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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第八章 特任教授

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230.野心

「話は変わるけど、過去じゃなくて未来はどうするつもり?」

 メロディが聞いてきた。

「未来かあ。

 今のところ何も考えてないかな」

「確かに今のマリアンヌの状態って自分からは動きようがないのは判るけど」


 そうなのよ。

 とにかくここ半年ほど、周りの状況が激変しすぎて流されている。

 溺れないように必死で藻掻(もが)いているだけ。

 何かしたいとかどうなりたいって考える余裕もなかった。


「でも少しは落ち着いてきでしょ?」

「それはそう。

 これ以上変なものが出てこない限りは」

「何かあるの?」

「実は」


 ミステア神聖国についてお話する。

 桃髪(ピンクヘアー)のヅラ疑惑にも触れたら爆笑された。

「確かにその髪って何か曰くありげよね」

「そんなこと言われても」

 私にはどうにもならない。

 そもそも髪だけじゃなくてこの瞳も私の責任じゃない。

 「王家の瞳」なんか邪魔になるだけだ。


「さすがに瞳の偽装疑惑はなかったと」

「前世じゃあるまいし、カラコンなんかないからね。

 変えようがない」

「そうよね」

 私の前世の人がよく読んでいた異世界物なら魔法とかがあって、瞳どころか姿すら自在に変えられたりするみたいだけど。


「それで思い出したけど、確か桃髪(ピンクヘアー)って乙女ゲーム小説のヒロイン属性だった」

 メロディがくすくす笑いながら言った。

「そうだっけ」

「なぜなのか判らないけど文化的情報(ミーム)として定着しちゃっていたと思う。

 登場人物(キャラ)の中に桃髪(ピンクヘアー)がいたらその人がヒロインで間違いなし。

 ただしネタ的に」

「何よそれ!」


 メロディによれば、彼女が読んだり見たりした小説やアニメでは乙女ゲーム的な物語においてヒロインと言えば桃髪(ピンクヘアー)だったのだそうだ。

 私もそういう話は読んでいたと思うけど気づかなかった。

 というのは、どうも「ヒロイン」という存在が正しい意味での主役というよりは、どっちかというと道化役にされていたから。


 乙女ゲーム小説ってヒロインが幸せになるんじゃなくて、一見敵役(ヒール)な悪役令嬢こそが実は女主人公(ヒロイン)な話ばっかりになってしまっていたという。

 シンデレラや白雪姫で義姉や王妃が実は主役だった、というような?


 まあ確かに正統なヒロインが幸せによる話って、あんまり面白くなさそうだものね。

 清く正しく美しいヒロインって、何か無個性で共感出来ないというか。

 そんなの読んで喜ぶのは子供だけだったりして。

 世間の大部分は大人で、()れてしまっているからもっと捻った設定や展開でないと満足できないとか?

 まあいいけど。


「じゃあ(マリアンヌ)はこの物語の女主人公(ヒロイン)じゃないと?」

女主人公(ヒロイン)じゃないわよね。

 どっちかというと主人公(ヒーロー)?」

 ふざけて言ったらまともに返された。

 何それ。


「だって貴方(マリアンヌ)って今や公爵でしょ。

 男爵家の庶子、いえ孤児から成り上がったんだから正統なヒーロー物の主役属性じゃない」

「そんなこと言い出したら貴方(メロディ)だって地方都市の平民から王女になったでしょう」

「私は別に逆境にいたわけでもないし、這い上がる努力なんかしてないから。

 お父様とお母様が勝手にやっただけ」

「私も似たようなものよ」


 お互いに言い合って、同時にため息をつく。

 柄じゃないのよね。

 王女だの公爵だのって本気(マジ)で何の冗談なのかと思う。

「話が逸れたけど、将来だったっけ。

 何も考えてません」

「それは私も似たようなものだけど。

 そもそも生存競争(サバイバル)やってるだけで、目標とかゴールとかないものね」

結末(ゴール)か。

 何になるんだろう」


「そういえばメロディってシルデリアの第一王女よね。

 将来は女王様?」

 聞いてみたら手を振られた。

「ないない。

 シルデリア(うち)は一応、女性にも戴冠は可能だけど、それはどうしようもなくなった状態で中継ぎとしてだけだから。

 私には弟が2人もいるし王太子殿下(父上)もまだ若くて元気だから、私に王位が回ってくることはまずないかな」

「そうなんだ」


 世界史の講義で教えて貰ったっけ。

 この大陸には色々な国があるけど女王や女帝って歴史的に見ても珍しいそうだ。

 少数のそういう例は、今メロディが言ったように他に誰もいなくなってしょうがなく戴冠した人ばかり。

 支配者ってやっぱり殿方優位なのよね。


 エリザベスとも話したんだけど、女性はとりあえず跡継ぎを産むことが第一議とされていて、それだけでも支配者の立場と合わない。

 つわりや出産だから政務を休む、という言い訳は通用しないから。

 その分、優秀な王配がいればいいとは思うんだけど、それって権力の分散に繋がるから歓迎されない。


 だから女王や女帝はあくまで代打(ピンチヒッター)というか、次期国王がまだ幼いので成人するまでの間だけ戴冠するとか、玉座にはつくけど実際の政務は優秀な王配や配下がやるとか、そういう立場なのだそうだ。

 そして跡継ぎの準備が整ったら速やかに退位して隠居する。


 もっとも中には死ぬまで玉座に座り続けた方もいらっしゃったみたいだけど、それはご本人があまりにも傑出していたから。

 退位しようとしても周り中から反対されて、老衰で亡くなるまで王位に留まったと。

 でもそんな人は歴史上一人か二人しかいなくて、やっぱり国のトップは殿方が普通だ。

 優秀な王女や皇女はむしろ嫁にやられる。

 国にとって次の国王候補にライバルがいるのは好ましくないから。

メロディの両親は妃殿下が王宮に復帰した後、頑張って子供を作りました。

なのでメロディには弟が2人います。

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