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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第七章 転生者

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222.学園

 手早く朝食を片付けて、お風呂と着替えの後、私は応接室で次々にやってくるよく知らない人との会話に明け暮れた。

 終わったら全部忘れた。

 右筆や秘書の人たちよろしく。


 普段着(違)に着替えて昼食に行くとメロディが待っていた。

「ご一緒させて頂きたく」

「喜んで」

 メロディは他国とはいえ王族、しかも第一王女。

 立場的には王太子の次くらいには重要だ。

 それに対して私は公爵だから身分としては低いけど、ホームグラウンドな上にここはテレジア公爵()離宮(タウンハウス)だからね。

 足し引きしてほぼ対等といったところか。


 侍女やメイドが見守っているので私とメロディはテレジア語で当たり障りのない会話を交わしながら食事を摂った。

 とはいえ、時間が限られているから今のうちに出来ることはやっておく。

 向こうもそのつもりらしくてズバズバ質問してきた。


「マリアンヌ様はまだ学院に通っておられるのでしょうか」

「籍はありますが。

 デビュタント前からほとんど行っておりませんね」

 忙しくてそれどころじゃなかったし。

「通わなくても除籍にはならないと?」

「貴族はまず自家の事が第一です。

 家の御用であれば講座を欠席しても問題はありません」


 そう、ここが私の前世の人が通っていた学校とやらと決定的に違う部分だ。

 あの世界では学生は学校に通うことが当然で、欠席にはそれなりの理由がいる。

 もちろん休めないわけではないけど、あんまり頻繁だったり長期に渡ったりすると問題になる。

 学校側から休学や退学を薦められたり。


 講義というか授業も出席が当然(デフォルト)で、欠席したら理由はどうあれ教育に支障を来すということで、最悪の場合はメダルを頂けない、というよりは単位を認定して貰えなくなる。

 講義はクラス単位で進められているから、欠席したらその分判らなくなるのよね。

 これは教育が学生個人じゃなくて集団(クラス)相手に行われているからだ。

 メロディも前世が女子高生だったからその辺りはよく知っているはずだ。


「すると、やはり学年やクラスといったものは」

「存在しません。

 あくまで学院と学生は一対一で対応します」

 こんな学院で乙女ゲームなんか無理でしょう。

 そもそも私、未だに殿方の学生と講座で出会ったこともない。

 パーティや舞踏会、礼儀(マナー)の演習でお会いすることはあったけど、個人的なお話をする余裕なんかなかったし。


 そういえば。

「シルデリアの学院は違うのでしょうか」

「学院ではなくて学園ですね。

 違います。

 学年やクラスといった分類はございます。

 ただ、それほど厳密なものではありませんが」


 メロディの話によれば、シルデリア王政府が運営している学園は私の前世の人の世界におけるフリースクールのようなものだそうだ。

 おそらく経費節減のためだろうけど学年やクラスといった分類があって、学生は毎年決まった日に入学する。

 講義はともかく集団行動はクラス単位で行われるらしいんだけど、学生の大半は途中で抜けたりいなくなったりするらしい。


「学生はそれぞれ目的や目標が違います。

 それを達成出来たらもう学生でいる必要はございません。

 それに」

 就活や婚活が目的なので、目処が付いたら抜けるのは当たり前らしい。

 それはテレジア王立貴族学院と一緒だと思っていたら否定された。


「シルデリアの学園には平民の皆様も通われています」

「どうして……ああ、貴族学院じゃないからですか」

「はい。

 コネを作る場でもありますので、裕福な平民や貧乏でも優秀な方が授業料免除の特待生という形で」

 そこら辺は私の前世の人の記憶にある乙女ゲームの舞台と同じね。

 学年やクラスがあって貴族と平民が一緒に通学する学び舎。

 乙女ゲームも可能か。


「ひょっとして婚約破棄とかあります?」

 聞いてみたら苦笑された。

「そういう事例はないようです。

 そもそも婚約やその破棄が話題になるほどの王族や高位貴族は基本的に通学はしません。

 というか、所属だけして授業には出ません。

 学園の授業で学ぶ程度の知識や技能は家庭教師に教えて貰えますので」

 それはそうだ。

 テレジアの学院でもそれは同じだったりして。


「所属はするのですか」

「一応、義務化されてはいますから。

 でも通学する義務はないので」

 何じゃそりゃ。

 テレジアの学院を真似しようとして失敗したのか。

 都合の良いところだけを組み込んでいったらそうなったんだろうな。


「テレジアの学院がどのようなものなのか、興味があります」

「観たら驚きますよ」

 そう締めておく。

 食事が終わるといったん解散。

 着替えなどを済ませてエントランスに行くと準備が出来ていた。

 離宮の玄関の前に横付けされている馬車にメロディと一緒に乗り込む。

 お互いの侍女が一人ずつついてきたけど、4人で乗っても広々としている。

 公爵家の馬車だものね。


 出発すると私たちの馬車の前後にお付きの人たちや護衛が満載の馬車が展開した。

 大名行列だ。

 学院に行くだけなのに。

 正面に坐っているメロディを観たら平然としていた。

 さすがは王女殿下。

 ペーペーの女公爵なんかとは役者が違いそう。


 馬車隊は順調に走ってあっという間に学院に到着した。

 しばらく来て無かったから何か懐かしかったりして。

 ファサードの前で馬車を停めて貰い、侍女の助けを借りて降りる。


「玄関というか入り口に横付けすると渋滞しますので」

 説明したらメロディは頷いた。

「確かに。

 シルデリアの学園でも毎朝混み合っていました」

「なので、馬車はこの辺りで降りて歩いて登院します。

 これは学生でも教授でも一緒です」

「合理的ですね」


 感心されてしまった。

 当たり前だと思っていたんだけど外国では違うのか。

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