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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第八章 特任教授

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229.不純物

「それじゃ、この話はここまで。

 話は変わるけど、前世の情報(データ)を突き合わせてみない?」

 メロディに言われて頷いた私は思い出せる限りのことを話した。

 もちろんメロディも色々と話してくれた。

 2時間くらい話した結果、ものの見事に具体的な情報共有が出来ないことが判明した。


 だってお互い、前世の人に関する個人情報がごっそり抜けている以前に皆無なことが判明したから。

 固有名詞とか住んでいた街や学校やその他の思い出は、つきつめていくとどうも読んだ小説や見たドラマやアニメの描写ではないのかという疑いが濃厚になったのよ。

 そもそも女子高生だったという自覚がある割には自分がどのような家に住んでいて家族構成は、というようなデータが皆無。

 交友関係も友人や知り合いの存在が薄っぺらい。

 まあ、21世紀日本の女子高生ならもともとそれが当たり前なのかもしれないけど。


 どうも、やっぱり前世の記憶って自分が体験したというよりは誰かから抽出されて私にインストールされたもののようだ。

 もう一つ判った事がある。

 メロディも私も同世代の異性にはまったく興味がない。

 この人生でも前世でも同じだ。

 別に女の子が好きとかそういうわけでもないけど、イケメンじゃなくてイケオジが好きなのは二人ともだった。


「何でなんだろう」

「さあ。

 判ったところでどうしようもないから」

 そうなのよね。

 メロディの場合、家庭の事情? で成人するまでは地方の街にみせかけた要塞都市で育ったらしいんだけど、そこには同世代の男がほぼいなかったそうだ。

 警備隊員に化けた護衛騎士の人たちはたくさんいたけど、団長や隊長クラスを除いてはみんな二十代から三十代だったから興味もなかったという。


「今思うと変なんだけどね。

 十代前半の女性がかっこいい警備隊員とか護衛騎士に惚れたり憧れたりしないって」

 いやそれは好みもあるから(笑)。


 それでも一般的な若い女性なら男性ホルモン満載の男性に憧れないということは考えられない。

 増してメロディの両親は王族だったんだから、その臣下の人たちは最高級の人材だったはずだ。

 もちろん臣下の人達は(あるじ)であるご両親の息女に対して恋愛(アタック)するようなことはしないだろうけど(身分が違う)、娘の方にはそんな制限がないわけで。

 そもそもメロディは情報遮断されていて本人は自分は平民だと思っていたのよね。

 なのに近くにうようよいる美男(イケメン)にまったく興味を示さないって。


「女の子が好きとか幼児(ショタ)好きとか?」

「それもない。

 そもそも恋愛以前に男女関係に興味がない」

 きっぱり言う王女殿下(メロディ)

 さすが王族というべきか。

 乙女ゲームの登場人物(キャラ)としては一番使えないタイプだ。


貴方(マリアンヌ)はどうなの?

 孤児院仲間とかは?」

「全然興味がなかったなあ。

 変にちょっかいをかけてくる連中は叩きのめしたし。

 花とかくれる奴もいたけど意味不明で」

「駄目ね」

 すみません(泣)。


 今思うとあれは好意だったような気がするけど、当時の私からしてみたらウザいだけだった。

 雌虎(タイグリス)の異名が広まるにつれて、そんな話もなくなったし。

 せいせいしていた。


「そういえば貴方(マリアンヌ)、男爵家に引き取られる前はどう思っていたの?」

 メロディが聞いてきた。

「どうって?」

「将来どうするのかとか。

 いつまでも孤児院にいられるわけじゃないでしょ」

 それはそうだ。

 どう思っていたんだったっけ。


「あまり考えてなかったなあ。

 暗い話は聞いていたけど」

「暗い話?」

「うん。

 引き取り手がないまま年齢制限で孤児院を卒業した女の子がどうなるのかって。

 良くて酒場の女給、悪ければ酒場の二階の個室でお客様をおもてなしするお仕事しかないって」


「まさかそれ、本当に信じてたの?」

 呆れた表情で言うメロディ。

「言わないで。

 だって情報(データ)がなかったし」

「少し考えれば判ると思うけど。

 貧乏な家や孤児院出の女の子が全部そうなるんだったら国中の酒場が女給と娼婦で溢れるわよ?」

「……お恥ずかしい限りです」


 だってあの頃は孤児院での生活しか知らなかったし。

 その他には21世紀日本の女子高生としての記憶があるだけで、そんなのは全然役に立たなかった。

 そう言うとメロディは頭を抱えた。


「そうでした。

 女子高生の頭で考えたらそうなるか」

「それって?」

「私の記憶によると日本の週刊誌とかで時々『女子中学生の2割、女子高生の7割は体験済み』みたいな記事が載っていたような。

 そんなのねつ造に決まっているけど、他に情報(データ)がないと信じちゃうのよね」

 さいですか。

 そんなの知らないけど。

 でもまったく情報がない状態でそれだけ聞かされたらそんなものかと思うかもしれない。


「あり得ないよね」

「そうとも言えないけど、少なくとも私が女子高生やっていた所では聞かなかった。

 いたとしたってクラスで一人いるかいないかとかでしょ」

 なるほど。

 逆に言えば、そのくらいならいたかもしれない。

 不登校になったり退学したりする子は結構多かったから。


 私の前世の人は理系なので、統計とかそういう方面にも詳しかったらしいのよね。

 だから20-60-20の法則とかギャンブル必勝法とかにも興味があって、そういった方面の本も結構読んでいた。

 その中に不純物が混在する法則みたいなものもあって、研究によればおよそ千人に三人くらいは規格外というか統計に当てはまらないものが混じるのだそうだ。

 理由は忘れたけど、例えば厳密な試験をくり返して選んだはずの集団にもそういうのが紛れ込むらしい。


 その話には続きがあって、組織全体から見ると不純物が混じった方が結果的に効率的に回るそうで。

 半導体みたいなものかな。

 あれ、導体と不導体の中間というか、導体に不純物が混じったものらしいから。

 ていうか、何でそんな何の役にも立たない知識ばっかり覚えているんだろう。

 理系女子って使い物にならない(泣)。

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