24.仕事していいの?
「え? もう働いてるの?」
「これでも親父殿の事業の一部を任されているから」
凄い。
エリザベスってただの富豪のお嬢様じゃなかったんだ。
「大したことはないわよ。ある程度の権限を認められているというだけ。
決裁には親父殿の認め印がいるしね」
よくわからないけど助手のような立場らしい。
それでも商売に口出し出来るだけでも大したものだ。
「貴族令嬢が働くなんて、とか言われない?」
「うちは商人だから。むしろ働かない者は居場所がない」
エリザベスによれば商人貴族には特権が認められているそうだ。
領地貴族には当然だが統治したり管理したりする領地があって、それは王家が認めたその貴族家の特権と言える。
これに対して商家が貴族になった場合、もちろん領地なんかないのでそれに変わるものとして「権利」を頂けるとか。
「独占権とか専売権とか交易権とかね。うちは宝石や装飾品について優先権が認められている。他国との取引とか」
「それは凄い」
「その代わり税金もたっぷり取られるし、何かというと王家や高位貴族家から無茶ぶりされるけど」
さいですか。
美味しいだけではないみたい。
「それで高位貴族家と知己があると」
「そう。こういうのは信用が第一だし長く続けるものだから、親父殿だけじゃなくて跡継ぎや家族も関わることになる。
私も子供の頃からそれなりに働いてきた、というよりは関わってきた、かな」
エリザベスの実家にはもちろん跡取りの嫡男がいるし、その他にも兄弟姉妹が多いらしいけど、領地貴族家と違って嫡男以外は将来家を外れる、と決まったわけでもない。
分家や暖簾分けはあるかもしれないけど、どっちにしても実家に関係したところで働くことになる。
領地貴族や法衣貴族の令嬢が嫁に行くのとは訳が違う。
「だから淑女も働いていいと」
「そう。宝石や装飾品なんか、むしろ女性じゃないと出来ないことも多いでしょう」
なるほど。
私の前世の人の記憶によれば、その世界では女性も当たり前に働いていたようだ。
差別はあるけど男性と同じレベルで仕事をこなして出世する人もいたとか。
でもそれって身分がなかったからかもしれない。
テレジア王国でも平民の女性は当たり前に働いている。
奥向きや下働きだけじゃなくて、商店だったら経理や事務が出来るし役人も少ないけどいる。
ごく少数だけど女性騎士すらいるのよ。
これは王族や高位貴族の女性を護衛するためだけど。
王宮の奥宮や女性の寝所に男は入れないからね。
でも貴族令嬢が騎士になるって、無理とは言わないまでも勧められないそうだ。
だって騎士が貴族令嬢だったら護衛対象になってしまうから。
護衛騎士に護衛騎士がつくって何よ(笑)。
なので、平民なら女性にも職業婦人への道が(狭いけど)開けている。
でも貴族は無理。
貴族女性が出来る仕事なんか、せいぜい王家や高位貴族の侍女や家庭教師くらいかな。
後は出家して教会のシスターとか修道院とか。
それ以外は皆無。
では何するのかというと一番多いのは誰かの奥さんになって家を仕切ること。




