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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第九章 巫女

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250.代役

 冬が深まり、年が変わると時々雪が降るようになった。

 そんな中でも王宮や高位貴族家では舞踏会やパーティが開催される。

 領地貴族家の大半は自分の領地に引き上げてしまったり、もっと暖かい地方に避寒に行ったりしているけど、敢えて王都に残って越冬しようという家も多い。

 その人たちはどうせ暇だから、ということで舞踏会やパーティに参加するのよね。


 テレジア公爵家(うち)にもお誘いのお手紙が大量に来たらしい。

 とはいえ、テレジア公爵家の貴族は今のところ私ひとりなので、つまり私自身へのお誘いだ。

 秋頃からやたらに何の意味があるのか判らない謁見の希望が増えたのはこのせいか。


「どうなさいますか?」

「出てみたいけど。

 どこがいいかな」

 家令(ヒース)を呼んで聞いてみた。


「そうですな。

 まず、何より先に王家主催の集まりには参加する必要がございます」

 それはそうか。

 そうしなかったら王家より他の貴族家を優先することになってしまう。

「判りました」

「これがよろしいでしょう。

 王妃様主催のパーティでございます」


 妥当な線を狙ってきたわね。

 国王陛下や王太子殿下の主催する舞踏会は露骨に男の世界というか、高位貴族家当主同士のマウント取り合いだ。

 同時にそれぞれの貴族家の奥方同士の勢力争いというか、力関係の確認の場でもある。

 不思議というわけでもないけど、貴族家の奥方の(パワー)は旦那様によって決まる。

 私の前世の人の世界だと、会社という貴族家のような組織に所属している人がまとまって住んでいる住宅があるんだけど。

 社宅とか言ったっけ。

 その中では一家の旦那様の階級がそのまま奥様の立場に繋がっているらしい。


 どういうことかというと、その会社で部長をやっている旦那様の奥様の方が、課長の奥様より「偉い」。

 別に奥様自身が偉かったりするわけじゃないんだけど、何となくそうなっていた。

 こっちの貴族家も同じで、当然といえばそうだけど、伯爵家の奥方より侯爵家の奥方の方が偉いことになっている。

 爵位がはっきり違っていれば当たり前なんだけど、同じ伯爵家でも何かドジやって落ち目な家と、手柄を立てて順風満帆な家とでは後者の方が「偉い」。


 もっとも色々あって例えば金満な伯爵家が投機に失敗して借金している侯爵家より偉い、というよりは幅を利かせたり、露骨に借金していたりしたら爵位に関係なく貸した方が借りた方より偉かったり。

 そういうことを家令(ヒース)に教えて貰ってビビッた私はそんな世界から逃げることにした。


「そうですな。

 実のところ、テレジアの公爵家は少し特殊でございます。

 何というか浮世離れしているというか」

 家令(ヒース)が訳の判らないことを言い出した。


「何のこと?」

「言わば貴族界における治外法権ですな。

 王家も似たようなものでございますが、貴族家から見て直接の主君なだけにまだ接触がございます。

 ですが公爵家は」


 なるほど。

 テレジアの公爵家ってある意味、貴族界のピラミッド構造から外れているわけだ。

 確かに高貴な身分ではあるんだけど、貴族家からみたらあまり接触する機会がない。

 派閥の頂点というわけでもない。

 テレジアの公爵家はよその国と違って特殊だからね。

 王国の権力構造の外にいるというか。

 全員が国王陛下の諮問機関みたいなものなのよね。


「元老院の一員以外の意味はないと」

「そうでもございませんが、伝統的に公爵家は王国の(まつりごと)には直接関わりません。

 万が一の時のために存在しているということですな」

 家令(ヒース)が直言を避けた通り、王家に対して不敬だもんね。


 つまり、王家自体や陛下の跡継ぎに何かあって駄目になったら代役をこなすために存在している。

 そんなことはもちろん、滅多にはない。

 でも私の祖父上(じいちゃん)はやってしまったわけだけど。

 まあいい。


「だとすると殿方主体の集まり(イベント)には行かない方がいいかな」

「いずれは必要でございましょうが、慌てることはないかと。

 殿下はまだ授爵してから1年もたっておられません。

 ゆっくりと慣れて頂ければ」

 その方が私もありがたい。

 ていうか楽だ。

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