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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第七章 転生者

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220.活用法

【通ったの?】

【まさか。

 初日でリタイヤしたわよ。

 後で教授にならないかとしつこく要請されたけど】


 さもありなん。

 メロディって多分、王族としてだけじゃなくて一人の人間としても飛び抜けて優秀だ。

 知識でも技能でも専門家並の能力がありそう。

 王女でなかったら引っ張りだこだっただろうね。

 でも王族だから、そんな知識や技能は使いようがないと。


【そうでもない】

 メロディはにんまりと笑った。

【乙女ゲームにはあんまり出てこない転生者チートの活用法があるんだけど、聞きたい?】

【聞きたい】


 それはそうでしょう。

 薄々は感じていたのよね。

 メロディがテレジア(ここ)にいること自体が普通はあり得ない。

 だって第一王女なのよ?


 王女のお役目って政略結婚することに尽きると言っていい。

 極端な話、自分の意思なんか無視されて当たり前。

 乙女ゲームではどっかの王子様に惚れて嫁入りしたいとか婿を取りたいとか言い出す王女がいるけど、そんなの普通は無視だ。

 だから王女は政略以外では動かない。

 外国に留学したり、それどころか社交目的で彷徨(うろつ)いたりは出来ないはずなのよ。

 でもメロディは間違いなく自分の意思でテレジアに来た。

 そう出来るだけの「力」を持っている。


【乙女ゲーム小説では転生者って知識チートで何か作ったり広めたりするでしょ?

 そんなのあり得ない。

 自分で手を動かす立場だったら何をするにしても資金不足で頓挫するし、お金がある身分だったら自分の手は汚せない。

 そんな暇はないから】

【それはそうよね】


【でもね。

 トップに近い身分なら「政略」に影響を与えることが出来るのよ。

 国王陛下や政府の重鎮に進言してどこそこに資金と資材を投入した方がいいとか。

 こういう機能を持つ組織を作ったらどうかとか。

 それだけでチートになる】


 メロディの言う事はよく判った。

 それは私も薄々感じていた。

 世の中には色々な人がいて、中には優秀だったり有能だったり、あるいは先見の明があったり画期的な発明をしたりする人もいるんだけど、同時に人には立場や身分がある。

 いくら有能でも下っ端だったり身分が低かったりしたら、なにか言っても無視されるだけだ。


 よくある戦記物の小説とかで、馬鹿な将軍が敵の見え見えの罠に引っかかって大敗したりする場合、部下がいくら優秀でもどうにも出来ない。

 意見を具申しても無視されたり却下されたりして駄目になる。

 その将軍がたまたま有能だった場合は勝つけど。

 これは戦争だけじゃなくて、社会のあらゆる分野で同じ事が起こっていると思って良い。

 何を言ったかじゃなくて、どの立場の人が言ったかで話が違ってくる。


 例えば王都のスラム街は衛生に問題があるから伝染病対策が必要だという意見があったとする。

 政府の下っ端とか民間人がそう主張しても何も起こらないんだけど、例えば王妃様とか王女様が王様に向けて言ったら?

 王政府の政策が変更になるかもしれない。

 言ってる事は下っ端と同じなんだけどね。


【なるほど】

【私は第一王女の立場で色々言えるわけ。

 その意見はシルデリアの王太子(父上)を通じてサラナ連合王国自体の方針に影響を与える事が出来る】

【災害対策なんかにも有効そうね】

【そう。

 だから私は王政府の各部局を回って意見を吸い上げては上に放り投げていたんだけれど。

 気がついたら私の株って爆上がりしていて】

【確かにチートね】


 何か言える立場にいるってことは、それだけでチートなのか。

 そういう意味では私も同じかもしれない。

 何せ公爵だ。

 王家には及ばないけど、それでもテレジア王国に影響を与えることが出来るくらいの立場ではある。

 ヤバい(汗)。


【……今日はこれくらいにしておきましょうか】

 メロディが言った。

 確かに情報量が一度に摂取出来る臨界を超えかかっている気がする。

 私はメロディと違ってチートじゃないのよ。

 公爵にされて、私自身がその立場に追いつけなくてまだアップアップしている状態だ。

 修行が足りない。


 ふと思いついて客間に引き上げようとするメロディに聞いてみた。

 もちろんテレジア語で。

「メロディアナ様は、どれくらい滞在のご予定ですか?」

「そうですね。

 あと数日は」

 それ以上は無理か。

 予定が詰まっているらしい。

 別にテレジアだけを訪問するわけじゃないものね。

 うちの王太子夫妻は周り中の国を駆け足で回ってきたらしいけど、それに似たような旅なのかも。


 (カーテシー)をとってメロディを送り出す。

 ソファーでへたっていたら家令(ヒース)が来たので聞いてみた。

「メロディってどういう立場なの?」

 いきなり過ぎる質問だったけど、有能なる家令(ヒース)は破顔して言った。

「これはこれは。

 もう愛称を呼び合う仲になられましたか」

「うん。

 何か気が合って」

 そういうことにしておく。


「それは良うございます。

 あのような方は味方にする価値がございますので。

 というよりは何があっても敵にだけは回さない方がよろしいかと」

「そう言うってことは何かあるのね」

 家令(ヒース)は姿勢を正した。

 何か合図する。

 お部屋に居た侍女やメイドたちがすーっと出て行った。

 人払いか。

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