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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第八章 特任教授

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228.創作

「それよりちょっと気になっているんだけど」

 メロディが姿勢を正した。

貴方(マリアンヌ)、この世界というよりはテレジア王国が乙女ゲームの世界だとまだ思ってる?

 ていうか乙女ゲームの設定で成立していると」


 私もつられて乗り出した。

「そうでしょう?

 だって私の前世の人が覚えている通りの設定で始まったとしか思えないし。

 その後はグチャグチャになってるけど」

「それってつまり、前世の貴方(マリアンヌ)が読んだ小説に基づいてテレジア王国が成立したって意味よね」

「違うの?」

「違うと思う。

 逆なんじゃないかな」

「それってどういう」


 メロディは真剣な表情で言った。

「だから小説に基づいて世界が作られたんじゃなくて、もともと世界というかテレジア王国はこういう国だったと。

 その断片的な記憶を元に、日本に居た誰かが小説を書いたんじゃないかと」


 何と。

 ああ、そういえばそういう設定の乙女ゲーム小説も読んだ気がする。

 テレジア王国みたいな国で生きた記憶を持つ人が21世紀日本に転生して小説を書いたり。

 千里眼みたいな超能力を持つ誰かが異世界であるテレジア王国の状況を透視して、その知識を元に話を作ったり。

 その際、透視出来た状況がぼんやりしていたり断片的だったりしたため、あとは想像でお話を作ってしまったとか。


「なるほど」

「小説を元にして誰かが世界を構築したというよりは、そっちの方がまだ自然と思うのだけれど」

 いや自然じゃないでしょう(笑)。

 でも確かに世界をまるごと作るよりは実現性が高い気はする。


「私の場合はどうなるのかな」

 聞いてみた。

「そうね。

 貴方(マリアンヌ)は学院に入るまでは小説のストーリー通りに生きてきたのよね?」

「というよりは、小説が始まったのが(ヒロイン)の学院入学からだったような。

 回想というか状況説明だと(ヒロイン)がサエラ男爵家に引き取られる所も出てくるんだけどね」


 私が気づいたのは初めて見たはずの男爵邸に見覚えがあったからだ。

 小説の口絵だかカットだかで男爵邸の絵が載っていたのを思い出した。

 その辺を説明するとメロディが頷いた。

「つまり状況設定はその時点のものを基礎にしているということね。

 それから後は空想というか創作」

 よく判らない。


「つまり?」

「仮説だけど、こういうことじゃないかな。

 21世紀日本にいた誰かがこの世界のテレジア王国を透視した。

 内容は不明だけど、攻略対象の貴族の御曹司については爵位や名前まではっきりしているってことは、まさしくその瞬間の情報をどかっと読み取ったと」

「その瞬間って?」

 メロディが身体を乗り出してきた。

貴方(マリアンヌ)が孤児院から引き取られてサエラ男爵邸に入る時点での攻略対象(イケメン)の状況とか。

 その時点ではまだみんな学院には入っていなかったとは思うけど」


「うーん。

 矛盾しない?

 だって攻略対象(イケメン)の人たちって結局誰一人として入院しなかったのに」

「だから可能性の問題よ。

 そのまま行けば攻略対象(イケメン)って入院した可能性が高かったでしょ」

 そうだろうか。

 そうかもしれない。

 エリザベスの調査でも、その人たちって実家では碌な扱いはされていなかったみたいだし。

 だとしたら家庭教師じゃなくて学院に行かされていた可能性が高い。


「なるほど」

「で、その超能力者は透視したその断片的な情報を元にして乙女ゲーム小説を創作する。

 それを読んだのが貴方の前世の人」

「つじつまは合うわね」

 かなりアクロバット的に無理をしているけど、設定がぴったりなのに物語(ストーリー)展開がメチャクチャなのは、その辺が創作だからか。

 言わばある時点における設定を元にしてシミュレーションした展開を小説化したわけね。

 乙女ゲーム仕様で。


 だから小説には離宮(タウンハウス)とか侍女見習い(高位貴族家令嬢)の皆さんなんか出てこない。

 現実の学院が小説とは似ても似つかないものなのも、(ヒロイン)が学院に入っていない時点の情報しかなかったから?

 攻略対象(イケメン)たちの存在すら空想というか創作なんだから皆無。

 規格外の母上(セレニア様)祖母上(シェルフィル様)すら出なかった。

 ひょっとしたら出てきたかもしれないけど前世の私はそこまで読まないうちに脱落(リタイヤ)してしまったみたい。


「つまり?」

貴方(マリアンヌ)も私も記憶におもねる必要はないってこと。

 (メロディ)にはもともと小説の記憶はないけど」


 そうか。

 強制力はなかったと。

 確かに今まで強引に運命がねじ曲げられたような雰囲気はなかった。

 波瀾万丈ではあるけど展開に超自然的な要素はないのよね。

 私やメロディに前世の記憶があること以外は。

 その記憶だって、よく考えたらあんまり役に立っていない。

 私の場合、むしろ邪魔になっているような気すらする。

 余計な情報(データ)があるせいで、必要以上に疲れるとか。


「判った。

 気が楽になった。

 ありがとう」

「まだ決まったわけじゃないからね。

 安心してしまうには早いとは思うけど」


 まあ確かに。

 でも、正直私はもう乙女ゲームについてはほぼ関係なくなったと思っている。

 だって攻略対象(イケメン)がいない時点で完全に破綻しているし。

 そもそも(ヒロイン)はイケオジ好きだから、攻略対象(イケメン)がいても恋愛とかには発展しない。

 最初から無理がある。

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