も誕生日が来る度に戦々恐々していた覚えがある。

 幸いにして、私は追い出される前にサエラ男爵家に引き取られたから助かったけど。


「貴族も誕生日を祝うの?」

「当然でございます。

 (つつが)なくして歳を重ねることで、その貴族家の安泰が証明されるのでございます」


 なるほど。

 つまりは領地領民のためか。

 多分、法衣貴族はそれほどでもないんだろうな。

 でも領地貴族は当主がしっかりしてないと即詰む恐れがある。

 逆に言えば当主の誕生日を祝えるくらい領地経営が安定しているということは領民にとっても良いことだ。


「何をするの?」

「下位貴族家では家族でお祝いをする程度でございますが、高位貴族の当主ともなれば」

「なれば?」

「……色々でございますが、テレジア公爵家では大々的なパーティが開かれると」


 あちゃー。

 でもそれはそうか。

 何てったって公爵だ。

 そういえば国王陛下や王太子殿下の誕生日にはでかいイベントがあった気がする。

 パレードとか?


「まさか」

「いえ、そこまでは。

 王都は王家の領地ですので、陛下や王太子殿下が馬車で練り歩きますが」

「だよね」

「テレジア公爵領では当日、祭日になる予定と聞いております。

 貴族や役人、領民を上げて大々的に」

 うわっ!

 止めてよ!


 駄目か。

 私のためじゃなくて領民のためだと言われたら抵抗出来ない。

 楽しいことが少ない平民がすべて忘れて騒げる日なんだろうな。

 お祭りってそういうものだ。

 多分、テレジア公爵()からの好意ということで飲み食い自由とかになるんだろうし。

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